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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第二部——首都とネクロマンサーの観光農園

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第56話 ミミック再進化――ねえ、さっき何て言ったの?

アレカの宝石は、

さっきよりさらに強く輝き始め、

民宿の中は虹色の光に染め上げられた。


人形のまわりを

ぐるぐる回るその速度もどんどん上がっていき、


発する声は、

せわしない鳴き声から、

連続した低いハミングのような音へと変わっていく。


「止まらなくなってる……!」


カシヤが不安そうに声を上げ、

手を伸ばしてなだめようとしたが、


あまりの光の強さに押し返され、

思わず一歩退いた。


デレオが様子を

見ようと前に出ようとした、その時だった。


ウンブラ婆さんが、

バンッと勢いよく戸を開けて入ってきた。


室内をぐるりと一瞥した彼女の視線は、

すぐさま発光するアレカの上で止まる。


百歳をとうに越えた老婆の顔に、

珍しく好奇の色が浮かんだ。


「呪いはもう終わったのかい?

 ふむ……どうやら、

もっと面白いことが起きそうだねぇ」


その声を聞いた瞬間、

アレカはぴたりと足を止め、

ぱちりと目を上げてウンブラを見る。


ウンブラは

テーブルの上から人形を手に取ると、

じっくりと観察した。


「ふん……アビの呪い、

完璧を通り越してるよ」


老婆はとても満足そうにうなずいた。


その一言に、

アビスウズの目がじわりとうるんだ。


ウンブラ婆さんからの賛辞は、

彼女にとっては

勲章にも勝るご褒美なのだ。


「ほれ」

ウンブラはデレオに人形を差し出す。


「これほどの呪いを、

アンタの足の山一袋と交換だなんて、

本当は安すぎるんだけどね。


 本当なら二袋はもらいたいところさ。

アンタ、まだ一袋分わたしに借りがあるよ」


老婆はいたずらっぽく笑った。


「うーん、

もう一袋はさすがにきついけど……

代わりに、

あとで情報を一つ売りましょうか」


デレオは恐怖の呪い人形を受け取り、

まじまじと眺める。


この恐怖の呪い人形は、

一見するととても愛らしい姿をしていた。


丸みを帯びたシルエットに、

コンパクトな体つき。


まるで小さな猫の精霊が、

ぬいぐるみに姿を変えたかのようだ。


なめらかな土色の亜竜の皮が全身を包み、

その質感はしっとりと温かく、

それでいてしなやかな強さを秘めている。


ふっくらとしたお腹には、

デレオの着古した服を

裂いて作った詰め物がぎっしり詰まっており、

握るとほんのり温もりを感じさせる。


それは単なる素材以上に、

この人形とデレオとの“つながり”を

強めているようだった。


「この人形……お前が作ったのか?」


デレオがアレカにたずねると、

小さな箱は、黙ってこくりとうなずいた。


デレオはもう一度、

人形の顔を見つめ直す。


なかでも目を引くのは、

顔に埋め込まれた二つの黒瑪瑙の瞳だった。


夜空の星のように暗く、時折、

底の見えない光を湛えるその目は、


見つめる者の心の奥――恐怖そのものを、

暴き出してしまいそうな気配を帯びている。


ひとたび魔法が起動すれば、

その不吉な光は空気さえざわめかせ、

臆病な生き物なら、

一歩も近づけなくなるだろう。


呪い人形であるはずなのに、

その役割はむしろ護符に近い。


それも、世にある大半のお守りより、

ずっと強力な護りだ。


この人形さえ持ち歩けば、

恐怖をばらまき、

心の弱い敵を一掃してくれる――

そんな頼もしささえ漂っている。


アレカは、その人形から目を離さなかった。


アーモンドのような瞳が、

期待にきらめいている。


デレオの足元をぐるぐる回り、

ドスドスと跳ねながら、

まるで「早く! 早く!」と

何かを催促しているようだった。


デレオは軽くしゃがみ込み、

人形をアレカの前に差し出す。


するとアレカは、すぐに舌を伸ばし、

その丈夫な亜竜の皮をそっとぺろりと舐めた。


まるで、

この贈り物が本当に自分のものなのか、

確かめるかのように。


その場にいる全員の視線が、

アレカへと集中する。


デレオ以外、

誰も「ミミックの進化」を

見たことがないのだ。


アレカはじっと人形をにらみつけると、

待ちきれないと言わんばかりに、

一気にそれを丸呑みにした。


次の瞬間、アレカの両目が、

妙にリアルなQRコードのような

模様に変化する。


ぱん、と蓋が自動的に跳ね上がり、

箱の中からは、

カラカラ、ガチャガチャと、


歯車がかみ合うような機械音が鳴り響いた。


続いて、

アレカは口から数枚の金属板を吐き出す。


正体不明の素材でできた板切れ。

それから、

何色とも言えない不思議な宝石。


暴風鷲の羽をあしらった、


猫人シャーマン風の仮面。


形状記憶合金のような不思議なスプリング。


そして、

さっき飲み込んだばかりの恐怖の呪い人形。


アレカは舌を器用に動かし、

それらのパーツをきちんと並べると、

小さなエンジニアのような顔つきで、

せっせと組み立てを始めた。


スプリングを人形の下に取り付け、

