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公式チート・オンライン  作者: 紫 魔夜
第4章 領域解放編

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知り合いの知り合いは知り合い

「あ、ライトじゃないですかぁ」


 星狩(ほしが)りの(つるぎ)の面々から逃げるように距離を取ると、別の知り合いと出会(でくわ)した。

「ライトはこっちにしたんですねぇ」

 語尾が間延びした甘ったるい声。

「……フィックスか」

「はぁい。SeLF(・・・・)のフィックスですぅ」

 浴衣の少女は、ニヤニヤとした上目遣いで見つめ、顎に指を添えてくる。誘惑するというよりは、大人びた動きをしようとする子供のようだが、油断すると見とれてしまいそうだ。

「SeLFだったんだな」

「そぉですよぉ。前回は言ってませんでしたねぇ」

「今日はガイウス達とは一緒じゃないのか」

「ヒュドラの方に、参加ですからぁ」

「だよな」

 事前に公表されていた情報通りだ。


「……終わりですかぁ?」

 少し離れ、フィックスは試すような視線を向けてくる。いや、試すようなというは俺の勝手な思い込みか。

 ただ、問われたからには聞く必要があるだろう。


ルーク(・・・)達とも一緒じゃないのか」


「ヒュドラの方に、参加ですからぁ。いつ、気がつきましたぁ?」

「ルークと話してる時に同じ名前だって気がついた。同姓同名の可能性もあったけど、ロキが俺のチートを知ってーー」

「ありえません」

 同一人物とは思えないほどに冷たい声で、フィックスが断定する。


「これは、大切な人からもらった大切な名前ですから。他の人がつけるなんて許しません」

 そこまで思い入れがあるとは思っていなかった。名前の話題は地雷だったかもしれない。

「その喋り方をしてたら、気づいたかもしれないんだけどな」

「ん~? 言ってる意味がぁ、よくわかんないですよぉ?」

「はいはい」

 茶化すように話題を変えることで、フィックスも普段のーーゲームにおけるーーキャラに戻った。


「そろそろぉ、開幕ですねぇ」

「そうだな」

 細かい時間は確認してないが、ここに来てからそれなりに時間が経ったし、いつ始まってもおかしくはない。

「ルーク達は上手くやってるかな」

「さぁ~、どうでしょうねぇ」

 その戦いぶりを想像してか、フィックスはクスリと笑みをこぼす。

「獣人と合成獣(キマイラ)の戦いは、ある意味宿命ですしぃ。

 ロキはぁ、バンド仲間がペガサス欲しいっ! ってなったから、向こうでぇ。

 参加公表してたメンバー的に、レフトがあっちに行きたがるのも(さが)だよねぇ」

「確かになぁ……ん?」

 こいつ、最後になんて言った? 

「どーかしましたぁ?」

「いま、お前、レフトって」

「言いましたよぉ?」

「お前に会った時は俺だけだったよな」

 ルーク達と会った時には一緒だったが、それを彼が伝えていたとしても、このタイミングで出てくるのは不自然だ。百歩譲って話題に出たとしても、今の発言はありえない。


「そうですねぇ……え、普通にフレンドだけど?」

「……隠してるわけじゃなかったのか」

 そういえば、ロキとも知り合いだったな。現実での関係を考えれば、フィックスとも知り合いでもおかしくないのか。

 というか、ルークと話してた時の気苦労を返してくれ。

「そんな事はないと思いますよぉ。ルークとかぁ、リオンには話してないだろうしぃ」

「あ、そう……か」

 なら無駄じゃなかったのか。

「まぁあ、積極的に話さなきゃ良いだけですよぉ。結局」

「そうだな」

 思わぬ繋がりが発覚したが、ゲームにおいては何の支障もないのだ。リアルの知り合いとゲームで知り合いでも、それを知らなくたって、分けて考えられるのだから。


「……なんだよ?」

「にゃは。爆弾投下しようか悩んでただけですよぉ?」

 ニヤニヤとした笑みを浮かべながら、フィックスは物騒なことを言い出した。って、この場合は比喩か。

 レフトとフレンドだったことよりも衝撃の発言だと? 

「何を言おうか悩んでるんだ?」

「あはぁ、気になりますぅ?」

「正直に言えば」


「へぇ。ならぁ、デート、してくれたら教えてあげますよぉ?」


 少し頬を赤らめながら、フィックスが詰め寄ってくる。

「そんなことでいいなら、むしろ喜んでやるぞ?」

「……へ、へぇ。いいですよぉ、上等です。言っちゃいますよぉ? 実はーー」


「ーー紳士淑女のゲーマー諸君! ようこそ集まってくれました!」


 その声を合成音声がかき消した。

「またかよ!?」

 前回もルークと話してる時に始まったぞ。いや、話が始まるのは決まってたから、その直前に話してる俺が悪いのかもしれないけどさぁ。

「あ、始まっちゃいましたかぁ。じゃぁ、仕事に行ってきますねぇ」

 人混みを潜り抜け、フィックスは声の元へと走り去る。話は聞きそびれてしまったが、これはこれで良かったのかもしれない。

 そう考えておくことにした。


「ついに! クリフォの主、猛毒龍ヒュドラを下し、新たな領域を解放する日がやって参りました!」


 人混みの向こうからでもよく響く、中性的な合成音声。そんな特徴的な声を持つプレイヤーは1人しか居ない。

 覆面ブロガーのイオーーもとい、SeLFのエターナルだ。


「我らがリーダーは向こう故、ここはこのエターナルが暫定リーダーということで……まあ、形ばかりですが。異論反論その他諸々はヒュドラを倒してから受け付けます!」


 開き直ったエターナルの態度に、群衆から笑みがこぼれる。

「てか、なんでエターナルがこっちにいるんだよ」

 キマイラに関わってるんじゃなかったのか。

「それはもちろん……面白いから! 自分が報酬用意したやつに参加してゲットするよりも、未知の報酬を求めるのはゲーマーなら当たり前!」

 俺の呟きが聞こえたかのように、エターナルから訂正が入った。向こうからも姿は見えないはずだが、声は聞こえたのだろうか。

 あるいは、前の方でも同じ反応があったのかもしれない。


「では! ごちゃごちゃと話しててもあれなので、行きますよ! フィックス!」


「はぁい!」

 エターナルに呼ばれ、フィックスが答える。

 疑ってたわけじゃないが、本当にSeLFのメンバーなんだな。それも、結構な重役のようで。


「今日のためだぁけぇに、習得した魔法。行っきますよぉ!」


 フィックスの掛け声に合わせて、地面に魔法陣が浮かび上がった。とても巨大な、それこそ、レーシュの丘全体を包み込むくらいの大きさがありそう魔法陣だ。

「テレポーテーション!」

「イーッツ、ショーターイム!」

 魔法陣が輝き、世界がホワイトアウトした。


 こんにちは、銀です。

 ついに領域解放戦が始まります。

 ライトだけではなく、皆の活躍と奮闘を心行くまでご堪能ください。

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