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第9話 魔導競技部

放課後。


教室のざわめきが、背中の方へと遠ざかっていく。

その余韻の中を、俺は一人、廊下を歩いていた。


(はぁ……教室のみんな、普通に怖かったんだけど)


「なんでお前が澪さんと仲いいんだ」


「お前、マジで何?」


「……殺すぞ」


――いや最後。


視線に殺意が乗ってたの、気のせいじゃないよな?


(あれ、俺なにかした?)


誘ったのは俺じゃない。

むしろ巻き込まれた側だ。


なのにこの扱い。


(理不尽って言葉、今ここに完成したわ)


釈然としないまま、体育館の前に立つ。


ギィ――と鈍い音。


扉を押し開けると、中にはすでに部員たちが集まっていた。


「お、来たな」


声をかけてきたのは、部長の竹内柳先輩。


長机の先頭に立ち、軽く手を振る。


「遅くなってすみません」


「いや、ちょうどいい。ほら、こっち来い」


竹内柳。

この部の部長であり、戦術の中核。


澪の話によると職は――重騎士、幻術師。


前線で味方を守るタンク。

同時に、幻術で敵の認識を狂わせるコントロール役らしい。


(こういうタイプ、一番厄介なんだよな)


崩れにくい。

無視もできない。


正面からも、搦め手からも面倒くさい。


――と、ここで。


せっかくだし、簡単に説明しておこう。


魔導競技――マギア・バトルについて。


基本は、10対10の団体戦。


問われるのは、個人の強さだけじゃない。

連携、戦術、判断力――全部だ。


装備は支給か持参。

つまり、”準備量”がそのまま戦力差になる。


勝利条件は二つ。


一つ目は――コア破壊。


各チームの陣地に設置された”魔導コア”。

それを壊せば、その瞬間に勝利。


シンプルではあるが、だからこそ、一瞬の隙が致命傷になる。


「あと一歩」で全部ひっくり返る。

そんな試合も珍しくない。


二つ目は――ポイント制。


敵選手を撃破してポイントを稼ぎ、

終了時に上回っていれば勝利。


こちらは持久戦寄り。


試合時間は十五分。


短いようで――長い。


いや、正確には


(この競技、十五分の中で何回も試合がひっくり返る)


崩れて、立て直して、逆転して、また崩される。


その繰り返しだ。


一瞬の判断。

一人のミス。

一つの切り札。


それだけで、流れは何度でも裏返る。


それが――魔導競技だ。


さらに厄介なのが、いくつかの要素。


まず、フィールド。


戦場は何種類もある。


廃都市、森林、迷宮、浮遊島、古代遺跡。


地形が違えば、戦術も変わる。


遠距離が支配する戦場もあれば、

近接が暴れる地形もある。


次に、魔導制限。


試合ごとに「使用可能な魔導」が制限される。


上級炎系禁止。

召喚制限。

結界不可。


得意分野を封じられることも、珍しくない。


そして最後に――特殊条件。

これが一番の厄介者だ。


特殊条件は、毎回あるとは限らないし、事前に決まっているわけでもない。

ひどい時には、開始直前に発表されることすらある。


過去には、


「開始と同時にチームメンバーをランダム転送」


なんてものもあったらしい。


(……いや、それもう戦術以前の問題だろ)


合流できるかどうかが運。

初動で崩壊する可能性すらある。


――それでも勝つのが、強いチームだけど。


そんなことを考えているうちに、長机の前に着く。


部員たちが並んでいる。


まず目に入ったのは――


(この人か。久保田が言ってた三大美女の一人)


長い黒髪。

静かに資料へ落とされた視線。


三年生、久遠院優里(くおんいん ゆうり)


柔らかい印象の奥に、芯の強さがある。


職は、魔法医師と強化者。


回復とバフ。

つまり、チームの生命線。


(この人が落ちたら、その時点で試合の先が見えるな……)


どれだけ前線が強くても、支えがなければ持たない。


そして、その隣。


輝夜凛。


机に肘をつき、ちらりとこちらを見る。


職は、魔剣士と賢者。


身体強化を纏い、前線で戦うアタッカー。

それでいて、高水準の魔導制御。


凛の動きは――綺麗だ。


無駄がない。

迷いがない。

魔導の発動順序、剣の軌道。間合いの詰め方。

すべてが理論通り。


正解をなぞるような完成度。


――いや、今は違う。


その完成された型を、さらに上に行くために自分で崩している。


凛の対面には、


「よう、新入り!」


椅子を傾けたまま、手を振る男。


「俺は斗真一樹(とうま かずき)。同じ二年生だ、よろしくな!」


軽い口調。

でも、目は油断していない。


「よろしく」


職は、狙撃手と召喚士。


その隣。


「にひひひ……」


(なんか出た)


タブレットをいじりながら笑う男。


一年生の伊藤正人(いとう しょうた)


結界師と情報士。


索敵、分析、弱点看破。


完全な頭脳役。


(優秀なんだけど……笑い方で全部台無しだろ)


そして、その隣に座っている一年生の天河瀬澪。


職は暗殺者、狩人。


敵の後衛を狩る役。


(うん、普通に怖い側だな)


改めて思う。


この部、バランスはいい。


(でも、癖が強い)


「さて」


柳先輩が立ち上がる。


机を軽く叩く。


その一音で、空気が切り替わった。


緩さが消え、一瞬で“戦う集団”になる。


「地区大会について説明しようか」


全員の視線が集まる。


地区大会。


――最初の公式戦だ。


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