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25 ツヴァイと四阿

 


 イノンド王国王都城下。

 中区画貴族街で最近人気のショコラカフェのガーデンテラスは、四隅に小さな四阿が設置されており、四阿には季節の花や蔓で緑のカーテンが垂れて簡易目隠しやパーテーション代わりとなっている。


 あくまでも簡易なので外から中の客の人数や動きは把握できるので完全な密室にはならない。

 そのため、最近恋人や婚約者同士での利用者が多いようだ。


 俺は今、その一角の四阿で爽やかな風を感じている。


 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。

 美しいご令嬢や貴婦人を例える言葉でよく耳にするが、正にその通りだ。


 向かいの席には白百合の姫君。


 凛とした背筋の女性らしい細さ、そよ風に揺れる柔らかなアッシュブロンド、品良く優雅な仕草、語彙力の足りない俺では表現しきれない美しさだ。


 ほっそりと儚げな姿は消えてしまいそうで、是非とももっと側に、何だったら隣とかもっと近い距離にいてほしい。

 外から見えないようにこっそり手を繋げたら恋人っぽいなとか邪なことを考えているわけではない!


 ・・・いや、嘘です。

 できるならシェイラ嬢と手を繋ぎたいです。


「――――なのですが、ツヴァイ副隊長様はどう思われますか?」


 シェイラ嬢のやわらかく心地いい声が聞こえる。

 どう思われますか?って、勿論――――


「手を繋ぎたいです!」


「えっ!?あのっ?」


 ・・・はっ!?

 し、しまった、つい願望が。


「あ、いえ。失礼しました」


 返事を間違えた。

 ヤバい、変な奴だと思われていないだろうか・・・


 今、シェイラ嬢の視点から見た6年前の《妖精の祝福》がかけられた時のことを聞いていたのだ。

 当然、真面目な顔して話を聞いていたのだが、シェイラ嬢と向かい合っているとついつい誘惑が!俺の阿呆!


 ふざけている場合ではない。

 いや、本気だけど、話聞いてないと思われてしまう。

 シェイラ嬢の声を聞き漏らす俺ではないので、脳内が沸いててもきちんと話は聞いていた。


「あの時、私が自分の姿が良く見えなければ。とか、放っておいてほしい。等と願ったからでしょうか?」


 会話を戻すとシェイラ嬢が悲しげに瞼を震わせた。


「どうでしょうか。それだけならば恐怖を与える必要がないですからね。透明人間とか、影が薄くなるとかで十分ですよ」


「そうですね。やはり、あの場にいた誰か。《精霊の愛し子》が関係しているのでしょうか」


「恐らくは。問題はその《精霊の愛し子》が何を願ったかですね。ご丁寧に見る人によって姿を変えてまで」


「状況的に私が願ったものと合わせるなら、私が人に恐がられてほしいと願われたのですよね・・・」


 そうとしか思えない状況なのだが、意味がわからない。

 シェイラ嬢を化け物に見えるようにして誰か得するのだろうか?


「そう願う理由がわかりませんね。まぁ、側にいた子供の誰かが《精霊の愛し子》だったのなら、子供の考えることですから短絡的なこともあるとは思いますが」


「・・・子供、ですか」


 シェイラ嬢の表情が暗い。


 ん~?何だろう。

 何か引っ掛かる。


「王太子妃殿下の話によると、妖精関連の問題解決には、祝福を与えた妖精本体を捕まえ説得して解かせるか、解ける条件を満たすか、妖精を消滅させるからしいです。後は荒業で、対価を払って力の強いものに無理矢理解いてもらう。コレはリスクがあるのでオススメできませんね」


「その中ですと、妖精の姿を知らないし見たこともない私には、解ける条件を満たすしかないと思います」


 資質があっても魔術師として訓練しなければ精霊や妖精と渡り合うことはできないらしく、シェイラ嬢は今までアレ等を見たことはないそうだ。


 俺も資質0なので勿論見たことなどない。


「はい。それが一番安全で確実ですね。情けないことに俺は条件を知るための協力ぐらいしかできません。王太子妃殿下曰く、俺がシェイラ嬢と一緒にいれば《精霊の愛し子》の方から来てくれるそうですから。何を願ったか確認できるといいですね」


「情けなくなんかないです。ツヴァイ副隊長様が一緒にいて下さるだけでとても心強いです。むしろ、私の方が自分のことなのにツヴァイ副隊長様に頼りっぱなしで申し訳ないです」


 困ったように眉尻を下げたシェイラ嬢が可愛い。

 全く申し訳なく感じる必要などないのになぁ。俺はシェイラ嬢と一緒にいられるだけで役得だ。


 しかし、実は何回かシェイラ嬢に会って気になっていたことがある。


「・・・ツヴァイでいいですよ」


「え?」


「その“ツヴァイ副隊長様“って長くないですか?一応、まだお見合いを続けていただけるなら、ツヴァイと呼んでもらえませんか?」


 そうなんだよ、呼び方が堅い!

 長いし呼びにくくないかな?

 他人行儀というか、いや、他人なんだけどさ。

 俺としてはもっと仲良くなりたいし。


 最終的には他人じゃなくなりたいわけで・・・


「ですが、ツヴァイ副た」


「ツヴァイです」


 シェイラ嬢が目をきょろきょろさせて狼狽えてる。

 そんなに副隊長の部分大事!?


 ・・・あ、もしや俺と仲良くなりたくない感じでしたか?


 うっ。そうか、最近調子にのってたからな。

 《妖精の祝福》のことがあるから仕方なく会ってくれたのかな。

 なのにぐいぐい来てキモいとか思われてたとか?


 ・・・ヤバい、泣けてきた。


「―――――っ、ツ、ツヴァイ、様?」


 すっごく躊躇いながら呼ばれた。


「はい、シェイラ嬢!」


 ぃよっっしゃあぁぁ~~~~!!!


 きた!ゴリ押しして良かった!

 え?泣いてたろって?

 知らないな。涙とか知りませんが?


「あの、ツヴァイ様?」


 頬をほんのり染めて俺を呼ぶシェイラ嬢に、嬉しくて鼻血が出そうだ。

 胸が感動に撃ち震える。


 ちょっとは恋人っぽいな?

 っと妄想に翔びそうになっていたら、こういう時に限って邪魔が入ってきた。


「ツヴァイ・マカダミック!この間はタバスコで誤魔化されたが、今日こそは僕を認めさせてやる!!」


「・・・?」


 四阿の緑のカーテンが毟られ、侵入者が現れた。


 うん?

 何か変なの来た。


 まず、勝手に店のもの毟るなよ!





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