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翌日。

 私は頭痛を味わいながら目覚めた。

 馬上試合は昨日終了し、弓の試合も午前中に終了。

剣の方も順調に行けば、今日には決勝戦をする予定。


「ロッティ。俺達、剣の試合見に行くが一緒にどうだ?」


「行きます」


 五人で剣の大会を見学しに行く。

 大会最後の試合ということもあり、どの試合よりも観客が多い。

 何組もの試合が終わり決勝戦へ。


「あっ」


「どうした?」


「いえ、なんでも」


 驚いた。

 決勝戦に出てきたのは、リック。

 ヴィルは彼を『粗削りでセンスがいい』と。『新人』とも言っていた。

 そんな彼が決勝戦。

 負けるとは思っていなかったが、まさか決勝にまで勝ち進むとは……

 

「ん? あの新人、腕を痛めているな」


「そうなの?」


「あぁ、動きがぎこちない」


 ターナムの言葉でリックの腕を注意深く見るも、私には分からない。

 腕を痛めていると聞いてしまうと、肩入れしてしまう。

 リックが普段の実力を発揮できますように。

 

「動きはいい」


「あぁ、経験を積めば更に化けるだろう」


「護衛に欲しい」


「勧誘してみるか?」


 四人は数度見ただけでリックの実力を認めている。

 

「あの……相手の方はどうなんですか?」


「相手か? ん~実力と腕力はあるが……」


「あの二人は相性が悪いな」


「新人の方が、可能性は高い」


「……よそ見していると決まるぞ」


「え?」


 会話に夢中になり視線を外していたが、コンフィの言葉で視線を試合に向けると大きな音を立て勝敗が決まった。


「勝者、マーベリック卿」


 勝ったのはリック。

 彼の勝利を祝うように、雄叫びや拍手が送られる。

 不意に彼と視線が合ったように感じるが気のせいだろう。

 この観客の人数で私と目が合うなんて……


 全ての試合が終わり、表彰式が始まる。

 表彰式での観客席は着飾った女性が目立つ。

 優勝者達に見やすいようアピールしている。

 表彰台には弓と剣と馬上槍試合の三種の個人と団体の勝者達が並ぶ。

 金で出来た優勝トロフィーと一輪の花が彼らに渡される。

 トロフィーは彼らに、一輪の花は優勝者達から自身の『勝利の女神』に送られる。

 『勝利の女神』に選ばれた者が、この後行われる後夜祭で勝者のパートナーとして参加する事が出来る。

 そのため、女性達は大会期間中『勝利の女神』になるべく優勝者有力候補に積極的にアピールしていた。


「嬉しいっ、ありがとう」


 勝者達が自身の『勝利の女神』へ花を贈る。

 受け取った女性達は感動し、勝者の手を取り観客席から降り立つ。

周囲は嫉妬の視線を女性に送る。

 次は自分が選ばれるのではないかと表彰台にいる優勝者を確認。

 あと何人と数えながら、勝者を待つ。

 私は、ヴィルと約束した場所にいた。

 

「えっ、こっちに来る?」


 ヴィルが歩いてくると、周囲の女性が色めき立つ。


「……ロッティ」


 私の名前が呼ばれた瞬間、周囲の女性が『誰だ?』と探し始める。


「はっ、はい」


 返事をすると周囲の視線が集まる。

 ヴィルに花を差し出され震えながら受け取る。

 これはヴィルの女性避けであって、深い意味はない。

 女性に嫉妬の目を向けられているのは、私が役割を熟している証拠。

 花を受け取ったので、観客席から抜けヴィルと共に歩く。


「ロッティ」


 声を掛けられ振り向くとそこにはリックの姿。


「リック?」


「受け取ってくれないか?」


 リックに花を差し出される。


「私が? あの……私は既に彼の『勝利の女神』に」


「一人が二人の『勝利の女神』になってはいけないということはない。俺の『勝利の女神』はあんただ」


「でも……」


「受け取ったらどうだ?」


「ヴィル?」


 私は一応ヴィルの『勝利の女神』。

リックからの花を受け取る訳にはいかないと困惑していると、ヴィルが受け取るよう促す……


「一人が二人に花を貰うことは今までにない事だが、貰ってはいけないということはない」


「そうなの? だとしても……」


 本当に受け取っていいものなのだろうか?


「それに、今かなり注目されている」


 ヴィルに言われて周囲を確認すると、色んな人がこちらを見ている。

 会場の隅でのやり取りにも拘らず、男性女性関係なく。

 女性の視線は自然と「ひっ」と声が出てしまう程迫力がある。


「……リック、本当に私でいいの? 私がこれを貰ってしまったら、後夜祭では誰をパートナーにするの?」


「俺は誰もパートナーにしない。するとしたらロッティだな」


「あの、私は……」


「分かっている。その恩人のパートナーだろ?」


「あぁ、ロッティは俺のパートナーだ」


「今日は、これを貰ってくれるだけで充分」


「……はい。貰うだけしか出来ませんが」


 ヴィルとリックを交互に確認し、私は差し出された花を受け取る事に。


「ロッティ、またパーティーで」


 リックが去って行く。

 予期せぬ注目を浴びてしまい、周囲の視線に耐えきれずいち早く離れたかった。


二度と聖女は致しませんが、TOブックスさんから書籍化となりました。

ありがとうございます。

小説家になろうさんでは、初期のまま公開しております。

引き続きよろしくお願いいたします。

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