お着きになられましてよ。
皆様、ご機嫌ようアンジェリーナですわ。
私は今「愛」とは「人の成りを変える」と思われる参考事例を失礼ですが目の前のお二方で観察おりますの。
「美味しいですわ。彦様」
「うん、良かった。おまえが好きだからね。用意したんだよ」
………彦星様はともかく織姫様のご様子は、以前から思ってましたが、
エリックさんのご様子を目にしたり、彦星様が絡むと織姫様の変わりよう、私は思わず我が君様にお聞きいたしました。
「我が君様「愛」とはそれを持ち得た時、世界が薔薇色になるのでしょうか」
「ええ、本当にね。そうかも知れませんよ。ほほ、仲睦まじい事は良いことです」
お二人を微笑ましく見守られながらお答えになられます。
……ならば、そろそろ兄神様と仲直りとか等と考えてますと、
私の事など見透された我が君様がにこやかに仰られました。
「アンジェリーナ、兄上は別ですよ、兄上は兄上ですから」
あらぁ、駄目ですか?食べ物の恨みは誠に恐ろしゅうございますわ。
そういえば私、時折「仙桃のゼリー」も御作りしているのですけど、あの元になったゼリーとは何が違うのでしょうか?
一度お聞きしたいものですわ。それはそうと、アリエノールさんの事ですけど、そろそろ動きませんと。
私は我が君様にそれとなくお伝え致します。
「アリエノールさんの事ですが、せっかくお越しになられても、織姫様様は此方ですし、私がお出迎え致しましょうか?もうそろそろお着きになられるかと……」
「そうねぇ、この前の中国のお人は、この二人が対処したのだったわね、ではアンジェリーナ、行って来なさい」
はい、と私は上手くその場を離れる事に成功致しましたの。
――――「カチガラスや、おやつを持って来ましたよ」
「オヤツー!アンジェリーナ様、オヤツー!」
水面の上であちらこちらに散らばり、遊んでいたカチガラス達が集まって来ましたよ。
私はカチガラス達と戯れながら、その時を待ちます。それにしても可愛い!これから時々オヤツ持って来ようかしら?
「オイシー、オイシー」
うん、持って参りましょう!あら?どうやらお越しになられたみたいですよ。
「オキャク様、オキャク様、オデムカエー」
バサバサと川下へと飛びたって行くカチガラス達、あぁ!私何だか緊張して参りました。
――――「うーん、そろそろだと思うけど」
アリエノールは、ふわぁと大あくびをしながら、前方を眺める。
(ん?何か近づいてきてる?あれは天の川に居ると云われる「カチガラス」かしら)
「イラッシャイ マセー オキャク様ー」
アリエノールの頭上に飛んできたカチガラスはお出迎えの挨拶をそれぞれに述べている。
美しい御空を賑やかに集う様子を目にすると
(あー、やっと着いたのね)
ほっと一息ついた彼女だった。




