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29 ツヴァイ察する

 


「アイツ?何の話ですか?」


「そっちの兄とやらが前回゛僕が見られるなら、アイツと違って魔術師になっていたさ。そうしたら貴様と比べられたりしなかった!゛と言っていたが、それはお前か?」


 俺はカシューネ弟を見ながらため息を吐く。


 兄弟揃ってシェイラ嬢とのデートを邪魔するな!!

 しかもイケメンがこれ以上増えたら競争率が上がるだろ!

 あれか、やはり王太子妃殿下が言っていたように《精霊の忌み子》である俺がシェイラ嬢といるのが性質的に気に入らないからか!?


 さっきまで美味しかったアップルパイの味が苛立ちで落ちるだろ!

 もぐもぐ、ごくんっ。・・・うん、まぁ美味しいけどさ。


「・・・兄さん、一体何を話したの?」


「いや、ツヴァイが《精霊の愛し子》とか何とか言い出したから。僕は見えないし、クレメルならたまに見たことあっただろ?だから、僕なら魔術師になったなって、思って、そのっ・・・」


 カシューネ弟が笑顔で何か黒いオーラを放ち始めた。見た目モテそうな優男の笑顔って腹黒っぽい。カシューネ兄と比べて賢そうでめんどくさいな。

 カシューネ兄はたじたじだ。兄弱っ、俺の家とは大違いだな。


「勝手に喋るのはルール違反だよ。魔術師でもないのに見えることが知れると魔女と疑われるかもしれない」


「すまん。ツヴァイに勝負を挑むことしか考えてなかった」


「ツヴァイ副隊長殿に相手にもされないくせに。余計なことを」


 カシューネ弟が綺麗な顔を歪ませて悪態を吐く。

 まぁ、自分の個人情報を兄にペラペラ喋られたら嫌だろうな。


 んー、にしても苛立ってるな。

 俺はカシューネ兄は相手にしないって言うより、仕事でないなら勝負する意味がわからないだけだが?

 俺が認めても周りの評価はたいして変わらないし。

 そんなことする暇があるなら、もっと鍛練して第2の隊長である脳筋アーモンディに腕を磨いていることをアピールした方が有効だ。


「別にツヴァイに知られても大丈夫だろ?クソ真面目で堅物な分融通はきかないが公平だ。きちんとした調べや証拠もなしに不当に断罪はしない。むしろ、適性検査をして上へ話を通してくれるはずだ」


 おや?

 カシューネ兄には結構嫌われてると思っていたが意外と俺の信用値が高い。


 でも、普通そうするよね?

 魔女だなんて判断されたら捕まっちゃうし。

 悪事に手を染めてる場合が多いから最悪処刑されるのに、無実の人だったら悲惨である。


「僕は魔術師になるつもりはないよ。興味がないんだ。只でさえ数の少ない魔術師の資質持ちは魔術師になることを推奨される。魔術師の修行なんかしたら奴等が近しい存在になるじゃないか。僕はこれ以上奴等を見られるようになりたくないし関わりたくないんだ!」


 ふーん?

 第4部隊の工学変人なら魔術師に興味がないのも仕方ないかもな。あそこヤバい奴の集まりだし。

 無理に魔術師になる必要はないが、国や軍などからは魔術師になるよう圧力がかかる可能性はないとは言えない。

 其ほど魔術師になれる者は希少らしいからな。


 それにしても、《精霊の愛し子》ならば身近な存在である精霊や妖精に対して嫌っているというか、避けたいような頑なな態度である。

 魔術師にならないにしても、やっかいごとに巻き込まれない知識や力は最低限必要だろうに。

 そんなのは資質0の俺でもわかる。


 ならば何故だろう?

 嫌なことでもあった?

 それを未然に防ぐためには魔術師になり力をつけるのが手っ取り早い。


 ・・・見たくない、関わりたくない、ね。


「じゃあ、シェイラ嬢にも関わりたくないってことでいい?」


「なっ!?」


 何で絶句するかな。

 普通そうなると思うのだが?


「当たり前だ。シェイラ嬢の姿が何故こうなったかわかっているんだろう?」


「それはっ、」


 はい、有罪!犯人はお前だ!


「お前、シェイラ嬢に関して何を願った?・・・あの日、シェイラ嬢が他者から畏怖されるようにしたのはお前だろう?」


「・・・」


 うん。自覚はしっかりあるな。

 無言は肯定だ。


「え?ツヴァイ様、その方が《精霊の愛し子》なのですか?」


「でしょうね。あの場に居合わせた妖精がコイツの願いを叶えて《妖精の祝福》をかけた。でも、コイツは妖精に関わりたくないと言いました。つまり、コイツの望んだ形では願いは叶えられなかった」


 俺は気付いている。

 カシューネ弟がシェイラ嬢の顔を絶対に見ないようにしていることを。

 ならば、カシューネ弟も他の人と同じでシェイラ嬢の本当の姿が見えないのだろう。


 つまり、妖精は願いを叶えてくれたが、カシューネ弟の希望はネジ曲がった解釈で叶えられた。


 魔術師になる前に嫌な出来事があった、と。

 妖精相手ではありがちな結果である。


「う、うるさい!僕は、僕はシェイラが嫌われたら人を惹き付けなくなると思って―――――そしたら僕だけを見てくれるって、」


 後悔、儘ならない苛立ち。

 カシューネ弟の表情はそんな感じだ。


 前言撤回。

 賢くないわー、コイツ幼稚すぎる。

 それで自分もシェイラ嬢が見えなくなったとか、馬鹿なのだろうか。

 さっきまでの大人しげで賢そうな雰囲気は全くない。怒るとカシューネ兄と同じ直情型だ。


 そもそも、カシューネ弟が魔術師の勉強や修行もせずに妖精の前で迂闊な発言をするからだ。

 それ以前の問題もある。資質有り無し以前に貴族階級に属するものとして、人を貶めることに繋がる発言を容易にするのはどうかと思う。

 しかも相手は恐らく非のない貴族令嬢だ。

 好意を寄せ、仲良くなろうとしてシェイラ嬢に振り向いてもらえなかったからといって責めるのがおかしい。

 例え、純粋培養箱入りシェイラ嬢のあしらいが下手だったとしてもだ。


 そしてアレだ。

 たぶんカシューネ弟がシェイラ嬢の肩を掴んで振り向かせたガキだ。

 一番最初にシェイラ嬢の化け物と言われる幻影を見てしまった憐れなお漏らし小僧。


 カシューネ弟が当時12、3歳ぐらいで他貴族家との交流に出されたならば、既にそれなりの教育は受けて身に付いていたはず。にも関わらず不容易な発言で騒ぎを起こし、挙げ句に好きな娘の前で醜態を晒す。


 うわぁー、そりゃ謝るに謝れんし、暫くシェイラ嬢に会えないわ。

 そんで妖精に八つ当たりかな?嫌いだ、見たくない、関わりたくない、と。自分勝手だな。


 そんなことで6年もシェイラ嬢を悲しませるとは・・・


「力を制御できないならばシェイラ嬢に近付くな。ほら、見たくないし、関わりたくないんだろう?」


 魔術師になってシェイラ嬢に《妖精の祝福》を与えた妖精を何とかしてくれるなら関わるのはやむ得ずだが、そうでないならカシューネ弟自身に用はない。


 今さらイケメンがシェイラ嬢の前ちらほらするな!


 俺が不利になるだろ!






ツヴァイにカシューネ兄弟の名前を覚える気はない!

涙目のカシューネ兄に気付きもしないです。

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