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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第一部——太古の宇宙船遺跡

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第20話 悪魔が角笛をひと吹きしただけで、遺跡は砕け散り。

昨夜の暴風鷲の姿は、

もうどこにもなかった。


ただ、

地面に散らばった帯電した青い羽だけが、

やつの存在を物語っている。


今この場を

支配しているのは「粛清者Ⅱ型」――

宇宙船内部を定期巡回している

制圧用の機兵だ。


あれは、

うるさい雄鶏に

引き寄せられて来たわけじゃない。


たまたま巡回コースの途中で、

この大混乱に出くわしただけだろう。


周囲の死肉あさりやアンデッドの数は

目に見えて減っている。


だが、

死体の山は昨日よりさらに高くなっていた。


「このまま増え続けるようなら、

ギルドに報告しないとマズいな。」


デレオの声には、

わずかな焦りがにじんでいた。


ここまで死体が積み上がると、

伝染病が発生してもおかしくない。


伝染病が広がって周辺の生物が

大量死なんてことになったら、


冒険者たちは

稼ぎどころを丸ごと失ってしまう。


「とんでもない死闘だね、こりゃ。」


アペスがデレオの隣に並び、

向こう側の戦場を一緒に見下ろす。


「どう見る?」


「死にすぎ。

ここまで死者が増えると、

リッチを召喚できるレベルだよ。」


「リッチ、相手できるのか?」


「闘技場で何回かやったことある。

実体をとらえにくいから、

けっこうやりづらいけどね。」


「リッチと人間って、

同じ闘技場で戦わせるもんなのか?」


「やるよ。

三環闘技場の

年次グランドチャンピオン戦はね、


人間・機械・獣、

三つの闘技場の王者を

一つのフィールドにぶち込んで、

最後に残ったやつが優勝なの。」


「それ聞いても、

あんたが

《人間闘技場》のチャンピオンだったのは、

まったく驚かないんだが。」


「実は今年の三環グランドチャンピオン、

私なんだよね。」


「マジかよ! 

差し支えなければ聞きたいんだけどさ、

君のクラスレベルっていくつ?」


「Lv46のモンク。

どうせ聞いてくると思った。」


「Lv46のモンク! 

それって、

七つの脈輪チャクラ全部開いてるレベルだろ?」


「個別に開くのはできる。

七つ同時に展開するには、

もう一段階上が必要だけど。」


「いやほんと、

純粋に気になるんだけど……


ダンジョンや遺跡に

ちょくちょく潜ってるタイプ? 

そこまでクラスレベル上げるのに、

どうやって鍛えたんだ?」


「基礎トレーニングと瞑想、

たまに悪人の討伐や闘技場の挑戦。


あとはクリシュナへの祈りで、

自然とレベルは上がっていくよ。」


「そりゃあ、

ずいぶん充実した毎日を送ってるわけだ。」


「忙しすぎて、

彼氏を作るヒマが

まったくないくらいにはね。」


アペスは、

獲物でも値踏みするような

目つきでデレオを見た。


「候補も一人もいないのか?」


デレオは視線を合わせられなかった。


こじれそうな人間関係は、

どうにも苦手だ。


「んー……どう言えばいいかな。


僧兵団には男はいっぱいいるけど、

 私、

あんまりガサツな男は好きじゃないんだ。」


――やっぱり、

もう少し荒っぽく振る舞った方がいいのか?

