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【18話】代わりにはなれない

ちょっと今回は2話投稿します。

それと、ストックが無くなってしまいまして現在執筆中です。

気長に待っていただけますようお願いいたします。

それから司を交えた三人の2対1の攻防は既に10分以上経過している。

ダメージは確実に与えられている。

奴についた切り傷は黒く焼け焦げ、炭化した肉は確実に治癒の邪魔をしている。

先程から傷口からは血が流れ続けている。

基本的に俺が攻め、そして弟の司が時折来る槍の致命打を盾で防ぐ。

いつもの俺達のコンビネーションだ。


確実に押している。俺も司も所々奴の鉤爪に切り刻まれ疲弊してはいるが

このままいけばもしかしたら押し切れるかもしれない。


だが、一方で俺の方もそろそろ限界だった。

炎で焼かれた手足の筋肉が引き攣ってきている。

まともに動けるのは剣による身体能力の補正があったとしてもあと1分が精々限界だろう。



「くそぉぉぉぉ…!!」


男が悪態を叫びながら再びあの長い骨の槍による刺突攻撃の態勢に入る。

先程と全く同じような体勢から繰り出される刺突攻撃。

威力は強大で不意打ちとしても申し分ない。

タネを知らなければかなりの脅威になる。

だが、さっきと全く同じものが通用するはずはない。


司が素早く俺の前に躍り出ると盾をしっかりと構える。

「兄さんは…僕が守るんだ!!!」


予想通り真っ直ぐに伸びた奴の槍は盾にぶつかった。

それと同時に司は能力を発動し反射を発動する。


その瞬間盾に向かって凄まじい速さで伸びた槍の威力がそのまま反射され

奴の体を吹き飛ばす。

あれほどの衝撃が司や自分の体を貫いていたらと考えると肝が冷えた。


男は自身の力によって20m程吹き飛ばされ地面をゴロゴロと転がる。


今がチャンスだ。


一気に叩くしかない。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


俺は全力で奴の方へと走る。

剣の出す熱で気管を焼かれ、潰れた声で叫ぶ。


「兄さん!!一人で行ったらダメだよ!!」


弟の制止の声が聞こえるが今だけは聞けない。

ここまで追い込んだんだ。

ここで決めなかったらまた同じことの繰り返しだ。

それどころか二人とも疲弊している今、再びこの男が回復してしまえば俺達に勝つ手段は無い。



奴までの距離が5mを切ったあたりで俺は剣を上段に構えたまま勢いよく跳躍し飛び掛かる。


「や゛って゛く゛れ゛た゛な゛!!

俺゛達゛兄゛弟゛の゛邪゛魔゛す゛ん゛じ゛ゃ゛ね゛ぇぇぇぇl」


潰れた喉で叫ぶがもはや声になっていない。

俺の言葉はこの男には咆哮にしか聞こえないだろう。


眼前に奴が迫る。

俺は渾身の力を籠め剣を振り下ろした。


・・

・・・

・・・・

・・・・・

・・・・・・

・・・・・・・


と思っていたが気づけば剣は奴の体を空かし全く当たっていない。

それどころか俺は剣を握ってすらいなかった。

頭の中が疑問符で満たされる。

そして次の瞬間には奴の体を通り過ぎ飛び込んだ勢いのまま派手に地面に突っ込み

まともに受け身も取れないままゴロゴロと無様に転がる。



痛ぇ…。

体中が、肺の中までもが火傷でじくじくと痛む。

体中には無数の打撲と切り傷。

所々奴に突き刺された槍で穴が開いている。


すぐに立ち上がろうと奴の方に視線を向けるが、そこで俺は言葉を失った。

奴越しに見えたその光景はとても信じたくなかった。

理解が出来ない。あまりのショッキングな光景に脳がフリーズする。



弟の胸に見知らぬ女の腕が突き刺され貫通している。


あまりにも非現実的な光景。

いや、このような境遇に置かれていれば遅かれ早かれ直面していたかもしれない。

それでも自分にとっては最も起きてほしくなかった事態、光景に思考が追い付かない。



驚愕に目を見開いた弟の口からはゴボゴボと血が吐き出されている。


あんな女さっきまでいなかった!