人形にシャーマンの仮面をかぶせる。


すると――その猫人形は、

まるで魂を吹き込まれたかのように動き出した。


黒瑪瑙の瞳はもはやただの宝石ではない。


笑い、瞬きをし、

ぐるぐると忙しなく動く。


人形はすっと立ち上がると、

ひときわ大きな金属板を担ぎ上げ、


アレカの「本体」で

ある宝石箱に取りかかり始めた。


目を閉じたアレカは、

まるで主人が外出している間の家のように、

じっと動かずそこに座っている。


――デレオは、

そこでようやく気がついた。


この「猫人形」こそが、

本当のアレカなのだと。


ピリピリ、ガンガン、カンカン――。


アレカは板を運び、

宝石箱のまわりを忙しく飛び回りながら、

パーツをはめ込み、叩き、調整していく。


その光景に、全員が目を奪われた。


まるで、大人が車を修理しているのを、

子どもがこっそり覗いているような、

そんな好奇心に満ちた視線ばかりだ。


以前よりひと回り大きくなったそれは、

もはや小箱というより、

しっかりした

「箱」と呼ぶにふさわしいサイズだ。


ほとんどの作業が終わったようで、

最後にあの「正体不明の宝石」を、

箱の正面にはめ込む。


すべての部品が、

正しい位置に収まった。


アレカはついに、

自分の「家」を作り上げた。


アレカが箱の蓋を開いた。

スプリングがキュッと縮み、

そして勢いよく伸びる。


ポンッ!


猫人形が箱の中へと飛び込み、

そのまま中に消えた。


蓋が閉じる。


ふわりと淡い光が箱の全体を包み込む。

そして――

箱が跳ね上がり、

今度は猫人形が勢いよく飛び出した。


まるで当選者の名前を

読み上げる司会者のように、


小さな声で、

しかしはっきりと告げる。


『進化完了!

 ジュエルイーターの全能力、補正完了。

 レベル初期化──Lv1。

 ジュエルイーターは

 びっくり箱へと進化しました。


 進化前の能力値およびスキルを完全継承。

 新たな能力を獲得:

 宝石レーザー・屈折モード/言語使用/

 下級呪詛の行使/恐怖のオーラ/

 下級電撃系魔法の行使。


 個体名アレカ・ジェマルム、

 アレカ・ディアブルへと改名。』


「言語使用……ってことは──」


デレオとカシヤは、

そろって顔を見合わせる。


「アレカが、

しゃべれるようになったってことだね!」


二人は、

まるで赤ん坊が初めて

「ママ」と呼んだときの親のように、

きゃあっと声を上げて喜んだ。


「そんなに珍しいことかしら? 

しゃべる魔物なんて、いくらでもいるのに」


箱の蓋がぱかりと開き、

猫人形アレカがぴょこんと飛び出す。

そしてデレオの膝をぽんぽんと叩いた。


「そうかな?」

ウンブラ婆さんがずいと前に出て、

興味深そうにアレカを见つめる。


「しゃべるミミックなんてねぇ、

世界中探しても、アンタ一匹だけだよ」


「できればね、

もっと他の才能に注目してほしいんだけど。


 言葉をしゃべれるかどうかなんて、

ボクにとっては枝葉末節だよ」


アレカは腕を組み、

いかにも偉そうな態度を取る。


「そうかい? じゃあ、小僧。

アンタ、自分が何ができるか、

婆さんに教えてごらんよ」


ウンブラは、

孫の成長を確かめる祖母のような

目つきでアレカに問いかけた。


「レベルが上がればね、

もっと強力な呪詛系の魔法も覚えるよ。


 それから、

ミミック専用のトラップスキルもね。

期待してていいよ?」


アレカは片手を突き上げてみせ、

得意満面だ。


「デレオ」

ウンブラ婆さんが、

今度は命令口調で呼びつける。


「はいっ、婆さん!」

デレオは即座に背筋を伸ばした。


このトーンで呼ばれたときに、

ヘラヘラしていては本気でしばかれかねない。


「アンタ、これからここに顔出すたびに、

このちびの成長具合を報告するんだよ。

分かったね?」


デレオが返事をする前に、

アレカが割り込む。


「ボクが自分で報告するってば。

通訳なんかいらないよ」


ウンブラ婆さんは口元に笑みを浮かべた。


「まったく、生意気なちびだこと」

アレカはさらに図に乗る。


「ところでさ、ウンブラ。

うちのボス、まだ足の山一袋、

借りてるんだよね?」


それを聞いたウンブラは、

腹を抱えて笑った。


「そうさ。あの小僧は、

まだ一袋分わたしに借りがあるよ」


このアレカ、

今までしゃべれなかったせいで誰も

気づかなかったが、


どうやら性格はかなりの腹黒タイプらしい。


「それで、小僧。

アンタはどんな情報を売るつもりなんだい?」


ウンブラ婆さんの眼差しが、

獲物を見据える老猫のそれに変わる。


「そうですね……新品種の悪魔の情報、

なんてどうでしょう?」


デレオは、ここ二週間で、

もう五回目になる「例の悪魔の話」を切り出した。


「新品種の悪魔? それは面白そうだねぇ。

さあ、詳しく聞かせておくれ」


ウンブラの眼差しが、鋭く光った。

———大したことではないこと———


びっくり箱

初期スキル:恐怖のオーラ/低位電撃魔法


Lv2 威嚇

Lv3 ピコピコハンマー

Lv5 呪い反射

Lv7 バネ拳

Lv11 精神呪詛

以下不明

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