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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第4章
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ワッツ辺境6〈樹海の家〉

お読みいただきありがとうございます!


次の更新はたぶん土曜になると思います。すみません。


 リボさんの家に向かう途中、僕はリリィさんから色々と事情を聞いた。


「あのっ、さっきのポーション、マリーンのお給料より高いってホント?私先に1本飲んじゃったから・・・」

 リリィさんは、さっきのマリーさんとリボさんとのやり取りがずっと気になっていたらしい。


「大丈夫だよ。リボさんお金持ちだし、樹海では助け合いが重要だしね」

「・・・さっきマリーンがお二人が辺境伯爵家と侯爵家の人だって」


「うん。リボさんはワッツ辺境伯爵家の嫡男だし、僕はモーグ侯爵家の次期当主なのーーそうそう、僕がここで冒険者してることは秘密ね。恩人のお願いってことで誰にも言わないでくれるかな?」


「もちろんっ、絶対しゃべらないわっ」

 何度も頷くリリィさんは、仕草が小刻みでかわいい系だ。

 対して、前を歩いているマリーンさんは美人系。


 リボさんが魔物を簡単に切り捨てるたびに、きゃぁ!とか、すごいわ〜とか言って、リボさんの背中から魔物を興味津々で覗き込んでいる。


「ーーじゃあ、もともとはアカディアント国に住んでいたの?」

「うん。お母さんとアカディアントの田舎で暮らしてて。3ヶ月前にお母さんが倒れてそのまま死んじゃった。そしたらお父さんの使いだっていうマリーンさんと護衛の人が来てくれて、一緒にルクス王国に来ることになったの」


「引き取られたってこと?」

「うん。だけど、貴族って怖いって聞いてたからーー」

「僕達もそうかなって思ったの?」

 そう、とリリィさんは申し訳なさそうに細い声で言った。


 隣国はルクス王国よりも、階級差、身分差が激しい。

 いわゆる貴族の〈斬り捨て御免〉が法文化されていて、平民の命は軽く、貴族に何かされるのではないかと常に恐れているという。


「貴族になるからって、マリーンさんに色々教えてもらいながら、国境のトンネルまで来たの。だから私、子爵令嬢だって言ってもニセ者だから、失礼なことしちゃったかもしれなくてっ」


「大丈夫だよ。僕もリボさんも礼儀とかうるさくない方だし、何よりここは辺境の樹海だもん。貴族とか権力とか言い出しても意味わかんない場所だしねぇ。ーーそう構えなくてもいいと思うよ?貴族の振る舞いを覚えるのは大変だろうけど、習うより慣れろって感じで、実践してるうちにできるようになるって」


 そうかなぁ、と終始不安そうなリリィさんは、自己肯定感が低いタイプかもしれない。


「じゃあ、襲われたのは国境のトンネル?」

「そう、近づいた時に。さっきの魔獣に襲われて、護衛のトループさんが死んじゃって、私とマリーンは掴まれて山を越えたの」


「山越え!?トータス山脈の!?」

 僕は驚いてしまう。


 トータス山脈はたぶん1500mか2000m級の高さだと思う。なぜなら、トンネルが2,3キロの長さで、場所によっては、山頂に初夏でも雪が残っている場所があるからだ。


 ルクス王国にとっては、歩いて越えるには魔物が多く、地形も気候も厳しいありがたい天然要塞である。しかももし隣国が攻めて来ても、ルクス王国側の一部には樹海が広がっている。


「たぶんそう・・・トンネルの真上を越えたあたりで、気を失ったからよく覚えてないの。途中で気がついたら、別の大きな魔獣と争ってて、ぐらぐら揺れて低く飛行するようになったわ」

「そっかぁ、それでマリーンさんの声が聞こえたんだね」

 もっと上空での飛行であれば、風と距離で声が出なかったか届かなかったかもしれない。


「でもね、マリーンはもともと声が大きいの、これヒミツね?」

 顔を近づけてきて、リリィさんはそう囁いた。にっこり笑った顔が、やけにコケティッシュでドキンと胸が脈打つ。


ーーいやいやっ、僕はエルバーラ一筋だから!


 惑いそうになる自分になぜか言い聞かせる。僕は惑った自分を誤魔化すように、リボさんを呼んだ。


「ねぇ、リボさん()はまだ遠いいの?」

 マリーンさんとリリィさんを助けてから、20分以上は歩いていた。生粋の令嬢だったら、とっくに弱音を吐いていたかも知れない距離だ。


 振り返ったリボさんが親指で背後を指差す。

「もう見えてるだろ」

「えっ?」

「樹海の中にある山だ」

「・・・山?」


ーー見えないけど???


 そう思いながら樹海の奥へ更に数歩踏み込んだ時、何かの魔力が身体を通り過ぎた。


 すると視界が広がり、樹木のない開けた場所に、巨大なピラミッドのような台形の山が現れた。


ーーマヤの遺跡みたいだ。古代結界!?


「あそこの、門番用の建物が俺の家で、その向こうの山の中が妖精王のかつての住処ーー〈伝言(ミニーマ)の遺跡〉だ」


 リボさんは、山の台座のような部分から飛び出た長屋のような住処に、僕達を先導して招き入れてくれた。



【ぷち設定】

魔物の遭遇率が低い地域や王都などの都会に住む人々は、〈魔獣(・・)討伐〉と言います。

魔物という得体のしれない生き物を討伐するというより、魔獣という獣の亜種を倒す、と認識する方が不安を掻き立てられないからです。なので、マリーンやリリィにとっては、ワイバーンも竜も魔獣扱いです。


魔物(・・)討伐〉と言うのは、魔物によく接する騎士や冒険者、辺境に住む人々が主に使う、一部の人間特有の言葉になります。。。という、ゆるゆるな感じでお願いします。

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