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公式チート・オンライン  作者: 紫 魔夜
第4章 領域解放編

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戦いの終わり

 不貞nーーじゃない。

 布団で横になって休んでいると、アラームばりに鳴り続ける通知音に叩き起された。

【999+】なんて表示を見たのは初めてだ。

 しかも、内容は全て同じ1つの文章。


【早く戻ってこい】


 それが1人のトーク画面に無数に積まれていた。

 スクロールしても延々と同じ文章しか出てこないのは、ゲシュタルト崩壊を通り越して、軽くホラーだ。


【領域解放戦の結果が発表された】


 と、俺が見たのを確認してか、新たな文章が現れた。

「ったく、わかったよ」

 結果はSeLFの公開掲示板に載るので、外からでも確認出来る。

 だから無視してもいいのだが、後で何を言われるかわからないどころか、再び通知の嵐となることは火を見るより明らかだ。

 早々に白旗を上げて、俺は速やかにログインした。


 本当に領域解放戦は終わったらしく、基礎領域(イェソド)の中央広場はいつもと変わらぬ活気に満たされていた。

 違いがあるとすれば、プレイヤー達の会話くらいだろう。

 鮮明に聞き取ることは難しいが、どこもかしこも領域解放戦の話題で持ちきりだ。

 そして、俺達もその例にもれることはない。

 レフトーーはまだ来てないな。

 待ち合わせの場所は指定されていないし、ドロップアイテムでも確認しながら待つか。

 メニューからアイテム欄を開き、五十音順から入手順に並び変える。

 そこには見慣れないアイテムが3つ。


魔蛇(まじゃ)(うろこ)】    15個

経験(けいけん)宝珠(ほうじゅ)S】  20個

海蛇魔装(ヒュドラメイル)】    1個


 ヒュドラのドロップアイテムは最後のだな。

 物理防御力は今と同じくらいで、水と毒の強耐性か。特殊技や特殊効果はなし。

 見た目は微妙というか、端的に言って黒い鱗の鎧だな。

 レフトと戦うことを考えるなら、火属性の耐性を持つ【黒鉄(くろがね)(よろい)】の方がいいか。

 ……なぜ戦うことを前提にしたのだろう。


「まあ、いいや」

 鎧の確認はそれくらいにして、他のも確認するとしよう。

 まずは1番上にある【魔蛇の鱗】だ。


素材(そざい)栄光領域(ホド)付近(ふきん)生息(せいそく)するサーペントの(うろこ)(つや)強化(きょうか)されます】


 なんの捻りもなく、サーペントの鱗だった。

 そして、艶が上がる素材か。【(よる)欠片(かけら)】の説明にも書いてあったが、意味もない艶ばかり上げる手段が豊富でもな。

 まあ、気にしても仕方ないことは忘れよう。

 もう1つは【経験の宝珠S】か。とりあえず取り出してみると、黒く小さい飴玉のような宝石だった。


「待たせたな! それに、待ちくたびれたぞ」


 現れるなり意味不明な挨拶をかましてくる、魔法使いーーレフト。


「解放戦の結果を確認だ。安心しろ、悪くても笑ってやるからよ」


 実際には昨日の夜のレベリングまで一緒だったから久しぶりでもないが、大イベントを挟んだせいか、随分と久しぶりな気がする。

 そして、その言い草から結果はまだ見てないときた。

 余裕の笑みが崩れる様を見れると思えば、叩き起されたことは瑣末なことか。


「なんだよ。ニヤニヤして気持ち悪いな」

「ほっとけ。それより、結果見るんだろ?」

 気持ちが顔に出てしまったらしい。いかんいかんと気持ちを引き締め、話を戻す。

 多少強引ではあったが、レフトとしても逸れた話を続ける気はないらしい。

「さ、開くぞ」

 神妙な面持ちで、レフトはSelfの掲示板を開いた。


領域(りょういき)解放戦(かいほうせん) 速報(そくほう)! 

 貪欲領域(ケムダー)色欲領域(ツァカブ)。2つの領域を支配していたクリフォの主は、皆様の協力のおかげで倒すことが出来ました。

 SeLF一同より、皆様に感謝を伝えたいと思います。

 前置きはこれくらいで、皆様が気になっているであろう結果について】


 貪欲領域(ケムダー) 猛毒龍ヒュドラ 討伐

 FA  エンリル(無所属)

 LA  ライト(無所属)

 MVP ラグナ(星狩(ほしが)りの(つるぎ)


 色欲領域(ツァカブ) 合成獣キマイラ 討伐

 FA  ライダー(魔法(まほう)協会(きょうかい)

 LA  ガイウス(SeLF)

 MVP ヒロ(無所属)


