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捜鷹記  作者: 檻の熊さん
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入院前

 入院前、2024年のこと。


 このとき、私の手元には3羽の鷹がおりました。当時20(とや)(20歳)になる雄のハリスホークの「わんわん」。片塒(かたとや)(1歳)を迎えた雌のオオタカの「真砂(まさご)」。同じく片塒の雌のハリスホーク「薬研(やげん)」です。

 順序はバラバラでしたが、薬研の給餌量を減らして調整を始めたのが8月初旬頃、真砂が9月中旬、わんわんについては10月中旬より調教が始まっております。これら、訓練の開始時期は、換羽の進行に合わせた物で、おおよそ尾羽が生えそろったところで足革を新しい物に交換して、給餌量を減らし、ストレスのある条件下でのみ食餌を摂らせる事を再開するところから始めます。いわゆる「詰め」と「食い付かせ」と言われる調教過程です。いずれも1年目の鷹ではないので、それほど馴致に時間をかける事もなく、半月ほどでフリーフライト、紐無しでいわゆる「渡り」を行えるところまで、持って行っております。

 当時の日記を読み返してみると、どうやら私は、時々ではあるものの手首等の痛みからロキソニンを内服しながら鷹をいじっていたらしい。なんなら、車をバックで車庫入れしようとすると首や肩に強い痛みが走って「首が回らない」とか、体の不調は標準仕様な人間でしたから、いちいち気にしているという事は無かったのですが、「鷹をいじっている間くらいは」ちゃんとしようという事で、つまり「鷹に弱みは見せられない」という事になるのか、薬を飲んでから、薬が効いて痛みを感じなくなっている間に、つまり大緒(おおを)を解したり付け直したりが意外に痛い事があってみたり、餌合子(えごうし)の操作だの、口餌(くちえ)をかける時に十分な握力が得られないとか、そういう事があるからなのですが、確かに薬を飲みながらやっていた事が記録に残っております。

 そういは言っても、鷹の方はこちらの要求に十分に応えてくれていたし、私の方も不具合を感じる事は無く、せいぜい、薬の影響と調教の時間帯が昼頃に集中するので、なんとなく胃もたれして昼食の時間がずれてしまい、夕飯と一緒になる事がちょくちょくあったなと、そんな事を覚えているくらいで、特に問題なく猟期を迎えていたのです。

 

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