コン魔王の城 第一話「王位継承」
荘厳な雰囲気の中、一人のタヌキの王が、息子のキツネを呼ぶ。
タヌキは濃い紫のマントを着て、少し大きめの王冠を被っている。キツネの方はフード付きの紫のローブを着ていた。
タヌキの名前はポンポコ。キツネの名前はコン。コンは偉大なる父を目標にしていたので、呼ばれて少し緊張していた。
「コン、お前に話がある。今日からお前を魔王に任命する」
「父上、それは時期尚早では?」
「私は人間の視察に行く。その間、この城を守れ。勿論、私の護衛に大人たちも連れていく。子供たちだけで守るんだ」
父からの突然の提案、コンは当然困惑する。今まで大人の魔物たちに守られてきた。
確かに子供とはいえ、自分も城を守る実力者。だが、それでも幼さは残る。経験も能力もまだまだ足りない、そう思っていた。
「世の中には様々な強者がいます……ワシで守りきれるかどうか……」
「大丈夫だ、お前の実力なら、きっとやれる。お前は自分が器でないと感じるか?」
「はい……ワシはまだ子供です」
「構わん。子供なりにやってみなさい。もし全滅の知らせを聞いたら戻ってこよう。失敗を恐れず試してみなさい」
父の話を聞くと、失敗してもいいから、やってみろとさえ聞こえる。まるでこれが試練のように……それでも挑戦してみたい、そう思えるのだ。
コンの答えは決まっていた。不安はある。だがそれだけでなく、自分がどこまで行けるのか試してみたくもある。
「……父上、ワシの全力で応えます!」
儀式が始まり、小さな王冠が渡され、彼はコン魔王となった。幼くも、力と若さに満ち溢れた王。
これはその魔王の道の第一歩だ。
「私はこれよりポンポコ大魔王だ。お前はコン魔王。それでは大人の魔物たちは、これで城から出発する。見送りはいらない。代わりに人事をすぐに決めなさい」
「わかりました。いってらっしゃいませ、ポンポコ大魔王様」
ぞろぞろと去っていく大人たち。魔物の中には解放され叫び回る者もいたが、コン魔王がそれを諌めた。大人たちが去ってから、玉座に座るコン魔王。
「では人事を決める。なにか意見はあるか?」
ザワつく魔物たちの中には不安そうな者もいた。どうしたって一番働くのは彼らだ。
「そ、それより……本当に子供だけで守れるんでしょうか?」
やはりかと感じたようで、勉強不足の子供の魔物たちを見つめ、ため息をつくコン魔王。
魔物の仕組みを説明する。
「魔物はここでは死んでも三日くらいで生き返る。だから心配はいらん」
それでも心配する声が渦巻く中、あるオオカミの魔物が手を挙げた。
「ではやはり、ここは俺の出番ですね」
「ああ、オオカミのカムイ、お前を戦闘指南役と任命しよう」
歓声を上げて喜ぶ魔物たち。よっぽど信頼のある魔物のようだ。カムイと呼ばれたオオカミの魔物は、グレーの和装に赤い組紐を結んでいる。刀を携え、如何にも戦闘に秀でたような格好をしている。
「カムイさんなら大丈夫だ!」
「次に、ゴブリンのゴボウ、前に」
「はいっす!」
呼ばれたゴブリンが前に出る。左半身裸に赤い
スカーフのような服、白いポンポンの着いた赤い帽子で、茶色いピッチリのズボンを履いている。
「お前を突撃隊長に任命する」
「はい!」
これにも異論を唱える者はいなかった。ゴボウと呼ばれたゴブリンは、よく弱い魔物の中に数えられる種族の中でも異質だ。
筋肉質で大きめの長剣を持つ彼の実力は本物なのだろう。
「次、罠師のトリトリ。お前を城の罠担当に決める」
「え? 僕!?」
最後に任命されたのは、黒羽のニワトリ。本人は何故自分が任命されたのか分からない。
だがコン魔王はわかっていた。トリトリこそが、この城の全ての罠を管理できることを。
「お前はたくさんのトラップに精通してるはずだ。任せたい。勿論チェックはする」
「っ! わかりましたっ! お任せを!」
トリトリは赤いトサカに焼き鳥のような足。特別な力なんて持ってなさそうなのに、黒い羽根を広げ、笑顔を振りまくアイドルのような顔つきだ。
「この三人を幹部とする。他は特にカムイに頼るように」
再び歓声があがり、三人の幹部がコン魔王に頭を垂れる。
「ワシを支えて欲しい。頼んだぞ」
「はいっ!」
一段落して休むコン魔王の元に、ゴーレムが現れる。
「城ゴーレムの分身か! お前も子供なんだな?」
コクリと頷く城ゴーレムは無言でコン魔王を見つめる。
「共に頑張ろうじゃ」
城の看板がタヌキからキツネへ。いよいよ本格的にコン魔王の城として動き出したのだった。




