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捜鷹記  作者: 檻の熊さん
16章

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桜咲くころ

 ソメイヨシノが老木になってしまい風で倒れてしまうとかで、世間ではジンダイアケボノという見慣れない名前の桜への植え替えが進んでいると聞きます。当地ではまだ見ぬ光景ですが、私が死ぬ頃には見かける様になっているのでしょうか。


 退院した直後の頃、私はクロード・チアリのギターが懐かしくて、『京都殺人案内』をよく視聴しておりました。初期の頃だけの設定だったみたいですが、主人公である音川警部補は「定年が近い」と劇中で語っております。今では定年と言えば65歳の事ですが、当時『京都殺人案内』が世に出た頃は55歳です。なんとはなしにではあったのですが、私、そういう数字を覚えておりまして、入院した54歳になる何年か前から、「そろそろ引退」と言っておりました。今となっては病気の所為(せい)だったのですが、背筋を伸ばしていられない自分のしょぼくれた背中が、藤田まこと演じる音川警部補のコートを羽織(はお)ったちょっと猫背(ねこぜ)な後ろ姿とかぶったのです。「戻らないことがある」と言われた筋肉ですが、今では左右どちらの手でも指を鳴らす事が出来るくらいまで握力が戻り、疲れやすさはあるし杖を使ってはおりますが、背筋を伸ばして歩いていられます。毎月病院に通う度に「血液検査の数値が…」と、陰鬱な顔をした医師に言われ続けておりますが、割とまっとうなのです。せめて、私の人生の引退は60歳の還暦(かんれき)まで待ってもらえないものかと思う様になりました。

――――――「いまここ」だからこそ、少しくらい何かいじってみようと思うんでしょうね。


 多科紹介と言うそうですが、同じ病院の中の他の科を受診したい時、そういう方法を使います。私の場合、皮膚筋炎だから皮膚科にかかるのですが、それだけでは話が終わる病気ではないので、呼吸器内科にかかって毎月胸部の間質性肺炎の監視を続けてもらっていたりします。やれ血液腫瘍内科だ、循環器科だと、皮膚筋炎という病気は、他科の守備範囲を多く含んでいる病気なのです。当時の話、大学病院に入院した際に、私は消化器内科でピロリ菌関連の検査を受けました。胃がんについて調べる必要があったのです。私にしてみれば驚くばかりですが、保険の関係からピロリ菌の血液検査と胃カメラ、大腸内視鏡検査が行われました。ピロリ菌の方は問題無かったのですが、直腸に良性ポリープが見付かり、検査をした医師から「1ヵ月くらいしたら、また入院して取ってもらってください」と言われました。この時、紹介状を書くから他の病院でも構わないと言われております。

 大学病院は遠方でしたので、退院から1年が経ったある日、体力的に生き返ったものを感じた私は、現在かかっている病院あてに紹介状を書いてもらい消化器内科を受診しようとしたのです。ところが、当時の検査は院内の多科紹介でしたから、「外来で受診したのでないなら書けない」という話に成りまして、現在かかっている病院の皮膚科から同じ院内の消化器内科に多科紹介でかかってもらい、そちらの消化器内科から医療情報の提供を大学病院に問い合わせてもらってくれという話になりました。複雑なものです。

 皮膚科を受診してその旨を依頼して、予約が取れたのが4日後、予約時間に間に合う様に動物病院を休診にして出かけると、2時間待たされて1分診療、「大学の方に問い合わせて、2週間くらいしたら話せるから…」と、2週間後に再び予約。このとき、指定難病の範囲にない疾病であるという事になり、初診料が○○円。ぐっと拳を握りしめ、2週間後に、再び動物病院を休診にして出かけ、ようやく話が出来ました。

挿絵(By みてみん)

山の桜。

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