ならば、あなたに相談しましょう
ギルド・ラストリーフ支部、午後のひととき。
アルフォード=グレインは、職員たちの様子を遠巻きに眺めていた。
(……やはり、少し変わったな)
業務改善は順調だった。提出書類の期限遵守率、案件処理スピード、報告精度──
どれも着任当初より明確に向上している。
だが。
(数字では測れない、微妙な……)
支部に流れる空気。
そこに、わずかな違和感──かすかな距離感を覚えていた。
アルフォードは、ふとミーナ=ルクトリアに目を向けた。
(……いや、やめておこう)
冷戦中の微妙な空気を、敏感に察知してしまう。
代わりに目を留めたのは、近くで書類整理をしていたカミーユ=フロリネッタだった。
(彼女なら──まだ日も浅く、外から支部を見ている目を持っているかもしれない)
「フロリネッタ契約職員」
呼びかけると、カミーユはぱっと顔を上げ、慌てて立ち上がった。
「は、はいっ。ご用でしょうか?」
「率直な意見を聞きたい。この支部の……現状についてだ」
カミーユは一瞬、きょとんとした。
だがすぐに、真面目な顔になり、
「はい。業務指標の改善は順調でございますわ。提出率、達成率ともに……」
──違う。
アルフォードは、無言で彼女を見つめた。
カミーユも、途中で気づいた。
(……ああ、数字じゃない。支部長様は、もっと“空気”を聞きたいのですわね)
カミーユはそっと微笑みを浮かべ、貴族令嬢としての顔に切り替えた。
「数字上は順調でも──支部の温度、心と心の距離感は、まだ少しだけございますわ」
静かで、しかし本質を突く言葉。
アルフォードは一瞬だけ黙った。
(……やはり、そうか)
遠く、ミーナがそっと様子を伺うようにこちらを見ていた。
アルフォードはそれに気づきながらも、何も言わず、ただカミーユに小さく頷いた。
「……参考になった。礼を言う」
「いえ。僭越ながら……この支部が、もっと温かくなっていくと、私は信じておりますわ」
カミーユが、朗らかに微笑んだ。
そしてアルフォードも、ほんのわずかに、唇をほぐす。
まだ完全には見えない。だが、確かに──
何かが、少しずつ変わり始めている。




