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27.最終決戦

「お終い? どういうことだよ」

 狼狽えるレドワールに、俺は再度問うた。

 彼女の言っている『お終い』という意味はいったいなんなのだろうか。


「……それを言うことはできないわ。言ってしまったら、私達の計画の全てを話すようなものだもの」

 静かだが、芯の通った声が返ってきた。これほどまでに顔色を悪くしているというのに、ここまで忠誠を貫くなんてどうかしている。


「ああそうかよ。じゃあ教えなくていい。直接ボスって奴の所に乗り込んで聞いてきてやる」


「そ――それはさせないわ!」

 歯を軋ませ、レドワールはせめてもの抵抗としてがむしゃらに爪を振るう。


 しかし、その短絡的な攻撃は先程までの彼女の攻撃ではないい。威力は弱いし、動きも読める、とても浅い攻撃だ。

 「冷砲アイスポウンド

  指先で氷の波動砲を練り込み、レドワールの腹部に喰らわす。

  俺のもう一つの魔法だ。


「鍵は……なんてとこに隠してんだよ」

 意識を失ったレドワールの服を破り、鍵を弄る。御約束なのか、ただ単に彼女の趣味なのかは存じないが、彼女の谷間の中には二つの鍵が仲良く挟まっていた。……無修正のおっぱいなんてお母さん以外で初めて見たよ。


「さて、行くか……」

 マップを見ると、二千人ほどの敵が二階の氷製の障壁と格闘していた。多分、ここへくるのも時間の問題だろう。一刻も早く上の階へ行かなくては。


「俺はボスに合ってあいつの暴走を止めてくる。お前らは?」

 聞く必要もなかったと、言ったあとで反省した。

「行きます!」


 ウンケルが代表して力強く頷いた。

 敵の頂点はもう直ぐそこだ。


 四階へと辿り着いた。

 三階以上に複雑な通路で、道行く先に良くわからない未知なる武器ばかりが置かれていた。


 手前の十字路の前には自動で動き、ブツブツと呟く武器がいて、そいつの姿が見えなくなることを確認して右に曲がると、可愛い小動物みたいなロボットがピイピイと泣きながら全身から雷を放っていた。


 その可愛らしい敵の攻撃から逃げるために疾走し、がむしゃらに曲がり角を曲がっていると、エッチな制服を身に着けているバーチャルな女の子が鈍器を武装していたりした。

 エッチなロボットが放つ銃弾を躱しながら、俺は思う。


 ……え? 待って。最後の武器、というかヒロインくれよ。

「凄い所ですね。少し狭いですけど」

「あ、ああ。そうだな」


 色々トラブルはあったが、どうにか出口付近にまで辿り着くことが出来た。

 沢山の獲物を見ただけあって、俺の脳内武器倉庫もかなり潤っている。復元可能なものが格段に増えた。

「しかし。本当に狭いな」


 空間のほとんどが武器倉庫なため、人が歩ける空間はかなり狭い。

 横になった歩行を進めるのは無理なため、こうして互いの体を限界まで密着させているのだ。


 背後にはウンケルの胸とお尻の感触が俺を支配し、前方には先頭を切っているアイルンのうなじと意外と大きなお尻が視線を独占する。


「それにしても妙だぜ。慎重に歩いてはいるけど、周りの兵器は俺達のことに気付いているはずだ。どうしてなにも攻撃してこない」 

 フォウンズがぜえぜえと息を吐きながら疑問を発する。


 確かに、狭い通路なため、いくらゆっくり歩いても道を行きかう生き物のような武器と視線が合うことはある。その度に鼓動が早鐘するが、向こうは気にもせず、ただ目的地に向かって進んでいるのだ。


 あいつらは、俺達を殺すことが目的じゃないのか?