そんな考えがデレオの頭をよぎる。


「無理して荒っぽくなろうとしても、

似合わないよ。」


アペスは、

その表情だけでデレオの考えを読み取り、

どこか寂しそうに彼の肩を軽く叩いた。


「ち、違う! そういう意味じゃない!」


デレオは慌てて言い訳する。


アペスは小さく笑い、

それ以上は何も言わずに、

再びあのロボットへ視線を戻した。


どうやら、

その行動パターンを分析しているようだ。


二人はしばらく様子を見続けた。


粛清者Ⅱ型は十体を超える大型魔物を

連続で鎮圧している。


どうやら、

このあと彼らが戦う相手は、

こいつになりそうだった。


「――あのロボット、相手できそうか?」


「ダンジョン産のロボットには

あまり詳しくないけど……


 今見せてる戦闘能力と同じレベルなら、

五番目の脈輪チャクラまで開けば十分かな。」


粛清者Ⅱ型の火力はかなりのものだ。

ほとんどの冒険者は事前に、

粛清者Ⅱ型の巡回パターンを調べておく。


ギルドは専属の斥候を雇い入れ、

定期的にやつの位置情報を

報告させているほどだ。


「強いのは強いけど、

基本は遭遇しないように

動けばいい相手なんだ。」


デレオが言う。


「でも今回は、そうもいかなそうだね。」


アペスの声には、期待が混じっていた。


「まあ、

こっちには暴力モンク様がついてるしな。

怖がる必要はなさそうだ。」


デレオが笑うと――

どうやら、

この遺跡全体を相手にする覚悟を

決めておいたほうがよさそうだな。


「よし、じゃあ行こっか。

あの強そうなロボット、ぶっ壊しにさ。」


アペスは

デレオとカシヤの手を片方ずつ握り、

遠足に行く子供みたいに手を

つないで跳ねながら向こうへ渡っていく。


「アペス、本当に勝てるの?」


カシヤは不安そうに粛清者Ⅱ型を見つめた。

ちょうど今、

あれは群がってくるゴブリンたちを

掃射している最中だ。


「大丈夫。

全力出すまでもない相手だよ。」


デレオはもう一度、

粛清者Ⅱ型をじっと見た。


あれはあれで、

だいぶ大変そうではある。


遺跡中のゴブリンが、

総出で討伐に来ているんじゃないかと思うくらい、

次から次へとゴブリンが突撃していく。


ゴブリンたちは、

死ぬのも構わず粛清者Ⅱ型へ殺到していた。


その最前線のかなり後ろでは、

ゴブリン・シャーマンたちの

一団が血塗れの魔法陣を囲んでいた。


「あれ、召喚陣だな。

邪悪な何かを呼び出すタイプの。」


デレオが言う。


「この生贄の量は……」


鮮血の魔法陣から、

天を突く赤光が噴き上がる。


イナゴのような翅、

サソリの尻尾、

長い髪、

鉄の鎧をまとった悪魔が姿を現した。


やつは一声だけ雄叫びを上げ、

まだ息のあるゴブリンたちを

まとめて追加の供物に変えた。


炎が走り、

悪魔は彼らの悲鳴を肴に、

歪んだ笑みを浮かべる。


粛清者Ⅱ型は即座に

フルバーストモードへ移行し、


出力と弾幕密度を最大まで引き上げ、

目の前の悪魔を容赦なく制圧しにかかる。


その一斉射撃は、

完全に悪魔の逆鱗に触れてしまった。


悪魔は翅を広げ、

角笛を高く掲げると――

大きく息を吸い込んで、

角笛を吹き鳴らした。


――隕石。


空気が細い鋼線のように引き絞られ、

一つ目の隕石が天井をぶち破る。

鉄骨がきしみ、悲鳴のような音を上げた。


遺跡の外の空が、突然燃え上がる。


「つかまって!」


アペスは二人をひっつかみ、

柱の陰へ投げ飛ばした。

直後、

背後で石つぶての雨が針のように弾け飛ぶ。


二つ目の隕石が、

彼らの足元ど真ん中に命中する。


床は紙切れのように裂け、足場が消える。


ふっと重力が消える感覚の中で、

カシヤの指先が

一瞬だけデレオの上着をつかみ――

すぐに衝撃波に弾かれて離れてしまった。


闇の中へと落ちていくその瞬間――


デレオは、

聞き覚えのない、

不気味な声が笑うのをはっきりと聞いた。


『本気で、

オレに覗かれてることに

気づかれてないとでも思ったか……』


そして、激しい衝突音。


――そのあとに訪れたのは、

完全な静寂だった。

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