表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すりみつみれの冒険おやたい❣  作者: みどりのヤクルト
異世界召喚されちゃう第一章
5/94

召喚魔法にご用心!2

礼拝堂の出口を抜けると、そこは美しい花園だった。白い小花が細密画のように辺り一帯を埋め尽くし、一面ヴェールがかけられているような幻想的な雰囲気を醸し出している。どこかでみたことがある花なのだけど、思い出せない。つみれは首をかしげながらも見とれていた。

花園の真ん中を突っ切るように作られた道を、女は歩いていく。

周囲は石造りの高い城壁に覆われていて、あちらこちらに階段があり、どこがどこにつながっているのかわからない広大な迷宮のようだった。つみれは、前を歩く女を見失わないように注意を払いながらも、その美しい情景に見とれていた。

大きな噴水がある角を曲がり、奥にある階段を登る。道案内をしてくれる女は、終始無口でつみれに何も尋ねてこない。

少し、気まずい。そう思いながらも、自分からも話せるような話題が見つからないので、つみれは距離を開けたまま、とりあえずひたすら景色の美しさに驚かされるままになっていた。

誰ともすれ違わないまま、いくつも角を曲がりながら空中回廊を歩く。はるか下の方に、国民たちだろうか、人々が畑仕事をいるのが小さく見えて、随分と高いところにいるんだなあと自覚する。

「ひえーちょっと怖いかも、」

思わずひとりごとをつぶやいたつみれに気づき、女は少し足を止めると、表情を変えないまま、手を伸ばして、更に高いところにある塔を指さした。

「目的の部屋はあそこです。お疲れかとは思いますが、今しばらくご辛抱くださいませ。」

「あっだっ大丈夫ですっ、」 つみれはあわてて顔の前で手を振るジェスチャをした。「なんかこうっ 高いとこにいるなーって実感しただけでっ」

女は高いところで結われたポニーテールと裾の長いメイド服を風にはためかせながら、

「ここはもともとは城攻めに耐えるべく作られた城塞都市でありますゆえ」と言った。そして、また歩きはじめる。

「え、城塞って、戦争とかのあれ……?」

疑問をつぶやくつみれに、女は「昔の話です」とだけ言いそれ以上答えなかった。

そのまままた二人はまた気まずい無言に覆われたっきり、たどり着いた塔の中の狭く暗い螺旋階段を登り、つみれの足が筋肉痛でがくがくと震えだしたあたりで、女はようやく声を発した。

「長々と歩かせてしまい、申し訳ありません。ここから先がルナフィオラ様の応接間でございます。どうぞお開けください。」

「え、こんな小さなドアの先!?」

「明らかに大きな扉だと、白に攻め入られた敵に気づかれてしまうことがありますゆえ、このような入り口を好まれる聡明なお方なのです」

さきほどから殺伐とした説明を淡々とするこの女にちょっとおののく。さっきまでのほのぼのとしたウサ耳お姫様たちとの交流はどこに……と思いつつ、つみれは、自分の腰の高さほどしかない小さな戸を押した。木製の戸は以外にも重い。内側に鉄が貼ってあるのだろう。両手を使ってようやく開くと、中に広がる華やかなオレンジ色の絨毯が目を惹いた。

そこは、これまでの暗い螺旋階段とはうってかわって、煌々とシャンデリアのろうそくで照らされた室内だった。広々とした空間は全体的に薄いオレンジやベビーブルー、金色の装飾で統一されていて、優雅かつ女性的な軽い雰囲気に包まれている。ただどこを見ても一流の調度品ばかりが置いてあり値段がつけようがないものであることは一目瞭然だった。

その部屋の一番奥、外に開かれたテラスから、聞き覚えのある声が呼びかけた。

「つみれさま、こちらでございます」

見るとそこに立っていたのはさきほどのルナフィオラとスリアミドラだった。にっこりと微笑みながら手をゆるゆると振っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