案件管理の新しい地図
支部・職員作業室の一角。
ミーナ=ルクトリアは、エドリック=トーンのデスクに立っていた。
「エドリック君、ちょっとだけ、案件管理フローについて相談したいんだけど」
エドリックは真剣な顔で顔を上げる。
「はいっ! もちろんです!」
ミーナは微笑みながら、資料を広げた。
「今の案件管理フロー、完璧ではあるんだけど──少しだけ、現場で運用しづらい部分があって」
「運用……しづらい?」
エドリックが目をぱちくりさせる。
「うん。たとえば、進捗の確認が属人的になってたり、記録漏れがたまに出たりしてるんだ」
ミーナは現在の運用図を示しながら、具体的な課題を指摘していく。
「だからね、“進捗ステータス”をもっと細かく分けて、どこまで進んでるか一目で分かるようにしたいの」
「……なるほど……」
エドリックは真剣な顔でメモを取り始める。
そのとき、ふと作業室の奥から、黒縁眼鏡の人物──アルフォード=グレインが通りかかった。
「案件管理の見直し、か」
低い声で呟きながら、アルフォードは足を止めた。
「支部ごとに最適化するのは、悪くない。ルールは目的を達成するための手段だからな」
エドリックは尊敬のまなざしで支部長を見上げ、カチコチに姿勢を正した。
「は、はいっ! アルフォード様!」
カチコチに姿勢を正したエドリックに、アルフォードはわずかに眉をひそめた。
「……職場では“支部長”でいい。必要以上にかしこまるな」
「も、申し訳ありません!」
エドリックは真っ赤になって頭を下げる。
アルフォードはそれ以上何も言わず、資料に視線を戻した。
その態度に、エドリックはますます尊敬の念を強くするのだった。
その光景にミーナは苦笑しながら、エドリックに視線を戻す。
「だから、アルフォード支部長のおっしゃる基本ルールは守りつつ、現場に合う形にカスタマイズしていきたいんだ」
「現場に……合う……」
エドリックは、感動したようにメモを取る手を止めた。
「これが……これが、“現場運用”……!」
そして、ぐっと拳を握りしめた。
ミーナは、そんなエドリックを温かい目で見守りながら、思う。
(理想も大事。でも、それを現実に落とし込むのが“現場”なんだよね)
支部に、またひとつ──新しい地図が描かれようとしていた。




