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風邪を引きました。
なので文章がおかしいのも、投稿時間が遅いのも風邪の所為……だと信じたい(特に文章の方)。
時間に関してはさっきまで薬飲んで寝てたっていう。薬って違法薬物じゃなくて医療薬品の方ね。
今の今までどんな場所で惰眠を貪っていたのか――それをすっかり思考の外に放り投げていた自分は、取り敢えず目の前から片づけようとした。具体的に言えばシーツおばけの身ぐるみを剥がして正体を確かめようとして――結局は出来なかったのだが。
コンッ、と木製の扉がノックされた。
「優希様、起きていらっしゃいますでしょうか?」
何気ない通常運転であるかのように、音源の厚みの外から女性の声が聞こえた。女性というかアリサさんの声だ――――
――――はっ!?
余りの衝撃に心臓を鷲掴みにされて思いっ切り握り潰された錯覚を覚えた。それ以前にビックリして舌を噛みそうになって代わりに唇を軽く噛んだ。……個人的には舌の方を軽く噛んででもして気絶したくなった。
ギチギチギチ、と。
すっかり錆び付いたブリキのようにぎこちなく、ゆっくりと目の前で静かに眠るおばけから発信源の扉の方へと視線を動かす。
不味い状況その2にして最も恐れていた事態が訪れた。誰にしろ発見されたら素敵な(もちろん揶揄だ)誤解をしてくれそうだったのだが、ここで恐ろしいのは昨日の会話ですっかり思い知ったのだが、アリサさんだとこの状況を俯瞰しても誤解したままなんとでもないような通常運転をしてくれそうだからである。要するにそれはそれで凄く気不味いのだった。
さて、そんな――パニックを通り越して瞬間最大風速的に頭をフルスロットルに回転させている(意味分からん)内にも時間は進む。
「優希様、起きていらしゃ――」
「起きてます起きてますすっかり目が醒めましたええそれはそれはもう」
返事がないとそのままなんてことなく入って来そうな(不吉な)予感がしたので、相手の言葉を塞ぐようにして言った。これは咄嗟にしては中々巧い切り替えしだと思う。そう思いたい。それでこの後「そうですか」と踵を返すのが彼女のメイドとしてのマニュアルとしての最適解ではないのだろうか――――
「はぁ、では失礼しますね」
と思ったのだが、マニュアルはその防壁をなんなく越えてやってきやがった。
ちょっと呼吸が止まった。
一瞬心肺停止にも陥っていたのかもしれない。
その一瞬でアリサさんがドアノブを回すガチャリという音が聞こえ、
「では失礼しま――」
「今は着替えているところなのでちょっと今中に入られるのは」
この時自分は珍しく、咄嗟の自分を褒めてやりたいと頭の片隅で思った。
「……着替えをお持ちしたのですが」
思っただけだった。
これはない。
詰んだ。
「では失礼しますね」
3度目になる定型文と共に、アリサさんがドアノブを回して扉を開いて――――。




