表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第一部——太古の宇宙船遺跡

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/90

第15話 ゴブリン騎兵隊——もうチュートリアル通りでいい

「来るぞ。」


デレオのダガーが、

びくりと震え始めた。


「足音の種類が多すぎる……。

俺の勘が当たってるなら――」


言い終える前に、

一本の「槍」がさっきまで

デレオが立っていた場所を貫いた。


曲がり角から飛び出してきた

ゴブリン・テロバード騎兵が、

危うく命を奪いかけたのだ。


それは人間と同じくらいの背丈を持つ

巨大な鳥だった。


粗末な手綱が嘴にかけられ、

その背にはボサボサ頭のゴブリンが

またがっている。


ゴブリンが握っているのは長い棒で、

その先端に適当に尖った鉄くずを

くくりつけただけの、

なんちゃってランスだった。


デレオが状況を整理する間もなく、

ゴブリン・テロバード騎兵は

再びランスを振りかざして突進してくる。


ハンマー対ランス。

リーチの差は、どう見ても絶望的だ。


だが、相手は

知能も体力も子ども並みのゴブリンである。


テロバードに鞍すら付けておらず、

その足運びに合わせて

騎手の身体もグラグラ揺れ、


それにつられて

穂先もフラフラと定まらない。


デレオはゴブリンの目をじっと見据え、

その遅くて素人丸出しの突きを

ひらりとかわし、

大きく一歩踏み込んだ。


「おおりゃあっ!」


デレオが一喝すると、

その“テロバード騎兵”はビクッとして、

すぐに目をぎゅっとつぶってしまう。


――ギルド新人講習より。


ゴブリン相手の初手は、

「まずは脅せ」。


ゴブリンが陰険で卑怯者なのは、

要するに臆病だからだ。


デレオがほんの少し声を張り上げただけで、

ゴブリンはランスをまともに握れなくなり、

ガランと地面に落としてしまった。


おまけに、

そのランスを拾おうとして、

自分からテロバードの背から

飛び降りる始末である。


デレオは余裕たっぷりに歩み寄り、

その「ランス」を足で踏みつけた。


「はぁ? 

