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【17話】一般人

「かかって来いよ。二対一だ、遠慮することはねぇぞ。」


とは言っても俺が余程追い詰められでもしない限り

司は戦闘には参加させない方が良さそうだ。

この男の攻撃は肉弾戦が基本だ。

大振りな威力の高い攻撃はほぼ無いと見ていい。

そこに防御主体の司が入ったところで返ってお互いの動きが悪くなる。




俺の挑発を聞いた男が体勢を低く構え2、3呼吸置いた後に一気に距離を詰めてくる。

踏み鳴らした足音がトンネルの中でダンッと反響する。



予想以上に速い。

迎撃の態勢を取ろうとした時には男は既に目の前まで迫って来ていた。


右側上方から繰り出された拳を間一髪避けると俺はそのままの体勢から逆袈裟に剣で切り払う。

それを男も拳に付いた鐵甲で受け流すように弾いて一旦距離を取った。


今の一瞬のやり取りで鳴らされた金属音がキーーン…といつまでも辺りを反響し続けている。

この剣の切れ味自体は今までの襲撃で見せてしまっているため流石に正面から受けるようなことは

してこなかったのだろう。


うまく受け流された。

俺は素直に感心して口を開く。


「最初斬り付けた時案外素直に食らってくれたから大したことないと思ったが

意外とやるな兄ちゃん。それとも初めのはデモンストレーションでもしてたのか?」


「いえ、我々財団は一般人との戦闘の場合はこちらが先に攻撃をされてからでないと開戦してはいけないことになっておりますので。

これはあくまで正当防衛という体でやらせていただいております。」


「はっ!随分と余裕じゃねぇか。俺が一般人だって言うなら普通鉄砲なんて持ってくるか?

寝言は寝て言えよ…。」


「いえ、あなたはあくまで一般人です。

ですが抵抗する以上多少手荒になってしまうのはご了承を。」


そう告げるやいなや、男は再び俺に向かってくる。


次々に繰り出される拳や足に対して追い被せるように剣を振るい攻撃当ててはいるが一向に有効打を

与えられていない。


「クソが…。猿みたいに動き回りやがって!」


戦闘技術としては恐らく先日の女と比べてこいつの方が劣っていることは確かだ。

だがこいつに関しては少し攻撃が掠ったくらいではなんのダメージにもならない。

多少大きく攻撃が当たったところで今度は大きく距離を取りすぐに回復されてしまう。

完全に消耗戦だ。

俺が疲弊するのを待ち俺を倒した後で弟に手をかける気だろう。

俺もこの能力のおかげで多少回復力にブーストがかかっているとは言え

奴との回復性能の差は段違いだ。

このままではジリ貧になるだろう。


「はぁ、しょうがねぇな。奥の手出すか…。」


「兄さん…。無理しないでね…。」


いつでも防御が出来るようにと俺の後方に常に控えていた司が心配そうに声をかけてくる。


俺は強く剣を握り込むと意識を集中する。

剣を両手で前方に構えると俺の剣から徐々に熱が発生していきやがて剣全体が炎を帯びる。


自分の剣が出す炎で手や体の皮膚がチリチリと焼け焦げていくのが分かる。

これは長くは使えない。

正直俺の力の回復量を上回っている。

以前使った時は見た目が派手になるだけで目くらまし程度の効果しかなかった為

それきり使う事は無かった。

今まで使う機会もその一度きりだったが今回に限って言えば意味はある。


奴の治癒能力に対しただの物理攻撃は意味をなさない。

それでも、これを使えば切り裂くと同時に肉を炭化させられる。

いずれも決定打にはならないかもしれないが、うまくいけばこの男の治癒能力を阻害できる。


だが時間が無い。

俺は気合を入れて剣を構えると目の前の男に猛然と走り迫る。

ほとんど避けられはするが何回かは良いところには入っている。

隊服やマスクが所々破け焼け焦げている。

破れかけたマスクからは予想通り幼い顔がのぞいている。

斬り付ける度にブスブスと肉の焼ける音が耳に届き、人間の肉の焦げる香りに気分が悪くなる。

俺はこのグロテスクな光景を努めて意識しないようにがむしゃらに剣を振るった。


回復の隙を与えてはいけない。

間が開けばまた同じことの繰り返しになる。

それどころか俺の体は今まさに炎に蝕まれ自由が利かなくなってきている。


「…面倒な事を…。」

相手の男も俺の企みを察してか旗色が悪そうな顔をしている。

小声で奴のぼやきが聞こえた。


あまり期待してはいなかったが面倒だと思わせる程度には効いているらしい。

だが相手もなんとかこの事態を打開したいのかますますギアを上げてきている。


多少足搔かれたところでまだ対応できる。

余力は残っており、このまま押し切れる。

だがそうそううまくも行かないらしい次の瞬間俺は危うく致命傷を受けそうにった。


「う゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!!」


獣じみた咆哮と共に上半身を大きく捻り一瞬で間合いを詰めてくる。


やや不自然な大分手前の位置でダン!と大きく足を踏み込み俺を殴ろうとしているのが分かる

いや、その位置じゃ届かないだろ。何をしようとしている?

一瞬の内に疑問が脳内を巡るが次の瞬間には驚愕と共に理解した。


「危ない!!」


ガキン!


何か鋭い棒や槍のようなものを認識した時に、それは既に俺の眼前まで迫っていた。

だが、それを司が間一髪でカットインし弾き飛ばす。


なんだ?白い槍?鋭くティック状の形をした何かは司の盾に弾かれへし折れ地面に転がっている。


「それ、なんだよ…。」


あまりの予想外の出来事と一瞬感じた生命の危機に守ってくれた礼も返せないまま狼狽えていると

俺の代わりに司が異変に気付き声を上げる。


「その手…どういう事…?じゃあ今僕が盾で弾いたのは…まさか…君の……。」


司の驚愕の声で我に返り奴を見る。


先程俺に向かって突き出していたと思われる拳からは骨が突き出ておりそれが中ほどで折れている。


「…………ぐッッ…。」


男は今の攻撃がうまく決まらなかった事に苦虫をかみつぶしたような顔をした後

無言で拳から突き出た骨の槍の残骸を折り捨てる。


どれほど回復力が優れていようと痛み自体は感じるようで槍を折る際のゴキリと言う音と共に

男から小さくうめき声が漏れる。


それからすぐに骨の槍を再生成する。

今度は先程よりもかなり短い。

それが両手の拳に付き三本ずつ計6本。

まるで鉤爪のようなそれはその男自身の血を滴らせ不気味に光っていた。








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― 新着の感想 ―
[一言] まさかの自滅技ァ! 効果、道具を消費しないメリットの代わりに正気度の低下、狂気度上昇のデメリット…わりにあわねぇなこれ
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