プロローグ
ピピピピッ、ピピピピッ
うっすらと目を開けて、騒がしい時計を見る。
ああ、まだ大丈夫だ。
まだ寝れる。
そう思うと、重い瞼を再び閉じ、眠りにつく。
ピピピピッ、ピピピピッ
うるさい。
もう少し寝かせてくれよ……。
しかし、目障りな時計は鳴り止まなかった。
「ちょっと裕樹、何時だと思ってるの!」
母さんだ。
寝ている俺を起こしにくる母さんの声は、何故かイライラとしてしまう。
「うる……」
ハッとなって目を見開く。
時計の針は家を出る1時間前を切っていた。
あ、遅刻するかも
ベッドから起き上がると、数秒ぼーっとしながらも、俺は急いで食卓まで駆ける。
今日の朝ごはんはトースト二枚だ。
「いただきます」
焼きたてだったのか、それともただの猫舌だったのか。
一口かじったトーストは、口の上の部分をやけどしたんじゃないかと思うほど熱かった。
いや、やけどしたな。
もぐもぐとトーストをひとかじり、もうひとかじりと食べていく。
――
「ご馳走様でした」
ふと顔を上げて時計を見る。
家を出るまであと三十分だった。
パンツと制服ズボン、ポロシャツ、靴下を手に持ち、お風呂場へと向かう。
寝ている間にも、汗は沢山かいているらしい。
だから朝はシャワーで洗い流すようにしている。
清潔にしておいて損はないしな。
ついでに洗顔も済ませて、お風呂を出る。
制服を着てドライヤーで髪をかわかす。
家を出るまであと十分。
学校の支度を済ませて、歯を磨き、ちょっとスマホをいじっているといつのまにか十分を使い切っていた。
「いってきます」
俺は鏡の前で前髪をいじると、玄関のドアを開けて鍵を閉める。
スマホでインスタを見ながら駐輪場へ歩く。
はぁ、彼女とのツーショットか……
中学の頃の友達と彼女っぽい女の子の楽しそうな写真がストーリーに上がっていた。
俺はもう高校2年生になるが、彼女はいない。
だが、中学の頃に一度女の子と付き合った事はある。
過去の栄光に縋るのはどうかと思うが、まあ俺だってやればできる、はず。
俺は本気を出してないだけだ、と半ば強引に考えることをやめて、自転車に跨がる。
ペダルの一漕ぎ目はなかなか重い。
立ち漕ぎでスピードを出し、走りだす。
――
「ハァ……ハァ……」
学校の門の前は坂になっている。
学校に向かうときは上り坂だ。
息が上がる。
汗もダラダラでベタベタだ。
せっかくシャワー浴びたのに……。
色々と文句を言いながらも、無事に校門をくぐる事ができた。
――
キーンコーンカーンコーン
学校のチャイムが鳴る。
俺は友達が少ないから本当に何も起こらない。
まず人と話す勇気がないし、変に頑張って失敗するのも恥ずかしい。
まあいい、授業が終わると次は部活だ。
俺はバスケ部に入っている。
小学校にいた頃からずっとバスケをしてきたがそれほど上手くない。
部内では補欠扱いだし、恥ずかしながら後輩からも慕われていない。
あまり部活は楽しくはない。
でもやっぱり点を決めたり、ドリブルで相手を抜き去る時は楽しいと感じてしまう。
よし、今日も程よく頑張ろう。
――
「お疲れ様です」
「おつかれ」
集団で帰る後輩の挨拶を華麗に返して、俺はぼっちで学校の駐輪場へと向かう。
いつも通りの一日を今日も終わらせた。
よくやった、俺。
自転車に跨ってそんな事を考えながら、重いペダルを立ち漕ぎで踏み込む。
俺は校門を通り、坂を下り始める。
ビュウウウウ
強い風を感じながら違和感に気づく。
ブレーキが効かない!
自転車の車輪は回り続けた。
まずいまずいどうしよう! なんでブレーキが効かないんだ!?
額に当たる風がだんだん強くなっていく。
髪が物凄い勢いでなびく。
俺は恐怖でケツの穴にキュッと力が入るのがわかった。
坂を下りると、信号の無い十字路で右から明るい光が段々と近づいてくる。
あ、やばいかもこれ
俺は、高台から水に落ちる感覚と浮遊感を感じながら、グシャッと何かが潰れる音を聞いた。
次回のセリフの部分が少し読みづらいかもしれません。
ストレスを感じる方は()の部分だけ読んでください。




