今度はきっと
支部の相談室。
木漏れ日が差し込む中、カミーユ=フロリネッタは、緊張した面持ちで依頼人と向き合っていた。
今回の相談者は、レナ=アーウィンという若い女性だった。
「……ええと、その、前の職場では、事務をしていました。でも、人間関係が少し、うまくいかなくて……」
レナは、時折目を伏せながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
カミーユは、まっすぐにレナを見つめ、静かに頷きながら言葉を促す。
「そうでしたのね。それは……とても、お辛かったですわね」
レナの肩が、ほんのわずかに緩んだ。
カミーユはさらに、そっと問いかける。
「では、レナ様が今、お仕事に求めることは何でしょう? どんな環境なら、きっと、笑顔で働けると思われますか?」
レナは、驚いたように目を瞬かせた。
「……こんなふうに聞かれたの、初めてです」
「私は、レナ様が、次の一歩を踏み出すためのお手伝いをしたいんですの」
カミーユの言葉に、レナの表情がふっと柔らかくなる。
(大丈夫、ちゃんと聞けてますわ)
──そして、案件紹介の時間。
カミーユは、少し緊張しながらも求人票を取り出した……その瞬間。
手がすべって、ファイルから数枚の求人票がぱらぱらと床に散らばった。
「あっ……失礼しましたっ!」
慌ててかき集めるカミーユ。
レナは、思わず口元を押さえて、くすりと笑った。
「ふふっ……大丈夫ですよ。私も、よくやりますから」
その言葉に、カミーユは一瞬驚き、そして、恥ずかしそうに笑った。
(……よかった。空気、壊れませんでしたわ)
カミーユは慎重に求人票を整えながら、改めて丁寧に一枚一枚を紹介していった。
レナは、真剣な顔でそれを受け取りながら、時折うなずいていた。
やがて相談は、温かな空気の中で終わった。
レナが深く頭を下げ、相談室を後にする。
カミーユは、ほっとしたように小さく息を吐いた。
ミーナ=ルクトリアは、相談室の端で静かにその様子を見守っていた。
(……信じて、よかった)
失敗しても、焦らなくてもいい。
大事なのは、目の前の人に向き合うこと。
カミーユは、確かにそれを掴みかけていた。
ミーナは、そっと胸の奥で呟いた。
(今度はきっと、大丈夫)
支部の中に、静かだけれど確かな温もりが広がっていくのを感じながら。




