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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第4章
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ワッツ辺境8〈樹海の家3〉

覗いていただきありがとうございます。


今回は長文多いです。

 マリーンさんとリリィさんに断って、僕とリボさんは外に出る。


「迷うんだよなぁ・・・お袋は、お前を一度連れて行ってみろって言ってたけど、俺の勘がなんとなく注意しろって言ってんだよなぁ」


「リンダお祖母様が?僕聞いてないよ?」


「そもそもが樹海に入れるようになってからの話だ。お前も知ってるだろ、俺達辺境伯家は〈妖精王〉の血筋だ。その血筋の中でも、何十年に一度、血が濃くなる者が現れる。それが多分お前だ」


「・・・・・・・・それ、王家との契約とか王家の水晶が曇って禍が起こる、だとかの話と関係ある?」

「知ってるのか?」

 リボさんが少し驚く。


「リンダお祖母様から一応聞いたけど、ピンとこないよ」

「だろうなぁ・・・」

 リボさんは、少し言いよどむ。


「この遺跡は代々辺境伯爵家が管理してきたものだ」

「うん。だけど住み着いた物好きは、リボさんが初めてだって聞いたよ」

 僕がそう言うと、リボさんは苦笑を浮かべる。


「季節ごとに誰かが管理に来てはいたんだ。その手間を省くために、俺が住んでるだけだよ。特に近年は遺跡の中の魔物を、間引く必要があったしな」


「間引き?もしかしてスタンピードの兆候があるとか?」

「・・・10年前ーー多分お前が生まれた頃から、活発になった」

「ええ〜!?僕のせい?どうして?禍!?」

 思わず大声で聞いてしまう。


 モーグでもここでも、なんで僕の知らないところで、設定山盛り、色々背負わされてるんだろ?


ーーもう嫌になるよね〜僕。どこぞの王子様より主人公ぽくない?気分的に不幸度マックスだよ。


「・・・伝説のような話になるが、この地は昔、トータス山脈も樹海もなかったらしい」

 リボさんが辺境の昔を語りだす。


 僕達は、巨大な台形の山に作られた、石積みの階段の前まで歩いて来ていた。この山の上辺に〈遺跡ダンジョンの入り口〉があるらしい。


 苔むした山の形や古い石積みが、熱帯を思わせる樹海の中で、長閑な春の気候を想像させる。


ーー前世のある僕だけが抱く違和感だけどね。


 えっちらおっちら階段を登る中、リボさんの語りが続く。


「昔ーーこの国が隣国と争いばかりしていた時代だ。

辺境に住むある娘が妖精王と恋仲になった。その時代は種族が違う者同士で、結ばれることができなかったらしい。

だが、相手は〈妖精の王〉で、神さまだ。その無理を通した。

その結果、トータス山脈を創り、この樹海と住処を造って、辺境の娘と夫婦として一緒に暮らした。やがて2人の間に子供ができて、その子のひとりが辺境で頭角を現し、辺境家を興した。

そして、ルクス王国ができて、ワッツ辺境伯爵家を賜ったーーとまぁ、これが簡単な歴史だ。絵本にもなってんだろ」


 僕はうん、と頷く。

 子供の頃、ハナさんに絵本を読んでもらったことがある。


 国に魔物が溢れていたむかしに、〈妖精王〉が人間の娘に一目惚れをした。夫婦になるために妖精たちの反対を押し切って人間になり、妻と子供と共に辺境で幸せに暮らしました。この国も、人間になった元〈妖精王〉が住み着いたおかげで、平和になりました、といったもっと簡潔な内容だ。


 これが「ハナさんの生まれた家のことなのよ」と教えられた。でも子供の頃には、絵本は絵本で、現実の話だと受け止めていなかったと思う。


「ーー裏話でもあるの?」

「裏話っていうか・・・続きか。さっきも言ったが、辺境伯家の中に何代かにひとり、強く妖精王の血を引く者が生まれる。その者が望めばーーこの〈樹海〉も〈トータス山脈〉も消え去り、王家との契約は反故となる」


「・・・それって」

「この国のあり方が変わるわなぁ・・・」


「えぇぇぇ・・・危険人物じゃん。やっぱ〈禍〉じゃん!まさか、それで遺跡で魔物に食べられちゃえ、とか」

「あるかバカ」

 即座に否定されて、僕は膨れる。


「望めば、って言っただろ?だから、妖精王の力を強く引くその者を特定して、そんなことを望まないようにするために、この遺跡に入ってもらうんだ。ーーさっき言ってた王家の水晶も同じようなモンだろうが、詳しくは知らんぞ」


「要は、判定用の何かがここにもある、ってこと?」

 リボさんが頷いた。


「簡単に言えば、結界だな」

「結界・・・さっき通ったよ」


「あれが1つ目だ。これから向かう遺跡の入り口にあるのが2つ目だ。そして遺跡のどこかにある〈妖精王の住処〉への入り口に3つ目の結界があるらしい。今の辺境伯家の人間には見つけられなかったがーー」


