主従は見た!でございます
皆様御機嫌よう、アンジェリーナですわ。
さてさて困った事になりましたわよ… ここは手持ちのカードで何とか対策を練らなくては!
我が君様は何か気になる事柄が有るのか スクリーンを見続けておられますから、
私は飲み物の御用意でも致して来ましょう。
…………しばらくしてから御前に戻りますと
あら?随分ご熱心にあの方がたのご様子を御覧になってらっしゃいますわ、どうされたのかしら?
「お飲み物をお持ち致しました。 随分ご熱心ですが何かお気になられる事でも?」
「あら ありがとう、 いえね、うん アンジェリーナ、貴方も御覧になりなさい!とっても面白くてよ!」
は?まぁエリックさんの豹変ぶりには度肝を抜かれましたけど、あの凛々しく爽やかな殿方が御結婚されて ああなられるとは………
「愛は盲目」って言うのでしたかしら?御結婚と恐ろしいものですわね。
ほらほら!と熱心にお誘いなさるので、私も興味を引かれましてスクリーンに目を向けましたの。 あらまぁ まだ終わってなかったのですか…
―――――「ああああー!しつこい!その手をお離しエリック!貴方「聖剣士」でしょう!自覚が無いのか、自覚が!」
「嫌だ!離せば行ってしまうだろう?」
「当たり前よ!ここまでどれだけ遠いのかわかってるの?新婚旅行としてしか休暇なんか取れないじゃない、お互い仕事が詰まってるでしょう!仕事が!」
「新婚旅行ってこの為だったのか?でアーサーが一緒だったのかぁ?」
エリックがアリエノールのローブをしかと掴み、アーサーに話を振って来たのだか、
今迄のやり取りを見ているアーサーは二人に背中を向け、笑いの発作に襲われていた為 答えるどころではない。
「もう!アーサーに笑われちゃってるわよ、アーサーは東地に帰るから方角が一緒だったし、それに貴方も喜んでたじゃない!それにここに来るには「勇者」も必要だったのよ!」
「師匠 そろそろ諦めたら如何ですか?「男は諦めが肝心」って言うそうですし」」
「そうよ!諦めなさい!どうでも「天」に行くことを邪魔するのなら このままアーサーと東地に出向してやるわよ!」
「ダメー東地ってすっごく遠い!で俺は役目上今は行けない!それに、アーサー!お前ひどい、師匠の俺を裏切るのか?」
愛弟子のつれない言葉にエリックは恨めしげな視線を送る。 彼の気が逸れたその隙をつき!
ドカッ!とアリエノールの渾身の蹴り!普段の彼なら決して喰らわないのだが 完全無防備な今その攻撃は見事に効いた。
「ぐっ はぅぅぅぅー がはっ!」
情けない声と共に吹っ飛ばされてく「聖剣士」
そこそこ離れた場所に無事着地したのを見届ける二人。
「良し!アーサー上出来きです!よく隙を作ってくれました。 さぁ寝てる間に私は行って来ますからね!後はよろしく頼んだわよ!」
「はい!お頭!御武運を!」
片膝を地面につき、 東地風の礼をとり見送るアーサーの背後では 師匠エリックが気持ち良くお眠りになっていた。
「ホホホ 何て愉快な御方なのでしょうね。 そうは思わないこと?アンジェリーナ」
「でも我が君様、 エリックさんは仮にも「聖剣士」なのですから こういう場合はどうなりますの?「ペンペン」の対象には…なりませんですよわよね?」
くつくつとお笑いになられながら サァとスクリーンを閉じられます。
「勿論なりませんよ。 彼があまりにも、 そう 純粋なのでしょうね 殿方であれだけご自分を愛する相手にさらけ出せる御方も珍しいですわ そうは思わないこと?アンジェリーナ」
ふむ 私殿方の事はあまり分からないのですが、 こうして我が君様と色々な方々の映像見たり、
少しばかり地上で過ごした時の記憶を手繰って行きますと……
そうですわね、このような殿方ってお目にかかった事はありませんでしたわ。
あら!いけませんわ!アリエノールさんがご出立致しましたのね。
お迎えの御用意がございますのに
さてさて忙しくなりますわよ。 うふふ 手抜かり無いように準備に取りかかりましょうか。




