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28 シェイラと邪魔者達

 


 ショコラカフェに行った日、カシューネ様はあの後ツヴァイ様へ再度勝負を申込みあえなく撃沈。

 肩を落とし、しょんぼりして帰られました。

 少し可哀想でしたが、ツヴァイ様とのデートを邪魔するからです。同情はいたしません。




 それから数日たった今、次のツヴァイ様のお休みも一緒に過ごさせていただいております!


 またデートです!

 しかも、本日はイノンド王都名物デートスポットですよ!


 王都の中区画の西南側大部分を占める高台の森を生かした公園。

 正式名《ヴォルフォレスト・ハイガーデン》。


 先日ツヴァイ様の紹介でお会いしたヴォルテムディル王太子殿下が5年程前に公共事業責任者として高台の森の中を改装され、乗馬や馬車での散策を楽しめる広場や庭、花園などを作られた公共施設付きの公園です。

 夜には王立研究所で魔術師の方々が開発された魔動花火が打ち上がり、広場は楽団や大道芸、様々な出店等で賑わう王都で一番人気の施設だそうです。

 毎日多くの人々で賑わい、商談や大人数での遊び、世間体を気にする上流階級の恋人や婚約したての方々が世間体を守りながら交流するのに適した場所だと話題になっています。


 残念ながら私は化け物(この)顔ですので行く機会などなく・・・


 ですが、それも先程までの話です。


 今、ツヴァイ様のエスコートで入園しました!わくわく。

 楽しくて嬉しくて浮かれすぎて大丈夫でしょうか。


 何と、ツヴァイ様は王太子殿下が公園施設開発中からずっと関わってお仕事をされていたそうです。凄いです!

 ですからとても公園内の施設や造形に詳しく、馬車を走らせたり、時には止めて散策しながらも、とても丁寧にわかりやすく説明や紹介をしてくださいました。

 広大な高台に位置する公園を効率よく廻りながらお話されるツヴァイ様が頼もしいです。


「シェイラ嬢?」


 本日も前髪を後ろへ流して柔和な表情のツヴァイ様にときめいていますと、馬車の窓から外を見て説明されていたツヴァイ様が私に向かって少し首を傾げられました。可愛らしいです。


「はい!何でしょう?」


「俺の顔に何かついてますか?」


 見すぎました!

 幾ら帽子で顔をある程度隠していても、さっきからジィッと見ておりましたからバレバレですよね。

 見惚れてときめいてましたと告げるのは恥ずかしくて慌ててしまいます。


「いいえ、そうではなくて、あのっ、」


「?」


「えっと、――――あっ!あれから、カシューネ様とはお会いしましたか?」


 咄嗟に先日のカシューネ様の話を出して誤魔化します。


「カシューネ?」


「はい、先日ツヴァイ様に勝負を申込まれにいらっしゃった時にお会いしたカシューネ様です」


「・・・あぁ、アイツですか。そういえばそんな名前でしたね」


 あら?何故かツヴァイ様の声のトーンが下がりました。

 眉を顰めて目を細め不機嫌そうです。


「あの、カシューネ様にはお仕事で関わったりされるのでしょう?」


「・・・まぁ、第2とは仕事上組むことが多いですね。ですが、役職的に第2隊長のアーモンディや副隊長のクルミルとは話しますが、カシューネと余り関わることはないですよ」


 お口をぎゅっと曲げられてしまいました。


「そうなのですね」


「・・・シェイラ嬢は、」


「はい?」


「シェイラ嬢はカシューネのような男が――――っ、いえ、何でもありません」


 前半の声は小さく囁くようで、馬車の車輪の音で聞こえませんでした。

 直ぐにツヴァイ様が少し悲しげに首を横へ振り、困ったように笑われたので追求しづらく流してしまいました。


「あっ、シェイラ嬢!彼処のカフェは殿下一押しで甘味が美味しいので寄ってみませんか?」


 窓からお洒落なカフェを指されたツヴァイ様が少し元気になられたご様子。

 きっと甘いものがお好きなのでしょう。

 また、へにゃりとした笑顔でお菓子を召し上がるツヴァイ様を想像してしまいます。

 見たいです。絶対きゅんきゅんします!