今の一手で降りたら、

逃げる足まで捨てることになるだろうが。」


騎兵としての利点も、

長柄武器の優位も、

何一つ理解していない愚かな亜人。


ハンマーを一振りして、

余計な手間を一つ減らした。


「カシヤ、

アペスがどこまで行ったか、

そっちで見ててくれ。」


デレオはカシヤに小さな望遠鏡を渡すと、

手綱を引いて暴れるテロバードをなだめる。


まだ姿を見せていない

一団の足音に耳を澄ましながら、

ゴブリン騎兵の襲撃はあと三波、

とデレオは見積もった。


自分の体力でまともに相手をできるのは、

せいぜい二波までだろう。


「うん、見てみる。」


カシヤは望遠鏡を受け取る。


二波目の襲撃がやって来た。

曲がり角から、

二匹の野犬が縦に並んで飛び出してくる。


その背には一匹ずつ、

卑怯そうなゴブリンがまたがっていた。


もちろん、ここにも鞍はない。

またしてもヨロヨロ揺れながら、

今度は騎兵戦に

向かない剣を振り回している。


騎乗技術など、見る影もない。


彼らにとって「騎兵」とは、

人間がそれっぽく乗っているのを見て、

「なんかカッコよさそう」と

真似しただけの遊びなのだ。


デレオはテロバードの首を引き寄せ、

その頭を二匹の野犬の方へ向けた。


脚を軽く蹴ると、

テロバードは悲鳴のような鳴き声を上げ、

野犬騎兵へ向かって突撃する。


迫力満点のその姿に、

四つの小さな心臓がいっぺんに縮み上がる。


騎手と騎獣が揃って転げ回り、

その場は一瞬で大混乱になった。


テロバードとゴブリンの一人が

取っ組み合いになっている。


デレオはのんびりと

先ほどのランスを拾い上げ、

歩いていった。


その様子を見ていた野犬の一匹は、

立ち上がるや否や尻尾を巻いて逃げ出す。


残されたゴブリンが剣を拾った瞬間、

デレオはランスで喉元を

「冷やして」やった。


武器の長さがこれだけ違えば、

勝負にもならない。


デレオがもう一方のゴブリンへ

目を向けると、

テロバードがそちらの「一匹と一頭」を

半殺しにしていた。


そのあと、

鳥は「ガァッ」とひと鳴きして、

どこかへ駆け去っていった。

自由の身だ。


「アペスは、まだ見つからないか?」


デレオは瀕死のゴブリンのそばに立ち、

ランスを構える。


「ブスッ!」


それから


「パキン!」


二度目を刺したところで、

ランスはあっけなく折れた。

――これが、ゴブリン製の武器品質である。


「姿は見えるけど、その……。」


「貸してみろ。」


デレオは望遠鏡を受け取り、

向こう側を覗いた。


「その節約って概念ゼロの暴力女がよ……。」


それ以上、言葉にする気力も湧いてこない。


撤退行動を取っていない、

というわけではない。


ただ、突っ込んでくる敵を、

一人残らず真正面から

叩き伏せているだけだ。


「いっそ全員に一礼してから、

一対一で試合してろよ。

『退く』って字、書けるのかあいつ。」


「迎えに行った方がいいかな?」


「いや、その前に次の波が来る。」


曲がり角の方から、

「ギコギコ」という音が響いてきた。


「なんだか、古い機械の音みたい……。」


カシヤが警戒してつぶやく。


「見てればわかるさ。」


デレオは多くを語らず、

ハンマーを握り直した。


三波目の襲撃がやって来た。


そこに現れたのは三台の三輪自転車――

いや、

協力してこがないと進まないタイプの

「協力自転車」に乗った

ゴブリンたちだった。


カシヤは思わず吹き出す。


三匹の醜いゴブリンが、

舌を出して肩で息をしている。


一番前でハンドルを握っているゴブリンは、

背が足りなくて、

両腕を精一杯伸ばしているせいで、

ブレーキレバーにまともに指が届かない。


後ろの二匹は、

武器を構えてわめき散らしているが、

脚はペダルを回すだけで限界で、

顔には疲労の色が濃い。


そのくせ、

自転車の速度はとてつもなく遅い。


「これがゴブリン騎兵隊の

いちばんの問題なんだよ!」


デレオは冷たく笑ってアレカに目配せし、

折れた槍を拾い上げると、

堂々と荷車のほうへ歩いていった。


「装備と訓練が足りてないから?」


カシヤはひょいとしゃがみ込み、

道端の石ころをひとつ拾い上げた。


「お、おう……まあ、

それもあるけどな。」


デレオはカシヤが

話に乗ってくるとは思っておらず、

少し面食らった。


「でもな、

それはゴブリンそのものに

起因する問題だ。」


そう言って、

折れた槍を棍棒のように振り回してみせる。


三匹のゴブリンは

そろってびくりと身をすくめ、


いちばん後ろのゴブリンは

荷車から転げ落ちてしまった。


「やつらの騎兵隊が笑いものになる

一番の理由は、

到着のタイミング差だ。」


落ちたゴブリンは起き上がると、

慌てて三輪車を追いかける。


そのせいで、

前の二匹がペダルを踏み損ね、

三匹まとめてひっくり返った。


「想像してみろ。

この六匹が同時に現れていたら、

今みたいに楽はできなかった。」


デレオは近づいていき、棒で一撃。

棒が折れ、

一匹目のゴブリンは泡を吹いて倒れ込む。


死んだかどうかまでは気にしない。

動かなくなれば、それで十分だ。


「そうか……

こうやってバラバラに戦場に着くから、

数の有利が活きないんだね。」


カシヤは構え直し、拾った石を、

こっそりデレオに背後から

切りかかろうとしていた

ゴブリンの頭めがけて投げつけた。


「そう。

騎兵を発展させる前に、

まずは騎乗動物の飼育技術を

整えるべきだな。

足並みくらい揃えないと。」


デレオは

カシヤのコントロールに感心しつつ、

残り一匹に視線を向けた。


しかし振り向いた時には、

最後のゴブリンはすでに仲間を

見捨てて逃げ去っていた。


二人はしばらくアペスを待ったが、

彼女の姿はまだ見えない。

きっちり殿は務めているのだろうが、

そのぶん撤退が遅れているらしい。


そして、曲がり角の向こう側では、

誰かの巨大な足音だけが、

いつまでもこちらへ

近づいてこようとしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