どこからやってきた!?

トンネルの中には二つしか入り口が無い。

戦闘中とはいえ気づかないなんておかしい!

俺はパニックになりながらも弟の心配よりも女の行動や侵入経路を考えてしまっていた。


だが次の瞬間には一気に怒髪天に達し、叫び声を上げた。


「てめええええぇぇぇぇぇ!!!!!」


俺は怒りでくらくらする頭を抱えながらその場に立ち上がる。


「…殺す…。良くも司を…。絶対殺してやる…。」


俺の体が燃え尽きてもいい。こいつらだけは絶対に殺さなきゃいけない。

司は俺が守るってそう決めたのに。

あんな大きな傷を負わせてしまった。

あの女と目の前にいるこの男。

こいつらが俺達に何をしたいかなんてもうどうでもいい。


絶対に殺す。


俺は再び剣を呼び出すため、両手を目の前に翳し力を込める。




…………が………出てこない。

俺の意思に反し剣は一向に現れなかった。


「…おい!出て来いよ!なんでこんな時に!!おい!出ろって!!出ろよ!!」


俺は狂ったように頭を掻きむしる。


「なんで出ねぇんだよ!!じゃないと司が…!司が…!うわあああああ!!!」


その場で膝から崩れ落ちた俺は両手をコンクリートの地面に叩きつける。

何度も何度も。出ろ!出ろ!と叫びながら何度も叩きつける。

今までも度々こんな事はあった。

呼び出しても数秒ラグがあったり呼び出す前に何故か勝手に出てきたり。

でも、何もこんな時にそれが起こらなくたっていいだろう。

今剣が出てこないと俺達は終わる。

司を守らなきゃいけないのは今この瞬間だ。

それなのに頼みの綱の俺の能力が発動しない。

絶体絶命の今に限って能力は全く答える事は無かった。

半狂乱になって滅茶苦茶に叫びながら目の前の男女に立ち向かうための力を求める。




「幹也、ターゲットの拘束完了したよ。タイミングも予定通りだったね。

とりあえずこのままだと死んじゃうから生命維持だけお願い。」


先程の女が司を拘束した状態で男の元へと運んできてドサリと地面に落とす。

その声は感情がなくまるで司を物の様に扱っていた。

幹也と呼ばれたその男が司を治療する為か傍に駆け寄る。


「お前ら!!司に触るんじゃねぇ!!!」


二人を追い払おうと怒鳴りつけ司の傍に向かおうとするがもう後数歩と言うところで

力尽きてうつ伏せに倒れる。


当たり前だ。

今の俺は剣を握っていない。

身体強化も回復能力も発揮していない今の俺はまるきりただのボロボロの一般人だ。

意識すると途端に体に力が入らなくなってくる。

体中、至る所に激痛が走っている。


「やめろ…、司を離せ…。」

もう声すら満足に出せない。



「ちくしょう…ちくしょう…なんで出ない…なんでこんな時に…。」


「もうやめなよ。君じゃ無理だよ。」


「俺は司を守らなきゃいけないんだ…。そうだ…。せめて司は許してやってくれないか…。

代わりにお前らの所には俺が行く。司の分まで俺が何でもする…。だから…。」


俺はうまく動かせない体に鞭を打ち司に縋り付く。

今の俺じゃ何もできない。

どうしても司を失いたくなかった。

俺が守ると言ったのにそれすら満足に出来ず、敵である目の前の男に縋り懇願するしかない。

情けなかった。自分の無力を呪い大事なこの局面で俺の願いを受け入れてくれない自身の

能力にも失望した。



情けなく泣きながら駄々を捏ねる様な俺に悲しげな声色で

男が俺に告げた言葉で俺は次の瞬間頭が真っ白になった。


「ごめん…。君は曝璽者じゃないんだ。つまり君は能力を持っていない。

初めから僕らの標的は弟さん一人だけなんだ。

だから、君は弟さんの代わりにはなれない…。」















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