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深窓の美女の正体

「······君はユリサか?」


 突然現れフードの男を蹴り飛ばしたのは、以前仕事で護衛をした事があるユリサ嬢だった。


 だが、俺の目の前のユリサ嬢は深窓の姫君の格好では無かった。長い金髪の髪を後ろで束ね、皮の鎧を身に着け両手には鉄甲を装備していた。


「エリクさん。話は後です。ここを切り抜けましょう」


 ユリサは視線を倒した男から逸らさずに俺に返事をした。ユリサに蹴られた男は受け身を取ったらしく、直ぐに起き上がった。倒れた時にフードが取れたらしく、その顔が森の木々から射し込む陽光に晒された。


「······あの顔は」


 俺は男の顔を見て違和感を感じた。短い黒髪に閉じられた両目。そして男の顔は白かった。


 それは異様過ぎる程白かった。まるで生まれてから日の光を浴びた事が無いのかと思わせる程に。


「今直ぐに引きなさい。私の仲間がもう直ぐここに到着するわ。手練の仲間がね」


 素顔を晒した男に、ユリサは警告めいた言葉を発した。だが、男は動揺した素振りを全く見せない。


「······ハッタリだな。娘、お前の目的は何だ?」


 男の不気味な掠れた声が俺の耳に届いた。


「聖なる竜を。いえ、聖竜を利用しようとする悪から平和を守る正義の騎士って所かしら?」


 ユリサは不敵に笑い、男と睨み合う。


「私の親切な忠告を信じないなら構わないわ。但し。代償は己の命よ」


 ユリサの静かな。だが迫力のある声色に俺は驚いた。これは、かなりの修羅場を潜った者の威圧感だ。


「······チャプタ!イグタフ!退くぞ!」


 数瞬の沈黙の後、男は仲間の二人の名を叫んだ。コルカとイバトと交戦中だった二人は、危なげ無く後方に下がる。


 三人の男達は森の景色に溶け込むように消え去って行った。俺は直ぐに被害状況を確認する。


 コルカは無傷だ。そしてイバトは両手両足を地面につけ肩で息をしていた。危なかった。ユリサ嬢が現れなかったら、イバトは間違いなく殺されていただろう。


 そして、それは俺も同様だった。


「ユリサ。君の言った仲間は本当に来るのか?」


 俺の質問に、ユリサは苦笑して顔を横に振った。


「ハッタリですよエリクさん。皆無事で良かった」


 ユリサが答えると、子供達が一斉に命の恩人に群がる。


「なんで!?なんでお嬢様の貴方がそんな格好しているの?」


「馬鹿だなクレア!格好なんて問題じゃないんだよ!聞くのは何でここに現れたのかだろ!」


 クレアとイバトが大合唱を始めると、ユリサは困ったように微笑む。


「······最初から説明しますね。エリクさん達に護衛して頂いたあの仕事は、私が貴方達を観察する為の物だったんです」


 ユリサの話に、俺はまた嫌な予感がして来た。その時、俺の脳裏にある疑問が浮かんだ。


 ······ユリサを護衛した時、彼女は俺だけでは無くイバトとクレアの名を呼び挨拶をした。


 あの仕事を受けた時、冒険者職業安定所の受付で登録したのは俺の名前だけだ。何故なら、イバトとクレアはまだ年齢の問題で冒職安に登録出来ないからだ。


 何故ユリサはイバトとクレアの名を知っていたんだ?俺は今頃こんな事を思い出す自分の迂闊さを呪った。


「······私はこの国の騎士団所属の者です。最も。特殊な任務を遂行する裏の部隊ですが」


 ユリサの話の内容に、俺は不安が更に増して行く。それは例えると、徐々に退路が絶たれて行くような感覚だった。



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