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遠い告白Ⅲ

「喉が渇いたわ」


 ドリンクコーナーに足を運んでノンアルコールの飲み物を選びました。スティール様とのダンスの後、他の男性からも申し込まれて踊ってしまったから、体がくたくたでした。もうこれ以上は踊れないわ。

 グラスを手にして一気に飲み干しました。冷たい液体が喉を潤してくれて体が生き返ったわ。

 

 会場を見回すと貴族達はダンスをしていたりおしゃべりに興じていたり、ホールは活気づいてにぎやかです。


 両親はレセプションパーティーのお礼を兼ねて挨拶回りをと言っていたのであの中にいるのでしょう。

 二日間にわたるパーティーは大成功で招待客も公爵家から男爵家までと幅広かったですから、かなりの人数になりました。混乱することなくスムーズに遂行できたのはフェリシア様の手腕があればこそ。


 それに加えて王太子妃のアンジェラ様とリッキー様まで参加とあっては、王家のお墨付きをもらったと評判にならないわけはありません。開店を待ちわびている方々が大勢いると聞いています。これが箔をつけるということだったのねと今更ながら、身が引き締まる思いです。


 そんなことを考えながらレイ様の姿を探していました。

 会場の隅々まで目を凝らして見てみたけれど、姿がありません。

 レイ様はどこに? 先ほどまで令嬢達と踊っていらっしゃったはず。私が踊っている目の端に他の令嬢と踊るレイ様の姿が映っていたから。


 王族の方々の前には挨拶と婚約を寿ぐために貴族達がずらりと並んでいますが、レイ様の姿はありません。

 きょろきょろと見回すも見つかりません。

 もしかしたら、宮に戻られたのかしら? 

 人の集まる場にはほとんど出席なさらないと聞いていたから。あとで会ってほしい。話があるって聞いたような気がするのだけれど、聞き間違いだったのね。


 落胆する気持ちを抱えたところでどうすることもできずに、気を紛らわせるようにディアナを探します。

 いたわ。

 ホールの中央でハイスター公爵様と踊っていました。美男美女。こちらも素敵なカップルよね。物心つく前から決められていた婚約だったと聞いたけれど、ディアナも公爵様も幸せそう。あらかじめ決められた結婚だったとしても、愛は育めるのよね。羨ましいわ。


 ズキッと胸の奥が痛くなりました。

 二杯目のドリンクを手にして煽るように一気に飲みました。

 はあ。これではやけ酒のようだわ。

 ちょっと、頭を冷やしてこようかしら。


 外に目をやると広いテラスには明かりが灯されて数名の貴族達が談笑しているようでした。私はテラスを通り抜けて庭園へとやってきました。


 王城の庭園は手入れが行き届いていて洗練されています。テラスほど明るくはないですが、所々に灯された明かり

が淡い光彩を放っていて、一人になりたい私にはちょうど良い雰囲気です。


 ベンチを見つけて座るとやっと一息つけました。

 何度も踊ったせいか、足も少し痛いですし。社交場に出るのも久しぶりでダンスも久しぶり。いつ踊ったのかしらと記憶を辿って後悔しました。


 婚約が決まった後の初めての夜会以来だったから。

 そのあと、招待された夜会を研究の関係でお断りしてから、ぱったりとお誘いが来なくなってしまった。婚約者のお前が来ないせいで夜会に一人で出席せねばならない、みじめな思いをさせたと何度も詰られたわ。誠心誠意お詫びはしたし、今度からはご一緒しますと言ったけれど、聞き入れてもらえなかった。

 元々、険悪なムードで始まった婚約だったから、なんでも私のせいにして留飲を下げていたのかもしれないわ。


 イヤな記憶が頭の中に映し出されて悲しい気持ちにさせる。消し去ったはずだったのに頭の片隅に隠れていたのね。今になって思い出すなんて……

 ジクジクと痛む心。

 奈落の底に突き落とされたような絶望感をずっと味わっていて、やっと解放されたと思ったのに。まだついて回るのね。


「ローラ?」


 過去の苦い記憶に打ちのめされて落ち込んでいるところに、私を呼ぶ声がしました。幾度となく耳にする大好きな声音。トクトクと早くなる鼓動。そろそろと後ろを振り向くと


「……レイ様」


 思った通り、息を弾ませた彼の姿がありました。



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