さざ波に濡れる月夜
こんばんは、遊月です!
月音さんと連れ立って学園を飛び出した白雪。彼女はその日、戻れない夜へと足を踏み入れる……
本編スタートです!
「――――、」
「なんだ、口では否定してたくせに、やっぱりあれ見て興奮してたんだ?」
月音さんは、いつも凛様がわたしにするように、そして浪川さんが凛様になさっていたように、わたしに微笑みかけています。どうしてでしょう、よく似ているはずなのに、月音さんの微笑みは、見ているだけでわたしの奥底に熱を芽生えさせるようでした。
凛様しか触れたことのないような場所を、荒々しいような、それでいて繊細で、大切なものに触れるような優しさに溢れた手つきに、思わず息が漏れてしまいます。
「ん、ふっ、――――っ、あぁ、」
「我慢しなくていいよ、別に?」
「あっ……、が、まん……?」
「必死に声を抑えてる」
「だって、こんな……はしたな、んんっ、」
漏れる声を圧し殺していますが、月音さんには全てお見通しだったようです。クスクスと楽しそうに笑うお声も美しくて、どうにかなってしまいそうでした。こんな感情、凛様以外には感じなかったのに……。
……………………、
「どうした?」
「い、いいえ……」
凛様のことを考えたら教室で見た光景のことまで思い出してしまったなんて、言えませんでした。凛様がいらっしゃらないとしても、与えられた居場所に戻らず、こうして他の方の手に溺れているということを改めて認識してしまいそうだったから。
「…………っ、」
「ふぅ、義理堅いんだね」
「え、」
「泣いてる」
月音さんに指摘されて、わたしは気付きました――なんということでしょう、凛様のことは考えまいとしていた矢先に、こんな、月音さんにも失礼なことをしてしまうなんて。きっと凛様の前でしようものなら、“お仕置き”と称してもっと、わたしが足腰立たなくなるくらいまでされてしまうことでしょう。
けれど。
「ふふふふ、」
「あっ――――」
月音さんはもっと愉しそうに微笑まれました。そして、身悶えするわたしを見て、ほんの少し泣きそうな顔をしながら。
「あぁ、やっぱりわかるわ、あいつの気持ち」
「え?」
「きっと、あのときの私もそういう反応してたのかもね」
小さな声で呟く月音さんのお顔が、どこか翳って見えて。
……ごめんなさい、凛様。
心のなかで小さく謝ってから、わたしは月音さんにそっとキスをしました。そうすると凜様はとても喜んでくださいましたし、どうしても月音さんにしたいと、心の底から思ったのです。
濡羽色のように美しい夜空に背を向けるように、その中で孤独に輝く月をこそ求めて。
キスを受け入れて、わたしの髪を撫でてくださる月音さんの手つきは、何故でしょう、凛様のそれよりもよほど熱を帯びて感じられました――そして、悟ったのです。
わたしはきっと、月に魅入られてしまったのだ、と。
前書きに引き続き、遊月です!
珍しく男性の登場しない百合作品を書かせていただきました。しかし、初動が遅かったこともあってか完結までなかなかの時間を要することにもなったので、次回作ではこの反省を活かしたいですね……ということはさておき、本作について。
寝取られとは違いますが、恋を知らず主従によって繋がりを持つのみだった少女が恋を知る、というお話だと思っていただけたら幸いです。
同じ孤独に惹かれていく……そんな心情もあるのではないかと思いました。
また次回作でお会いしましょう!
ではではっ!!