ワッツ辺境5〈同行者〉
読んでいただきありがとうございます。
「誰かっ、誰か助けてぇーー」
遠くはない場所から、女性の助けを求める声が、はっきりと聞こえてきた。
なんとなく導かれて空を見上げると、トータス山脈の方から黒い影ーーワイバーンが飛んで来ている。その腹の辺りーー短い足に掴まれている二人の女性が、手を振って動いているのが見て取れた。
「ギーヴっ!」
厳しい声に僕は頷く。
すぐさま飛び降りるリボさんに続いて、僕も岩から飛び降り、低空飛行を続けるワイバーンの影を追う。
「魔法は駄目だ。まずは二人を助けるぞっ」
「うんっ」
「お前は右足を狙え、俺は左だ。受け止められなけば、風魔法で落下の勢いを消せ!」
「わかったよ、リボさんも気をつけて」
僕はリボさんと分かれて、右側へ走る。ワイバーンの足の内側に向けて、僕が先に剣を投げる。
力を加減したので、うまく剣が刺さり、驚いたワイバーンが右に傾いだ。
次の瞬間、ワイバーンが放した女性が落下してくる。
僕は余裕を持って樹木の上で待ち受け、女性ーー女の子を風魔法の小さな竜巻で浮かして、下の地面にゆっくり着地させた。
そうする間に、リボさんが大きな樹木の天辺から、ワイバーンに飛び掛かり、左足の根本からばっさりと切り落とす。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
もう1人の女性も悲鳴を響かせて落下してくる。
リボさんはワイバーンを真っ二つにした上で、ワーバーンの身体を蹴り落とす反動を使って、落下する女性を空中で抱き込み、ぶつかる寸前にころりと回転して、うまく地面に着地した。
「マリーンっ!」
起き上がった女の子が、女性の方に走っていく。
僕は樹木の上から飛び降りると、落ちたワイバーンの身体から大事な剣を回収し、ワイバーンの身体も収納してからリボさんのところへ向かった。
「マリーンっ!」
「リリィお嬢様っ、ご無事ですか?怪我は?どこか痛いところはないですかっ」
女性は泣きながらも、抱きついた女の子の身体を確認している。
「だいじょうぶ。マリーンの方が怪我してずっと痛そう。私のせいでこんなことになってごめんなさいっ」
泣く女の子を抱きしめながら、女性はリボさんと僕を見つめる。
「助けていただいて、本当にありがとうございますっ」
服装からすると、商家のお嬢様とそのお世話メイドというところかな?と僕は思う。
「いや。あんたの声ーーいや、マリーンさんか?」
「失礼しました。わたしは、アルディア子爵家のメイド、マリーン=ランファと申します。こちらはアルディア子爵家令嬢のリリィ様です。お助けいただけなかったら、本当にどうなっていたことか・・・」
「君の声はよく通った。ワイバーンにさらわれているあの状況で、あの大声を出せるとは、なかなか肝が据わって立派なものだ」
リボさんが普通にマリーンさんを褒めている。
でも声が大きいと褒められて、喜ぶ女性がいるだろうか。答えは否だ。相手に喜ばれるどころか羞恥に逃げ出されるだけ。
実際、マリーンさんは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにしている。
ーーなるほど、この辺がリボ伯父さんが独身の理由なんだね・・・。
僕はそう悟ると、残念なリボ伯父さんに声を掛ける。
「リボさん、マリーンさんもリリィさんも怪我してるみたいだよ」
ーー僕が白魔法をかけた方がいいのかな?樹海の中だし。
そう思っていたら、リボさんが収納から高級な上級ポーションを取り出し、当たり前のようにマリーンさんとリリィさんに渡す。
「飲んで歩けるようなら、ここから少し離れよう。ワイバーンの血で他の魔物が集まってくる」
「ひっ!」
リリィさんが怯えて、マリーンさんにますますしがみつく。
それをマリーンさんがなだめて、ポーションを飲ませ、自分については辞退しようとする。
「わたしは大丈夫です。申し訳ありませんが、高級ポーションをいただいてもあまり持ち合わせがーー」
「金をもらうつもりはないから、気にせず飲んでくれ。樹海で怪我をしたままでいる方が良くない。魔物に襲ってくれと言ってるようなものだ」
「・・・それは」
困惑するマリーンさんに、僕が助け舟を出す。
「これはリボさんが悪いよ〜命を助けてもらったからっていきなり高級ポーション渡されたら、後で支払いを脅されるかもって警戒しちゃうよ」
「なんでだ?」
「高級ポーション1本でメイドさんの給料1年分なんだって。僕みたいなC級冒険者でも、上級ポーションは使わないよ。せいぜい中級ポーションまでだもん」
「そうか・・・脅かすつもりはなかったんだが、今持っているポーションはそれだけだ。悪いがそれを飲んで傷を治してくれないか?」
「悪いなんてっ・・・」
「マリーンさん、このおじさんはS級冒険者なんだ。ワイバーン真っ二つにしてたでしょ。強くてものすごく稼いでるから、心配しないで飲んで大丈夫だよ」
僕がマリーンさんにそう言うと、リリィさんが震えた声で問う。
「・・・あなたは?」
「僕?そっか、リボさんも僕も自己紹介してなかったね」
「そういやぁそうか。すまんすまん。俺はリボルバーン=トルアーデ=リィ=ワッツだ。今は樹海でS級冒険者をしている」
「ひぇっ!?」
「僕はギーヴィスト=フィン=モーグね、C級冒険者だよっ」
「辺境伯爵家と侯爵家・・・」
顔色が悪くなる二人に、後で口止めしなくっちゃ、と思う病気設定の僕。
「とにかく早く飲んでくれ。ここを離れよう」
リボさんに強く促され、マリーンさんは高級な上級ポーションをにらみつけた後、ようやく一気飲みしてくれた。
「それで、リボさんこの後どうするの?」
質問はもちろん、向かう先のことだ。
女性二人を連れてこのまま危険な樹海を行くのか、それとも戻るのか。
女性二人は傷が治っても、どこか疲れた表情を浮かべている。
着ているドレスも所々が破れて、血の染みがあった。
リボさんはそんな二人の姿に気づいたみたいで、僕に言う。
「俺の家の方が近い。立ち寄って色々準備をしてから、送っていこう」
どうやら行き先の予定変更はなさそうだ。
僕は遺跡が見られる!と内心喜んで同意した。
長男リボ、次男ロボ、三男は?
正解はヤボです(笑)テキトーですみません。
登場人物多すぎ。
皆さんどう名前を決めているんでしょう?
アメリカ系とかフランス系とかスペイン系とか・・・。
この物語はマーブルでお願いします。
いわゆるいい加減です(笑)




