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【8話】罪悪感と戦闘訓練


なんでこんなことになったのか。

そういえば今朝のテレビの占いは最下位だったな。

いや、そんなことは関係ない。

もう全身ボロボロだ。

あちこち痛いしさっきつぶれた足の感覚はもう無い。

僕の5メートルほど後方では悠が虫の息だ。

早く治さないと流石にそろそろまずいだろう。

地面を這って悠のところへ行こうとするが2、3メートル程死に掛けの芋虫のように

這ったところでまた激痛に呑まれ朦朧とする意識の中悠を見ていることしか出来なかった。



------------------------------------------------


僕が勇者と出会ってから一ヶ月が経とうしている。

その間にも勇者の足取りを追うため様々な機動部隊が動いているようだが依然として足取りは掴めていないようだった。

今後勇者は次々に曝璽者を生産・殺害し戦力を強化していくはずだ。

財団としてもそれに歯止めを掛けたいしこちら側の戦力強化が最優先の課題になっている。


そんな中、僕は財団からの通知を受けて綾野縁(あやのゆかり)さんから戦闘訓練を

受けることになった。


悠から聞いた話ではあるが縁さんは元々藤宮さんとコンビで任務に就くことが多く

仲が良かったらしい。

正直どんな面を下げて、のこのこ出て行けば良いかわからない。

気が重い。


あの戦闘で生き残ったのは僕だけだ。

どうしたって感情の矛先は僕に向くだろう。

縁さんに関しては藤宮さんと同じ火特3種指定の認定を受けている。

僕のような新米5種指定の曝璽者を指導する役割として上位の曝璽者が訓練の教官役で駆り出されるのはよくあることだ。

良くある事なんだが、今回のような人選は財団特有の物だろう。



効率だけで感情というものを一切含まない。

今回のケースは効率にも関わってくるのだから少しは考えろと悪態の一つも付きたくなるが

どうせ意見は通らないと諦めて、ため息をつきながらトボトボと指定された【サイト-18】へ向かう。




「お?どしたの?浮かない顔してんね。」

通路の曲がり角を曲がったところで悠に出会う。

「ああ。悠じゃないか。この間のアレだよ…。」


「あー。あれね。ゆかりんとの訓練今日だっけ?なに?不安なの?」

悠は不安そうに肩を落とす僕を見てむふー。とニヤ付いた表情をしている。


「意地の悪さが顔に出てるよ。」


「そんなことないよー。これは心配してる顔。先輩が後輩を心配するのは当然じゃないか。」


「じゃあ先輩、その顔は後輩に不快感を与えるからやめた方がいいと思いますよ。」


これ以上ここに居ても揶揄われるだけだと思い悠を適当にあしらってまた歩き出す。





「で、なんでまだついて来てるの…。悠だって暇じゃないでしょ…。」


「な、なんでわかったの…?私の潜伏は完璧だったはずなのに。」


わざとらしく驚く演技をする悠


本当は指摘するのも面倒なんだが今日は僕で遊びたいらしい。

あまり手ひどく扱うと後が面倒くさいので一旦乗っておこう。


「息継ぎの音。漏れてる…。」


悠の能力の物質透過は息を止めている間のみ有効だ。

壁の中に隠れて僕の後を付いてきて居たらしいが1~2分に一回「ぷはっ!」っと

間抜けな息継ぎの声が聞こえていた。


「ほら、今の幹也がゆかりんと1対1になったら美味しく頂かれちゃうだろうし。

ホントにまずそうなら私が間に入って執成してあげようかと。」


確かに僕一人で訓練を受けに行っても碌なことにはならなそうだ。

ゆかりさんもある程度は本気で痛めつけてくるだろうし仲裁役は居て困ることはなさそうだ。

僕をおもちゃにして遊んでいる部分もあるだろうがある程度同期のよしみで心配をしてくれているのかもしれない。


「あ、因みに心配はしてないよ。面白そうだから付いて行くだけ。」



もう勝手にしてくれとため息をついて予定の施設へと二人で歩いて行く。


たわいない会話をしながら財団の管理する施設に到着する。


この【サイト-18】は財団の戦闘職員専用の訓練施設になっている。

あらゆる天候や環境が再現可能となっており戦闘能力の測定や財団への敵対勢力や人型CCPを想定した戦闘訓練に利用されている。

こうした便利な施設のテクノロジーの出どころだが実は回収してきたCCPの異常特性が利用されており

対外的には実験と言う名目で施設を維持している。



サイトの入り口の扉を開けるとそこは市街地になっており屋内だというのに青空さえ見える。

また、サイト内の広さだが施設外殻の10倍ほどの空間が広がっている。


「さて、ゆかりさんを探しますか。」


悠に話しかけるでもなしに声を掛け市街地の中央の通りを進んでいく。

見た目は完璧に整備された街並みと言っても過言ではないが人間の気配が一切見当たらない。

商店や車が道に停車していたりするが人間だけが忽然と居なくなってしまった空間と言うのは

明るくても何とも気味が悪い。


ゆかりさんには市街地中心の公園周辺での待機命令が出ているはずだ。

戦闘訓練であるため馬鹿正直にわかりやすく待機していてくれるとも思えない。

僕らの姿を見つけた瞬間襲い掛かってくることも十分あり得る。

僕らは周囲を警戒しながら歩いていった。

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