「はい!」


 令嬢らしからぬ元気の良さで返事をしてしまいました。






「ごきげんよう、シェイラ嬢。久しぶり、だね」


「はい?」


 カフェでアップルパイを頬張るツヴァイ様にきゅんきゅんしていましたら邪魔が入りました。むぅ。

 まさか、もぐもぐされるツヴァイ様は人を惹き付ける魅了の魔法でも発するのでしょうか。私は間違いなくかかってます。


 顔をチラッと上げると、灰色の瞳に長い金髪を耳後ろで束ねさらりと肩に流した殿方と、鳶色の瞳に綺麗な赤褐色の髪を編み込んで纏めたご令嬢がいました。


 にこやかに微笑んでいるようで緊張感を隠せていない殿方。

 対して殿方の腕をすがるように掴むご令嬢の顔は青白く何かに怯えているようでした。


 ・・・これは、私に怯えてますね。


 つまり、このおふたりは私がヘイゼルミアの化け物令嬢だと知った上で声をかけてきたということです。誰でしょう?

 うーん。見覚えがあるような?


 自分の顔を認識されないように一瞬しか見ていないので顔を俯けて考えます。


「シェイラ嬢、此方の方々はお知り合いですか?」


 ツヴァイ様が私に聞いてくださいますが、残念ながら思い出せません。何処かで見た気はするのですが。


 もう一度先方の顔を確認しようか迷っておりますと、さらにツヴァイ様とのデートを邪魔する方がやって来ました。


「おいっ!?僕を置いていくな!!」


「お前、この間の・・・」


 ツヴァイ様が呆れたように、やや嫌そうに呟かれます。

 チラッと其方を見ると、やはりというか。

 前回も乱入されたリュメル・カシューネ様です。


「げっ、ツヴァイ・マカダミック!?」


 げっ、て。此方が言いたいです。


 この方ツヴァイ様の追っかけか何かでしょうか。

 ツヴァイ様と同じ日に休みで、こうも連続で遭遇するなんてズルいです。

 私もツヴァイ様に偶然遭遇してみたいです。絶対嬉しくてはしゃぎます!


「はい。僕は此方の愚兄リュメルの弟で、カシューネ侯爵家が四男クレメルです。いつも第4との合同実験ではお世話になってます、第1近衛のツヴァイ副隊長殿」


「・・・へぇ、お前がカシューネの言っていたアイツか?」


 成る程、邪魔者カシューネ様の弟君でしたか。


 しかもまたツヴァイ様もお知り合いですか。


 確か第4部隊は重機戦団。銃、大砲、防具等の開発実戦メインの工学変人の集まりとお聞きしました。

 因みに情報源は財務大臣ことお父様です。開発経費の捻出でよく揉めるそうで大変そうでした。


「アイツ?何の話ですか?」


「そっちの兄とやらが前回゛僕が見られるなら、アイツと違って魔術師になっていたさ。そうしたら貴様と比べられたりしなかった!゛と言っていたが、それはお前か?」


 そうでした!

 前回そんなことをおっしゃり「だから僕と勝負しろ!」と続けたところを撃沈されたのでした。

 ツヴァイ様、そこまで言葉を覚えておられるのにお名前は覚えておられないのですね。

 リュメル・カシューネ様が怨めしそうな涙目でツヴァイ様を見てますよ!


 見たところクレメル・カシューネ様は私と同じ年くらいでしょうか。横の青白い顔のご令嬢もですが。

 つまり、6年前に居合わせた私の友人候補だった方と思われます。


 もう一度顔をチラッと確認。

 むむむ。・・・あの時見たような?


 何やらごちゃごちゃして参りました!





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