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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第4章
60/80

ワッツ辺境7〈樹海の家2〉

お読みいただきありがとうございます。

ちょっと長いので分けます。


「おっ、着れたか」

「着替え、ありがとうございます」

 マリーンさんが恥ずかしそうに、シャツとズボン姿を披露する。


「思ったより、はち切れなくて良かったな」

 残念伯父さんは、マリーンさんの胸元を見たのか、そんな感想を率直に述べる。途端にマリーンさんは顔を赤くした。


「伯父さん、女性になんてこと言うんですか!男性より女性の方が小柄なんですから、リボさんの服はブカブカですよ。たぶんマリーンさんが自分でサイズを直したんですよ。そうですよね?」


「あ、はい。メイドの必須道具を服の下に身につけていましたので、少々糸で絞らせていただきました。すみません」


「気にするな。その服は子供の頃の物で、もう着ないものだ。好きにしていい」

 気にするのはリボさんだよ、と思う僕。


「だそうなので、貰っていいものだから気にしないでください。それより、その格好お似合いですよ。ね、リボさん?」


「ん?初心者の冒険者みたいだなぁ」

「伯父さん・・・」

 女性の服を褒めるのは、貴族マナー講習の一番初めに習うことだ。


ーーリボ伯父さんの方が初心者マークだよ。残念すぎ・・・。


 それでもマリーンさんは貴族のメイドさんなのに、嬉しそうに「冒険者に見られるって素敵ですね」なんて、トンチンカンな返事を返している。冒険者は決して人気のある職業ではないのに。


ーー意外にお似合いかも?


 なんて思っていると、リリィさんが着替えた姿で、おずおず僕に近づいてきた。


 マリーンさんが着替えたのは、忘れられていたリボさんの子供の頃のシャツとズボンだが、リリィさんに渡したのは、僕の収納に持っていた新品で予備のシャツとズボンだ。


「服を、ありがとう。どう?」

 僕のところに来て、リリィさんが恥ずかしそうに聞いてきた。


 髪を1つにまとめ、シャツとズボンの姿になると、一気に活動的な雰囲気になった。

「すっごく似合ってる」

「えヘヘ・・ズボン着るの初めてだから変な感じ」


「シャツは少し大きかったかな?」

「少し。でも、ほらここ、腕はマリーンが絞ってくれたの」

 両肩のところを見ると縦線がデザインのように追加されていた。絞って袖を短くしたのかもしれない。


「上手いもんだねぇ〜」

「でしょ!マリーンさん裁縫と料理が得意なの。簡単な護身術もできるらしくて、だから遠いアカディアントまで迎えにくる役目に選ばれたんだって」

 僕はなるほど、と思う。


ーー護衛とメイド1人ずつのお迎えって少なすぎ、って思ったけど、それなりに有能な人物を差し向けていたってことかな?


ーーマリーンさんの肝の座り方は元貴族女性にしては、なかなかな見ない、気持ちのいい座り具合だもんねぇ。


「でもこんなに良い生地の服、本当に貰っていいの?」

 元庶民のリリィさんは、そこが気になるらしい。


「もちろん。リボさんには及ばないけど、僕も稼いでるからね。女性にはドレスをプレゼントすべきなんだろうけど、この樹海では危険だから。ーーさっきもマントも貸してあげられずに、樹海を歩かせてごめんね。ドレスの上にマントだと、さっきのワイバーンやでっかい魔猿(モノグランデ)木の魔物(エント)なんかの魔物に引っ掛けられる恐れがあったんだ」


「魔物!?もうさらわれるのはいやっ」

「そうだよねぇ」


「すっごく怖かったの。魔獣にさらわれるのは、人生のあの1回で十分」

「大丈夫だよ。樹海を抜けてイカルガまで、僕とリボさんが魔物退治するから」

「ホント?守ってくれる?」

「う、うん」

 大きな瞳ですがられるように見られて、なんだか不思議な感じがした。


 庇護欲を感じるけれど、それを冷静に見る自分がいるような・・・。


ーー今度はドキッとしない。わかってるから・・・ん?この子魔法を使ってる?


「良かったぁ。私もマリーンも幸運だね。強くて親切なモーグさんとワッツさんに助けてもらえて。悪い人たちだったら、売られたり襲われたりでひどい目に合ってたかも」

「・・・そう・・・」

 手を叩いて、喜ぶ無邪気な笑顔には、魔力は感じない。


ーー感じたのは、あのじっと見つめた瞳にだけ?


 多分無意識だろう。彼女は微弱な魅了の魔力を持っているのかもしれない。そのせいで、ワイバーンにさらわれたのかはわからないけれど、少なくとも気づいた僕とそっち方面は退化しているリボさんには害がなさそうだ。


 その後話し合って、今晩はこのまま安全なリボさんの家で過ごし、明日イカルガに向かって4人で向かうことになった。


「あの・・・よろしければ、お礼に料理をさせてください」

 ワイバーンの肉と香草を僕の収納から出したところで、マリーンさんが申し出てくれる。


「わ、私も手伝う!」

「リリィお嬢様は・・・」

「マリーン。今だけ、ね、いいでしょ?ここは樹海なんだもの。貴族とか意味がないってモーグさんも言ってくれたし、私も恩返しのお手伝いがしたいの。それに、もともとお母さんのお手伝いで料理はしてたもの」

 という、強い意志のリリィさんと共に、僕とリボさんは台所を追い出された。


「ねぇ、リボさん。ちょっとだけ、遺跡を見に行かない?」

「うーん・・・すぐに飯ができるだろ?」

 リボさんは少し迷っている感じだ。でも僕の目的はやっぱり遺跡だ。


ーーだってすぐ側に〈妖精王の遺跡〉があるんだよ!?


「ちょっとだけ。20分ぐらいですぐに戻ってこれる距離まで、ね?」

 リボさんの服の袖を引っ張って、子供らしさを演出してみせる。


ーー行きたいよ、見たいよっ〜。


「仕方ないなぁ・・・入り口までーー中に入るのは今回はなしだ。約束できるか?」

「うん。了解〜」

 調子よく返事すると、リボさんは頭をがしがし掻いた。


 マリーンさんとリリィさんに断って、僕とリボさんは外に出た。


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