おいでよ崩壊の森 2
以上プロローグ終了。
俺が転生して300年が経とうとしていた。
名前: 山口一郎
レベル:999
種族: 人間(?)
称号: 【転生者】【龍殺し】【王殺し】【神殺し】
スキル:【解析者】【不老不死】【身体強化(EX)】【各種耐性(EX)】【事象干渉】【次元干渉】
コメント:
GO is GOD!
コメントが完全にニゴ動。
さて、100年くらいかかってようやく旧支配者の一柱を沈められた。むしろ100年で間に合ってラッキーなレベルなのだが、そこは神特有の慢心もあった。純粋に実力勝負であればもうしばらくはかかっただろう。
まあ神といっても神の先っちょ? みたいなものだが。特典の【神殺し】も【次元干渉】もあくまで神が許すスキルレベルの範囲。そこはゲームのキャラがゲームマスターに逆らえないのと同じだ。しゃーなし。
まあ神に挑む気はほとんどないんで大丈夫たぶん。
普通に暮らす分にはスキルは有用だ。
【次元干渉】を手に入れたおかげで今の俺は四次元に手が届く。三次元クラスの出来事なら楽勝だ。
何が言いたいかというとですね……
崩壊の森、出られるんですわ。
長かったわー。いや、まあ、正確にはレベル400超えたあたりで出られる雰囲気は漂っていたのだが。ちょうどそのころ覚えた【天照】【月詠】みたいな戦闘系スキルで龍とか殺すのが楽しくなっちゃってテヘペロ☆ やはり日向は木の葉にて最強……いやうちはネタなんだが。
ちなみにスキルの大半は【事象干渉】に統合されている。ナルトごっこできなくなったのは割とモチベ下がりました。
だが何よりも重要なのは……
レベル999しちゃってるってことなんだよなぁ。
ここまで来ると崩壊の森にいてもうまみがない。うまみ!
転生した当初こそ嘆いたが、ここは高レベルモンスターの巣窟である。逆に言えばそれくらいしかないのだ。人間どころか意思疎通のできる個体すら限られる。
ぶっちゃけ戦闘とかもうお腹いっぱい。
300年居た場所だ。それなりに愛着はある。
それでもなお、転生する前の日本の暮らしは鮮明に思い出せる。つまりそういうことなのだろう。いい加減ジャングルにも飽きたしな。
サラダバー、崩壊の森。
◆
相変わらずの堅苦しい謁見の間を、その者は柔らかく切り裂いた。
空間を割って現れたのは、一人の青年。
髪が長く、目まで掛かっている。この老体を貫く、重厚な魔力。容姿は若く、しかし、肌が震えるほどのこの威圧。その不気味な様は死神と形容したくなる。
死神か。
確かに、これが人間ならまだ神と言われた方が信じられる。
「ん~、なんかすごいところに来ちまったなぁ?」
と言う。放っておくわけにもいくまい。謁見の間の主として、無礼者には果たす義務がある。
「突然現れておいて何を言うかと思えば。我を魔王と思ってn」
「魔王? 魔材?」
瞬間、「黒の古き魔法」を放つ。意図的なものではない。生物にある当然の防衛機能として、反射をとっていた。
心の内を見透かすようなあの目。あれはまずい。
だが、勝負あった。魔法の確かな手応え。一撃確殺。生命を絶つ、絶対不可避の死を与える魔法。回避できなければ終わりだ。
『──GAME OVER!!』
……終わりのはず。
『──CONTINUE!!』
「あー、うん。即死のスキルね。すまんが、相性が悪かった。こっちはチート性能なんでね。必殺スキルと不死スキルの判定、だいたい負けないんだわ」
立っている。喋っている。さも当然のことのように。驚く半面、やはりとも思ってしまう。
私は確かに王であるが、認めざるを得なかった。それくらい奴は格が違う。
「不死っていうか、正確には死んでから蘇生してる感じなんだけどなぁ」
「ほう、不死と申すか。しかし不死の輩に勝つ方法など幾らでもある。例えば、」
手を振りかぶる。「黒の古き魔法・千年牢」。殺せないなら封印するまでだ。
アレが慢心している今のうちに、全力に。そこに勝機がある。
「封印の魔法。いや、発想は悪くないんですけどね……さすがに対策してるっていう(200年前なら死んでた)」
「ハッ、ハハ」
笑えてくる。
私が王の座について数百年。「歴代最強の王」などと謳われてはいるが、実際、強くても退屈なだけ。時折来る勇者でさえ片手で倒せる。もちろん魔族に私より強い存在などいるはずもない。
それが、これだ。ポっと現れた謎の存在に鼻で嗤われる始末。これを笑わずして何という。
「面白い、面白いぞ! 不死身というならば、我の全力しかと受け止めよ!」
「ホモはNG(ノンケアッピル)」
「消えろ。一片たりともこの世に残すことを赦さん」
指で奏で、息で謡う。
「赤の古き魔法・紅の刻」「青の古き魔法・蒼の刻」「緑の古き魔法・霞の刻」「茶の古き魔法・重の刻」「白の古き魔法・生の刻」「黒の古き魔法・死の刻」「四色四元素・固有魔法・闇の刻」「魔法分解・固有魔法分解・終の刻」
【強化魔法(EX)】【生成魔法】のスキルに加えて【魔王】の称号を乗せた至高の魔法。
しかし、今までの「至高」で届かないことは知っている。
であるなら更なる一手を。ようやく現れた対等以上の存在。それが故に新たな魔法を生み出す価値がある。
「【生成魔法】・固有魔法・固有魔法分解・零」
避けさせるつもりはなかったが、避けるつもりもなかったのだろう。その感触が手に伝わる。
死なないのであれば、完全な消滅ならどうか。
これが通じなければ、敗北は必至。それは天使と悪魔が賭けをしているように思えた。
煙が晴れる。
果たして、彼は立っていた。
「いや、すごいと思うゾ。普通の消滅じゃこうはいかない。死という概念まで消す離れ業だ。さすが魔王」
「嫌味だな」
「後出しで悪いんだが、【不老不死】とは別のスキルを使わせてもらった」
何が悪いのだか。術者の私でさえ見えていない、即興の魔法でさえ見透かしているというのに。
格上、か。しかし王の上を行くというなら……アレは神か。それもいい。
「貴様の手を見ていなかったな。では見せてもらおうか、神の一手というやつを」
「神ねぇ。俺が神なら格下もいいところなんだが。ま、いいや。よく分からんが、遺言とかあるか?」
「我はまだ生を諦めていない」
「そう? 頑張ってくれよな」
魔王としての数百年。色々なものを背負った。最強であった。それがたったの数分で崩れ去る。
私にはそれがとても愉快なことに思えるのだ。
城が軋み悲鳴を上げる。アレの得体の知れない重圧に平伏したくなる。そんな衝動を抑え、精一杯に笑って見せる。
アレはただ、淡々と事実を口にした。
「じゃあ、死のうか」




