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天界人

 白銀色の甲冑。波打つ白い髪。そして、背中に生えた二つの白い羽。俺達の頭上にその姿を現し、空に浮かぶその者に俺達は呆然とするしか無かった。 


 ただ一人。ネテス老人を除いては。


「やれやれ。六十年振りに橋が繋がったと思えば、とんだ血生臭い現場に来てしまったな」


 空に浮かぶ羽を生やした男は三十歳前後に見えた。この最上階を見回し、ぼやくようにため息をついた。


「天界人よ。そこで伸びておる黒き竜は聖竜じゃて。保護を頼みたい」


 ネテス老人は億劫そうに頭上を見上げながら驚愕の言葉を呟いた。あの羽を生やした男が天界人!?


「老人。何やら事情通のようだな。お主、よもや六十年前もここにいた者か?」


 天界人と呼ばれた男は、頭を掻きながらネテス老人を見た。


「その通りですじゃ。六十年前はそれはもう美しく艶っぽい女の天界人が来たがのお」


 ネテス老人の好色そうな声色に、天界人は再びため息をつく。


「ねえ。俺一つ分かんない事があるんだけど。この塔って聖竜を天界に逃す為にあるんでしょ?何で各階に番人がいてそれを邪魔すんの?」


 イバトが天界人とネテス老人を交互に見て質問する。


「少年の疑問は最もだな。各階の番人は我々天界が用意した者達だ。その我々の本音を言わせて貰うと、聖竜に関わった者達は全て消えて貰いたいのだ」


 天界人の恐ろしい真意に、俺達は言葉を失う。この塔に座す番人達は、例え聖竜を逃そうとしている者も口封じの為に消す為に存在していたのだ。


「······ならば。生き残った俺達もお前に消されるのか?天界人よ」


 コルカは大剣を再び構えた。ザンカルも無言でコルカ倣う。


「四手一族と魔族の戦士よ。心配には及ばん。お主達の行動はその石像を通して見ていた。聖竜の為に尽力してくれた者を消し去る程我々は非道では無い。まあこれも建前で、本当は全滅して欲しかったのだがな」


 天界人は三度目のため息をついた。


「ねえ天界人のおじさん。天界って、この空の向こうにあるの?どんな世界?雲の上に家とか建ってんの?」


 イバトが無邪気な質問を矢継ぎ早やにする。


「空であって空では無い。入り口は空にあるが、我々の世界はそこから別の空間にある。それを繋ぐのがこの七色の光だ」


 天界人は七色の光が射す空を見上げた。イバトも不思議そうに空を見つめる。


「······あの聖竜はどうなるの?人の肉を食べて身体も黒くなってしまったわ」


 クレアが心配そうに身動き一つしない聖竜を見た。


「心配は要らんぞ。天界の世界に連れて行けば、身体の中の毒も抜けるだろう。まあこの聖竜は死期も近いが、余生をゆっくりと過ごせるだろう」


 天界人はそう言うと、ホケットの肩に乗っていた小竜に視線を移す。


「その聖竜の子供も連れて行きたいのだかな」


 天界人の言葉に反応したのか、小竜はホケットの頭の後ろに隠れた。ホケットも不安そうに小竜を抱きしめる。


「分かった分かった。そんな目で私を見るな子供よ。その小竜は見なかった事にしよう」


 天界人は四度目のため息をつく。


「······この虹の塔は一体何の為にあるんだ?この老人は地上と天界を結ぶ橋と言っていたが」


 俺はため息ばかり吐く天界人に質問する。


「この虹の塔は天界と地上を結ぶ唯一の道だ。遥か昔には幾つもの道があったそうだがな」


 天界人は語り出した。遠い昔、天界と地上の交流は活発で地上人と天界人は互いの世界を行き来していた。


 だが、やがて天界人と地上人は争い合うようになり、それは本格的な戦争となった。聖竜は天界軍の尖兵としてその力を存分に奮った。


 やがて戦争も終わり、天界人達も自分達の世界に引き上げた。だが、天界に帰りそびれ地上の残ってしまった聖竜達がいた。


 天界の生き物である聖竜が地上に存在していたのは、その様な背景があったのだ。


「あの鎖に縛られている単眼の石像は何だ?」


 聖竜と天界人の石像の下に置かれた小さい別の石像を指差し、ザンカルは天界人に問いかける。


「あれはジャミライスと呼ばれる単眼の悪魔だ。奴は千年以上前に地上からこの塔の道を使い、天界に攻め入って来た。この悪魔によって天界は甚大な被害を被ったらしい」


 天界人はそう説明すると、地に降り立ち意識を失っている聖竜を抱えた。


「では私は聖竜と共に行く。地上の者達よ。出来れば今回の事は忘れ、他言しないようにしてくれ」


 天界人はそう言い残すと聖竜と共に飛翔した。


「······天界人。あんたの名は?」


 俺は天界人と聖竜を見上げながら何故か妙な質問をしてしまった。


「ん?ああ。私の名はリフレイツだ。さらばだ地上人達よ。聖竜が世話になった」


 リフレイツと名乗った天界人は、そう言って聖竜と共に虹の光の先へ飛び去り、消えて行った。




 

 

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