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四九話 想定以上の……



 

「お、遂に観念するのか」

「観念って……まあ確かにそうとも言えるけど」

「それで、二人は付き合ってるのか?」

「……だとしたら隼人にはこの話は言ってなかったかもな」



 これは自分を卑下しているわけではないが、客観的に見て俺と有栖ではつり合いが取れてなさすぎる。

 たとえ有栖が俺の事を好いていてくれたとしても、隣に立つには自分を変えていかなくてはダメだろう。


 これは俺の心の問題でしかないが、有栖の横に立つならば今のままではダメだと思うという話だ。


「でも優佑は好きなんだろ?」

「どうしてそうなる」

「どうしても何も、優佑がそこまで心を許してて好きじゃない訳ないだろ」


 

 俺だってついこの間自覚したばかりだというのに。

 どうせバレるだろうとは思っていたが、もうすでにバレているとは……


「……悪いかよ」

「いんや? 優佑にも好きな奴ができて良かったなぁと思ってるだけだよ」

「……なんか言い方腹立つ」

「おいおい、いいのか? もうアドバイスしなくなっても」

「卑怯なやつめ……」



 結局生産性のない会話になってしまったが、隼人が来る事は決定したし、間違いなく川口さんも来るだろうとの事だった。







「――じゃあ二人とも4月の頃からもう仲良かったんですね」


 普段よりもガヤガヤとしている食堂で、俺と有栖は隼人と川口さんから質問を受けていた。

 周りの奴らもこちらに興味津々といった様子だが、それは気にせずあえて周りにも聞こえる声量でお互いに会話する。


「そうなるな」

「なら俺に教えてくれてもよかったんじゃないか?」

「いや、わざわざこの人と友達になりました。なんて報告する事誰もしないだろ、誰が誰と仲良くするかなんて自由なんだし」

「確かにそうだな」


 ちなみにこれは隼人の案だが、少しわざとらしいかもしれないがこの4人でというより、周りに聞こえるように会話しているのは効果があるかどうか分からないが、俺と有栖が仲が良い事を知らしめると同時にそれによって牽制する狙いがあるそうだ。




「氷室さんは木戸君の好きなところはある?」


「ちょっと待ってくれ、それはどう考えても――」


 どう考えても友達にする質問としておかしいのではないか、と言おうとしたが川口さんに目線で止められる。

 どうにも不安になる質問のように思えるのだが、横から隼人にとりあえず任せとけ、と言われてしまい結局止める事は出来なかった。



「優佑は優しくて、かっこいい。私が困ってたらいつも助けてくれるし、私のことを変に特別扱いしない。それに、初めて私の友達になってくれた他にも――」

「い、一旦ストップしてもらってもいいかな」

「……? まだあるよ?」

「う、うん。それは良い事なんだけど……他の人が耐えられなくなりそうだから、ね」


 有栖はなんてこと無いようにまだ言おうとしていたが、川口さんがそれを止める。

 まさかここまで言うとは思っていなかったのだろう。有栖も友達として好きなところを言っているだけなのだろうが、どう考えてもそれはまるで好きな人の自慢しているかのようで……。



「おい優佑、お前……すごいな」

「……」


 俺としてもまさかこんなに褒められるとは思っていなかったため、机に突っ伏して撃沈した。

 有栖からの好感度は他の人に比べたら高いだろうとは思っていたが、まさかここまで言われるとは……



 周りからも、「けっ、ただ惚気に来ただけかよ」「惚気るなら他所でやってくれ」「あいつのどこがいいんだか」などと聞こえてくる。

 仲が良い事を知らしめて牽制としては十分すぎる効果を発揮してくれたようだが、これは完全に勘違いされただろう。


 俺としては嬉しいが、有栖は100%友達として好きなところを言っただけで、異性として好きなところを言った訳では無い……と思う。

 果たして勘違いされる相手が俺だと気付いたときに嫌じゃないかだけが心配だ。



「ま、まあ、つけ入る隙もないって事ですよね」

「お、おう、そうだな、優佑と氷室さんの仲が凄く良いって事だ。良い事じゃないか」


 川口さんと隼人が俺に対してフォローを入れようとしているのだろうが、全くもって成り立ってない。



「……有栖、もうちょっと自重しような」

「……?」


 分かっていないのは有栖だけで、結局そのまま昼休みは終了した。








「なあ優佑、どう考えても氷室さんお前のこと好きだと思うんだけど」

「……」

「もしそうじゃないにしても、氷室さんには優佑ほど仲が良い人なんて他に居ないんだろ? なら――」

「……だったとしても、急に気持ちを伝えても有栖を混乱させてしまうだけかもしれない、事を急いて有栖に変な負担をかけさせたくないんだよ」



 俺が今日にでも有栖に気持ちを伝えたとして、そうしたら間違いなく有栖は戸惑うだろう。

 間違いなく有栖は俺の事を一番大事な友達(・・・・・・・)として見ているだろうし、異性として好きという感情を今まで誰に対しても持ったことが無いと思う。

 そんな中で急に告白しても、今の関係がごちゃごちゃになってしまうかもしれない。

 わざわざ自分の気持ちだけを優先して関係を進めようした結果、有栖に負担をかけたくはないのだ。


 ……というのが理由の7割で、残りの3割は単純に有栖との関係が壊れてしまうのが怖いからだ。



「俺は優佑の選択を尊重するけどさ、きっと今日から氷室さんは少しずつだとしても人と関わるようになる。相手の事を思って慎重になるのは良い事だけど、大事なものを逃すような事だけはするなよ?」

「……ああ」









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