第21話 ある日の悪夢(??視点)
――五年前。とある少年に起きた話である。
音が、うるさい。
「やだ……やだ、やだ……なにこれ……なんで……」
息ができない。
煙が喉に刺さる。
「げほっ……げほっ……苦しい……」
視界が揺れる。
屋敷が燃えている。
見慣れた廊下が、黒く焦げている。
「やだよ……こんなの、やだ……」
「――!!」
「……っ!」
父の声。
振り向く。
走ってくる。
速い。
――でも、顔が違う。
怖い顔。
「逃げろ!! 母さんのところへ行け!!
いいか、絶対に振り返るな!!」
「やだよ!!
一人にしないでよ!! なんで!? なんでこんなことになってるの!?」
腕を掴まれる。
痛い。
強い。
「いいから行け!! お前は生きろ!!」
「やだって言ってるじゃん!! 一緒に――」
その時。
「……え?」
”いた”。
すぐそこに。
”狐の仮面”。
白い。
小さい。
ぼくと同じくらいの背。
体つきからして、多分少女。
なのに――
「……なに、あれ……」
息が止まる。
父も、止まる。
一瞬。
ほんの、一瞬。
少女が動いた。
見えない。
何も、見えない。
ただ――
「……え?」
父の体に、穴が開いていた。
綺麗に。
まるで、そこだけくり抜かれたみたいに。
「……え?」
時間が止まる。
「……父さん?」
血が、遅れて溢れる。
口から、こぼれる。
「……なんで、穴……あいて……」
父が、崩れた。
「と、父さん!? 父さん!!
ねぇ、立ってよ!! ねぇって!! なんで寝てるの!? 起きてよ!!」
揺さぶる。
動かない。
「やだ……やだやだやだ……」
顔を上げる。
狐の仮面。
こっちを見ている。
「……なに……それ……なんで……」
何も言わない。
何も感じていない。
ただ、そこにいる。
「……やだ……こっち来ないで……」
足が動かない。
逃げたいのに。
動けない。
「……母さん……」
奥。
母が見える。
戦っている。
強い。
いつも通り。
「母さん!! 助けて!! 父さんが――」
母が振り向く。
目が合う。
――その瞬間。
少女が、消えた。
「っ!?」
もう、そこにいる。
母の、すぐ前。
「――!」
母が動く。
魔力が走る。
速い――
「……え?」
止まる。
母の体が。
胸の、真ん中。
ぽっかりと。
穴が、開いている。
「……え?」
血が、口から溢れる。
「……ぁ……」
母の目が、揺れる。
「……――い……」
声が、かすれる。
「……生き――」
崩れる。
「母さん!? 母さん!!」
近づく。
足がもつれる。
「母さん!! ねぇ!! ねぇって!! なんで!? 起きて!! 起きてよ!!
さっきまで動いてたじゃん!!」
触る。
手が冷たい。
動かない。
「やだ……やだやだやだやだ……」
涙が止まらない。
視界が滲む。
「なんで……なんで……なんで……」
顔を上げる。
狐の仮面。
こっちを見ている。
「……やだ……」
声が震える。
「来ないで……来ないでよ……なんでそんな顔してるの……
なんで平気なの……」
足が、動かない。
逃げられない。
何もできない。
ただ、見られている。
それだけで、壊れそうになる。
その時。
上空から、光が差した。
「……え?」
光が、膨れ上がる。
「なに……?」
すべてが、白く染まる。
「やだ……やだよ……」
音が消える。
「やだって……!」
体が浮く。
「やだあああああああああああああ!!!!」
これで地区大会編は終わりです。
ありがとうございます!
今後は、カクヨムに先行投稿をしようと思いますので、
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