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20 シェイラの期待

 



「お待たせしてしまい申し訳ありません、シェイラ嬢!」


 救世主のお声が!

 ツヴァイ副隊長様です!!


 応接室に鎮座する優美な曲線フレームのレース張りアンティークソファの片側。

 顔を見られまいと帽子の鍔を握り隠すように座席クッションに踞る私と、顔を見ようと身を乗り出す王太子妃殿下。


 普通の状況ではありません。


 ツヴァイ副隊長様が入り口で困惑していらっしゃるのが気配でわかります。ですよね。


 あの後、顔を見せることを躊躇い拒む私に、王太子妃殿下が「大丈夫、大丈夫!」と軽い調子で私の帽子を奪おうと手を伸ばされました。

 まさか此方から王太子妃殿下を振り払うわけにもいかず、帽子を掴み縮こまっていたら段々こうなりました。


 私の頭上で交わされる会話。

 ツヴァイ副隊長様の厳しい口調での問いに、王太子妃殿下が慌てて返されていました。


「―――っ、ツヴァイ副隊長様!た、助けてください!」


 とりあえずこの状況から脱出したいのでツヴァイ副隊長様に助けを求めます。

 いっぱいいっぱいな私は、ツヴァイ副隊長様なら助けてくださると無責任な信頼があったようです。


 直ぐ様ツヴァイ副隊長様が動いてくださり、王太子妃殿下をどうやって退かしたのかソファから引っ張り出していただけました。

 私を軽々抱き起こす腕が逞しいです!


「お久しぶりです、シェイラ嬢。やっと会えました」


 ツヴァイ副隊長様のお声に顔を上げると、ふにゃりと微笑まれているではないですか!きゅんきゅん致します。


「はい、お会いしたかったです」


 顔が赤くなっていそうで恥ずかしくて口がむずむずします。


「「・・・ツヴァイさん(副隊長)」」


 王太子妃殿下と護衛の騎士様が呆気に取られた様子で、ツヴァイ副隊長様を呼んだというよりかは、ついつい呟いた感じです。


 よく考えたら王太子妃殿下から助けを求めるだなんて大丈夫でしょうか!?しかもツヴァイ副隊長様は王族を守る近衛騎士様で、副隊長を務めていらっしゃいます。私本当に無責任です!

 私ごとき捨て置かれて当然にも拘らず、今もツヴァイ副隊長様の腕の中で庇われてます。いいのでしょうか。


「堅物クソ真面目なツヴァイ副隊長がデレてる・・・」


「わぁお。そうね、これはヴォルも呼んだ方が面白いかしら?」


「殿下は今ある書類片付けたら休憩がてら遊びに来るっていってましたよ」


「それならもうすぐ来るわね。・・・ちょっとツヴァイさん、いつまでもひとり占めしないで私にもシェイラさんの顔を見せて!」


 護衛の騎士様と王太子妃殿下がひそひそと話されていると思っていたら、またしても王太子妃殿下が私の顔を見せるようにツヴァイ副隊長様におっしゃります。


 何故そこまで化け物の顔を見たがるのでしょう?


 畏怖、奇異、非難されるのがわかっていながら見せたくありません。

 ですが、また拒否してツヴァイ副隊長様にご迷惑をおかけするのも心苦しいです。どうしたら良いのでしょう。


 困り果て悩んでいるとツヴァイ副隊長様が先に口を開かれました。


「恐れながら、嫌がるシェイラ嬢に無理強いされるならばお断りいたします」


「えー、何で!?きちんと見ないと原因わからないのよ?ツヴァイさんが頼んだのじゃない」


 え?さらっと断られました!?

 王太子妃殿下に対して良いのですか?

 それに、原因とは・・・

 化け物を見て何がわかるのでしょう?

 しかも、ツヴァイ副隊長様がわざわざ王太子妃殿下に何を頼むのでしょうか?


「顔を確認したい理由は承知していますが、それで何故襲いかかる必要が?シェイラ嬢が王太子妃殿下を拒むということは、大方何の説明も無しに迫ったのでしょう?シェイラ嬢の事情がわかっていながらそのやり方は賛同できません」


「うっ・・・それは、ごめんなさい」


「はい、反省して下さい」


 ツヴァイ副隊長にはっきりと言われ、王太子妃殿下は苦い表情です。

 そうなのです。何の説明も無しではわかりません。

 王太子妃殿下に何かあったらと恐くて顔を見せることが難しいですもの。


「すみません、シェイラ嬢。此方の王太子妃殿下は先日劇場で観た話にもありましたが、精霊や妖精を見ることのできる魔術師です。しかも妖精とのハーフで並みの魔術師よりも強い力をお持ちです。是非シェイラ嬢の姿を歪める幻影の正体を見ていただこうと思い本日の席を用意させていただきました。ですので、覚悟が要るかと思いますがお顔を出していただけませんか?」


 ツヴァイ副隊長様が優しい声音で説明してくださりました。


「私のために王太子妃殿下にお願いしてくださったのですか?」


 今まで他の魔術師様に見ていただこうとしたことがありましたが、その魔術師様も私に恐怖して逃げられてましたので諦めていました。

 最早解けることのない呪い。

 私の心が醜く反映されたものかもしれないと。


「はい。王太子妃殿下が泣き叫ぼうが、無礼等何があろうとシェイラ嬢は俺が守りますので安心してください」


 ツヴァイ副隊長様の言葉に、例え原因が解らずとも、私のために王太子妃殿下へ話を繋いでくださったお気持ちだけで嬉しくなります。

 きっと、ツヴァイ副隊長様が一緒にいてくださるなら大丈夫なのではないかと思えてきます。

 胸だけでなく、顔や目も暑いくらいにポカポカしてきました。


「むぅ、ツヴァイさんが酷い。前から思ってたけど、ツヴァイさん私のこと嫌いよね」


「いいえ、王太子妃殿下が俺を嫌いなだけだと思います。俺はいつもこういった感じですので普通です」


「ふ~ん?シェイラさんには違うみたいね?」


「シェイラ嬢は特別ですので」


 当然といった調子で王太子妃殿下へ即答されました。遠慮ないやり取りから、本心を仰られたのだと思います。


 ああ、私の中でツヴァイ副隊長様の存在がどんどん大きくなります。


 化け物が身の程知らずにも未来を期待してしまいそうです。





何やらフェレイラがどんどん謎な奴になりました。

主人公視点だとツヴァイは関心度や関係性から描写が雑に、シェイラはよく知らないから疑問しかないです。


ツヴァイに頑張って少しは説明してもらえるといいな、と思ってます。

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