プロローグ
絶叫や断末魔が響く戦場。
神と呼ばれる侵略者を前に、人類最強の部隊、そして人類の全戦力がぶつかり合う激戦が繰り広げられていた。
彼らは不死であり不死身。
だが、心臓中心部にある血命核と呼ばれる器官を破損すれば死ぬ。
それでも彼らは死も厭わず侵略者に刃を向ける。
硬質なもの同士がぶつかり合い、高い音が響く。
その音に混じることなく、血命核を貫かれ消滅して行く者が、数え切れぬ程いた。
現在進行形で。
激戦の果てに人類最強と謳われる部隊「夜の狩人」以外は、全滅した。
神は強すぎたのだ。
銃は効かず、核兵器ですら、かすり傷一つ付けられない。
ヴァイターと呼ばれる特別の作られた存在。
その頂点に立つ者達でさえ、追い詰められる程に。
消滅していく仲間を見ながら、彼らは戦う。
「はぁぁぁぁ!!!」
夜の狩人の隊長であり、最強のヴァイターが被弾覚悟で渾身の一撃を神に与えた。
それは決定打になるほどのもの。
だが、近づくことができない。
「今だ! 死ぬ気で追い打ちしろ!」
「「了解!」」
剣を持つものは、無数に降る雨が如き攻撃を掻い潜り突撃し、銃を握る者は、ありったけの力を銃注ぎ込み、狙いを定める。
そんな中、狩人の隊長は自身の頭部を大口径の自動小銃で撃ち抜き絶命する。
体が霧散していく。
そして部隊の後方で霧散した肉体が再結合されていき、蘇生する。
戦闘不能になるほどの傷も癒えて。
あと少し。
あと少しで倒せる所まで追い込んだ彼らに、神が強力な技を放つ。
「超大質量攻撃が来るぞ! 各自心臓を守れ!!」
神の周囲に神々しい色をした無数の棘が展開される。
それが一斉放たれる。
一撃ですらとてつもない威力を誇る棘。
それが無数ともなれば、地形すら変わるものとなる。
直撃の瞬間、彼らは自殺する。
不死という特性を活かし、体を霧散させ無理矢理に大質量攻撃を避ける。
霧散が間に合わない者は、当然死ぬ。
「クソ!」
夜の狩人の隊長は体を霧散させる力で自殺せずに、それを避ける。
ただし、その技では受けた傷は癒えない。
攻撃が終わると同時に狩人の隊員が捨て身の攻撃を仕掛ける。
固有武装を展開し、無理矢理に神の力を吸い上げて再生を阻害する。
そして自身の力を臨界を超えた状態で暴走させ、自爆する者もいた。
そのおかげで神の核が露出し、一時的だが弱体化させることができた。
「隊長! 俺ごと貫いてください!! どちらにせよ俺達の核はもう砕けます! それに俺の力で核は砕けませんから……」
再生阻害をしている男の隊員の体からは、血が溢れ出ていた。
神の再生力は人間には過剰過ぎて、猛毒となっていたのだ。
そして悔しそうな表情で狩人の隊長を見る。
「よくやったお前ら!! 後は任せろ!」
涙を堪え、感情を抑制し冷徹な瞳で神を睨む。
片腕は大質量攻撃で失い、心臓付近に風穴が空いていた。
満身創痍になりながらも全ての力を振り絞る。
全ての固有武装を展開し、ある種異形の姿とも言える状態で神の核を攻撃する。
足りない火力は自身の血を消費してブーストし、魔法の様な力で核を追撃する。
「ベルセティア発動!!」
夜の狩り人の隊長が持つ、三つの力。
完全適合能力、ヴァイターの力、そして異質なる力。
この全てを使い、異質なる力とヴァイターの力を暴走寸前の臨界状態で同時展開した状態。
これによりさらに力が増す。
そして核を男の隊員諸共、貫いた。
神は一瞬ビクンと痙攣し、命が尽きて灰となる。
その時、狩人の隊長は大量の神の血を浴びてしまった。
神の血は少量浴びるだけでもヴァイターの力を暴走させ、ヴァリスに堕とすのだ。
体を貫く様な痛みに絶叫を堪えられなかった。
一人の男の絶叫は木霊し、周囲の静けさに溶けいく。
そして彼は意識が暗闇に落ち、気絶した。
それを見届ける者も聞く者も、もはやここには残っていなかったのだった。
『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。