“斡旋人”って、誰のこと?
支部の談話室の隅、窓際の応接スペース。
ミーナ=ルクトリアとカミーユ=フロリネッタが、依頼人と向き合っていた。
ミーナは柔らかな声で、依頼人の話を丁寧に聞き取り、カミーユは明るい調子で言葉を添え、場の空気を明るくしていた。
「それなら、この職種もご検討に入れてみてはいかがですの?」
依頼人は、最初こそ緊張していたが、次第に表情を和らげていった。
──アルフォード=グレインは、少し離れた場所から、その様子を静かに眺めていた。
そこには、数字では測れない温度があった。
効率だけでは得られない、“人と人”の空気があった。
依頼人は、何かを選ばされるのではなく、自分で選んでいいのだと、自然に思わされているようだった。
(……斡旋とは、こういうものなのか)
アルフォードは、心の中で呟いた。
その時、ふとカミーユがミーナに小声で尋ねた。
「ミーナさん、最近……支部長と、何かありましたの?」
ミーナは一瞬だけ目を伏せ、すぐに小さく首を振った。
「……なんでもないよ。大丈夫」
言葉は明るい。
だが、その声の奥には、まだ少しだけ冷えた空気が漂っていた。
──2人の冷戦は、まだ終わっていない。
それでも、ミーナは依頼人に向き直り、変わらぬ笑顔で話し続ける。
カミーユも、いつもの明るさを取り戻し、楽しそうに相槌を打った。
(“斡旋人”──か)
アルフォードは、静かに目を細めた。
それは、単なる職業紹介者ではない。
誰かの人生の一歩を、そっと支える者。
データには載らない、小さな未来を紡ぐ者。
ミーナとカミーユの姿は、そんな“斡旋人”の本質を静かに映していた。