「3つ目・・・」

「1つ目は通過すれば誰でも超えられる、不可視の結界。

 2つ目は魔物と〈妖精王〉の血を継ぐ辺境伯の者しか超えられない選別の結界。

 3つ目は〈妖精王〉の血を強く引き継ぎ、選ばれた者しか超えられない特別結界だ」


ーーうわぁ・・・〈人王の鎖〉と同じぐらい面倒臭そうな話だ〜。


 遺跡や中の魔物に興味はあるけど、この話を聞くと遺跡に向かう足が重くなる。


「僕、〈〈妖精王〉の血を強く引き継ぎ、選ばれた者〉で決まり?」


「・・・ん、あ〜・・・たぶん。ーー俺達、辺境伯家の者には何となく分かるんだ。多分ハナも、お前が生まれた瞬間、感じたはず」


「もし僕がその選ばれた人間で、樹海もトータス山脈もなくなっちゃえ、って望めば、本当になくなっちゃって、〈妖精王〉とこの国との契約?もなくなっちゃうってこと?そんで・・・国境紛争が起こるかもって物騒な話になるの!?」

 自分で言っていて、だんだん話の過激さにおののく。


「実際に過去の〈選ばれた者〉は誰もそんなこと望んでねぇし。まぁ、お袋も王家もお前が健全に育てば、そんな過激なことは望まないと思ってる。そもそも今回、お前が家出して来なければ、トータス山脈にも樹海にも関心がなかっただろ?」


「そう言われれば、そうかも」

「仮にこの辺境で生まれていれば、トータス山脈や樹海の重要さを身に染みて育つ。だから、簡単にそんな恐ろしい望みを実行しないさ。

ただ、フランチャスカに近付いたのは、お袋は本気で嫌がってるがな」


「そうか・・・リンダお祖母様、フランチャスカ侯爵は〈穢れ〉だって言ってました。僕が〈穢れる〉って」


「お袋らしい言い方ーーまぁ侯爵の人格ってだけじゃなく・・・フランチャスカ侯爵家は隣国アカディアントと裏で繋がっているーーとお袋は確信だけしてる」


 確信だけしている、ということはまだはっきりとした証拠がない段階、ということだろうか。


「えぇ・・・謀反につながる話!?でもエルバーラーーフランチャスカ侯爵の娘は第二王子の婚約者だよ。僕だって」


「気づかないところで、利用されることもあるからな」

 一気に政治色が強くなってきた。僕は困惑する。


 法律はいい、〈人王〉による〈律〉もいい、ちゃんと基準があるからだ。面倒で受け入れられないこともあるけどね、背負ったモノは仕方ない。


 〈妖精王〉の血筋についても、やっぱり仕方がない。


 僕はハナさんの息子だから、辺境の人が困ってしまう「トータス山脈も樹海も無くなってしまえ」なんて恐ろしいことは、絶対に望まない。


 だけど。


 政治は別だ。政治は生モノだって前世のどこかで聞いたことがあるけど、流石にそんな面倒なものに巻き込まれたくないし、利用されるのもゴメンだ。


「僕、遺跡見るのはやめておこうかなぁ・・・」

 階段の途中で止まって振り返る。


 すでに半分以上登っているだろうか。高さは樹海の高い木の天辺より上だ。


「なんだ、怖気づいたのか?」

「伯父さんは僕を遺跡に連れていきたいの?連れて行きたくないの?」

 僕が怒って睨みつけると、珍しいことにリボさんは口ごもる。


「・・・お前がお前であることを信じてんだよ。それに今回、人助けしたのも天啓さ」

「どういう意味?」


ーーなぞなぞ?


「遺跡の中の魔物は貴重で強いぞ。お前も倒したいだろ?」

「そりゃあね・・・」


「だから、それは次回だ。判定用の結界探しもだ」

「・・・うん。それはちょっと色々考えたいしねぇ」


「今日はあの〈入り口〉までだな」

 そう言われて、僕は階段を登り切る。


 見晴らしのいい場所だった。


 前世の山の上に作られた古城と同じ感覚のーー樹木の海上を突き抜け空から見下ろす、壮観さがある。


 もちろんトータス山脈ほどの高さはなく、ピラミッドのような造形物の無機物さはある。


 だが、孤高で不思議な魔力に満ちたこの場所は、確かに見る価値のある遺跡ーーこの異世界で唯一無二の建物だった。


 上辺の中心部分には、建物の基礎のような低い石積みがいくつもあった。建物のあった痕跡だろうか?


 崩れたり途切れたりするその低い塀を、迷路のように辿って、中心部分にたどり着いた。


 中心部には石壁に囲われた四角い小屋のような建物があり、1面の壁は建物から少し離れて造られていた。要は目隠しのような感じだ。


 その目隠しの壁の内側に、下に続く暗い階段が隠されていた。


「ほら、ここだ。この階段を下れば、遺跡のダンジョンに行くことができる」

 リボさんの横で、僕は興味津々で階段に近づく。


 辺境伯爵家の血筋だから、〈入り口〉にある2番目の〈選別の結界〉に拒まれることもなく、暗い階段を覗き込めた。


「へぇ〜長い階段。さっきから階段ばっかりで、足腰鍛えられそう・・・」

「慣れだな」


「伯父さんは良くここに来るんーー」

 だよね?という言葉を言う前に、僕は身体に圧を感じた。


 引っ張られるこの感じ。


ーーあっ、転移だ。


 流石に覚えてしまったお馴染みの感覚に、僕はあっさりと転移を受け入れたのだった。


遺跡のイメージは、マヤの遺跡とマヤに影響を与えたテオティワカンの太陽のピラミッドを混ぜたイメージです。階段以外の側面は苔むす土って感じですが。

ジャングルの中にそびえるピラミッドーー浪漫ですね!

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