 ※同姓対策として、所属ギルドを表示しております。


「ガイウス以外は無名のプレイヤーばっかりだな」

「他に言うことないのかよ?」

「…………」

 無言で目を逸らしやがった。


「無名かもしれないが、お前の知り合いの名前が載ってるだろ?」

「ーーライダーは魔法使いの試練も含めて、浅からぬ因縁があるな」


「他には?」

「ーーヒロはベータの時から、他とは違う何かを持ってるんだよな」


「……他には?」

「ーーエンリルはベータの時のあいつなら、FAは順当な結果だな」


「…………他には?」

「ーーラグナって奴は知らないが、星狩りの剣とは縁があるからな。知り合いかもしれない」

「わざとやってるよな!?」

「そんな怒んなよ」

 ニヤニヤと笑みを浮かべながら、レフトが振り返る。


「LAおめでとう。どうせ、チートなんだろうけどな」


「一言余計だよ」

 最初からそう言えよ。という言葉は飲み込んだ。

 無駄な煽りもレフトなりの負け惜しみだと思えば、むしろ心地よい。

 チートのおかげというのもあながち間違ってないしな。


「まあ。無名なこっちと違って、そっちは有名なプレイヤー多くて大変だったんだろ? お前が何も取れなかったのも、仕方ないよな?」

 それはそれとして、やられたらやり返すのが俺のスタイルだ。

 特に、レフトに対してマウントを取れる機会は貴重だからな。

 苦虫を噛み潰したようなレフトの表情は、写真に残しておきたいくらいのレアものだった。

 カメラ起動させたらバレるからやらないけど。


「てか、それなんだよ?」

 不利を悟ってか、レフトは話題を変えてきた。

「それ、ってなんだよ?」

「手に持ってるそれだよ」

 そう言われて自分の手を確認すると、宝石が握られていた。

 そう言えば出したままだったな。

「これか。これはーー

「あぁ、経験の宝珠か」

 知ってるのかよ。

 というか、聞いといて自分で答えを出すな。


「宝珠は共通みたいだな」

「そっちも出たのか」

「あぁ。ボスや眷属の経験値がない代わりにだろうな」

「なるほど」

 効果はまだ見てなかったが、名前の通りらしい。

「てか、個別の経験値なかったのか」

「気づいてなかったのか? って、お前のチートだとそもそも入らないんだったな」

 レフトはニヤリと笑う。

「つまり、その対策ってわけだ」


「随分とピンポイントな対策だな」

「他にも経験値が入らないチートがあるんだろ」

「あぁー」

 俺と同じチートはないとしても、デメリットとして経験値が入らないチートはあってもおかしくはないのか。


「そういや、LAはなんなんだよ」

 またレフトが話題を変えてきた。

 いや、手に持ってるのがドロップアイテムかと思って、さっきの質問か。

 それが外れたからストレートに聞いてきたと。

「何ニヤニヤしてんだよ」

「し、してねぇよ。ちょっと、待ってろ」

 百聞は一見にしかず、ということでメニューを開いて、海蛇魔装(ヒュドラメイル)を装備。

 素材の違いなのか、少し体が軽くなった。

 龍の鱗って黒鉄より軽いのか。わからん。


「へぇ、似合ってんじゃねぇか」

「そうか?」

「あぁ、似合ってる」

「……素直に褒められると逆に不気味だな」

「んだよ。人が褒めてんだから、素直に受け取れって」

「はいはい、どうもどうも」

 他意がないならそれにこしたことはない。

 流石の俺でも褒められたくらいで何かをやるほどチョロくないけどな。

 褒め返してやっても、っていつもの黒い衣装だから褒めようもないな。


「てか、これからどうすんだよ?」

 俺の質問にレフトは首を捻った。

「特に何もないぞ? 栄光領域(ホド)勝利領域(ネツァク)が解放されるのは明日らしいからな」

「マジで確認のために呼び出したのかよ……」

「まあ。何かしたいってんならーー

「特にないなら、落ちるぞ。やることもあるからな」

 メニューを開いてログアウト。

 少し不服そうなレフトの顔は見なかったことにした。


 今日のために、ここ数日は普段よりゲームに時間を割いたのだ。

 逆に今日くらいはゲームの時間を削ったって問題はない。

「さて」

 新エリアに行けるのも明日らしいしな。

 やり残したことも特にない。

 むしろ、明日を有意義に使うためにも、今日中に終わらせないといけないことがある。


「宿題でもやるか」


 と、気合いを入れた直後にピロンと通知音が鳴った。

 また通知アラームされたら勉強どころじゃないな。

「……何言い忘れたことでもあったのか。あ、違う」

 確認してみると、メッセージの差出人は古河(こが)だった。


【ヒュドラのLAを譲って欲しいという方がギルドに来ています。VRY(ブライ)でもアイテムでもいくらでも欲しいものを用意するとのことですが、どうしますか?】


 古河(こが)じゃなくてフィックスだった。

 というか、中にいても文章だと変なキャラ付けしないんだな。

「いくらでも、か」

 魅力的な提案だ。

 流石に上限や不可能なものあるだろうが、いくらでもと言ってくるあたり集める自信があるのかもしれない。

 が、俺の答えは決まってる。


【使うから譲れないと伝えてくれ】

 メッセージを送るとすぐに既読がついた。

【わかりました】

 そして、用意していたかのような速さで、返事が来る。……ような、じゃないな。

 どう言っても間違いのない文章だし、予め打ってあったのだろう。

 と、これ以上なにか来ても困るので、サイレントマナーをオン。

 完全に現実へと帰還した。

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