「きっと、もう私達なんて相手をしている場合じゃないのよ。さっきまではまだ私達の生存もそれなりに危険視していたんだろうけど、今はそんなことよりも、ボスの命令した計画の方が大事なんだわ」


「……そうか」

 それならそれで、俺は良いと思った。

 どの道、この扉を開けたらボス戦だ。マップを見る限り、最上階にいる敵はボスだけではなかった。百人は雑魚がいるが、まあ俺の力とこいつらがいれば怖くない。


 そう意気ごんでいたのが過ちだったのだろう。

 扉に意識が向いて、足元がお留守になっていたんだ。

 地面に仕掛けられていた『転移トラップ』に気付かず、そのまま踏んでしまったのだ。

「え?」


 爆発的な光が俺を包む。白一色の景色が俺の視線に広がり、体も足から順に、腹部、両腕、そして最後に頭部が消えていった。

「――」

 ウンケルがなにかを言っていたのが聞こえたが、何を言っているのかはわからなかった。


 俺の体は他の場所に強制移動された。



「……ここは」


 また一階からか? それとも、一度も踏み入れたことのない未知なる土地か。

 いいや。違った。見覚えがある。ここは、最初の目的地である最上階だ。

 しかし、ところどころ変わっている個所がある。

 まず、大きな炎が周囲を囲っていた。

 左には緑色の炎。

 右には青色の炎。


 後ろを向くと、赤い炎が扉を塞いでいる。あの向こうにウンケル達がいるのか。

 そして、前方には七色の炎を全身に纏っている大きな男がいた。

 三階で戦った魔物よりも大きい。この部屋があと数センチでも低かったら、角が天井に刺さって身動き取れないだろう。


 例え大きな角が天井に挟まったとしても、力技でなんとかしそうな迫力がビンビンに伝わってくるけどね。

「乱暴な歓迎だ。お前がボスだな」


 ボスと思われる男は静かにうなずいた。一つ一つの仕草にスキがない。不意打ちを試みる気さえ失ってくる。


「お前らの目的はわかっている。俺の暴走を止めることだろ。本来なら放っておいても構わなかったんだが。計画中にちょこまかされるのも面倒でね。まとめて潰してやるよ」


「まとめて? 俺以外にあと四人の人間がいるんだけど、そいつらは無視なのか? もしかして、流石の魔族の人間でも複数相手は厳しいのか?」


 相手の真意を測るためにハッタリをかけてみた。しかし、それすらも見抜いていたのか、ボスの男は不的に笑って見せると、俺が握っているマップを指さした。

「……あ!」


 四階。つまり、あいつらが残されている空間に、青色のアイコンが五百ほどいた。

 青色のアイコンは、敵を示す。

 この最上階にいたはずの雑魚敵が、全て四階に移動したんだ。


「交換転移という魔法でな。お前がこちらへ移動する代わりに、ここにいた俺の部下全てを四階に行かせた。そして、それだけではない」


 そう言って、俺の背後を指さした。

 いちいち確認しなくてもわかる。

 背後の扉には、赤い炎が纏われている。今はまだ火は扉を直接燃やしていないが、あいつの気分次第で簡単に燃やせるということだ。


 あの扉が燃えれば、そのまま四階にも火が移る。そしたら、あいつらは終わりだ。


「あの火が扉に移るまでの時間は五分だ。そして、俺の最終兵器オブリビオンの発動も五分。お前は仲間もこの国も守りたいのなら、五分以内に俺を倒すしかない。まあ、四分で倒してもお前の仲間は俺の部下に殺されているかもしれないし、オブリビオンを止める術も見いだせないかもしれない」


「……はは。自分の仲間も燃えてもいいってか」

 背筋が、ゾクリと震えた。

 勿論、恐怖による震えの方が大きいだろう。仲間も、国も俺の双肩にかかっているのだ。


 しかし、どこか武者震い的な感じもあったのかもしれない。

 イカれていると思うが、このいかにもなゲーム的展開に、胸を躍らしている自分がいるのだ。


「さあ、かかってこい。人類」

 挑発するように、敵は手を招いた。

 迷わず、俺は大剣を復元する。

 この剣は、世界を救済するの意味を持つ『勇者の剣』。シチュエーションにはぴったりだ。


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