19
閑話休題。
ひとやすみ、ひとやすみ。
「――――…………っ、」
右手と左手のそれぞれで拳をつくり、それを両方とも高く突き上げて背筋を伸ばす。背中からポキパキッと軽やかに軋んだ音が伝わったが、いつもの事だった。
「…………、」
それからまた右手で額を頭痛の時のように押さえて、そのまま体を後ろに倒した。ぼすっと枕が自分の頭でつぶされる音が聞こえた。何も別に再びベッドの温もりに包まれなおして惰眠を貪りたくなったワケではない。…いや、ちょっとは、多少はあるのかもしれない。でも明らかな理由はまた寝たいという生理的欲求のそれじゃない。
「…………、」
記憶が――回想が途切れているのだ。まるで録画に失敗したものを鑑賞した時の不満に似たおかしさが頭の中をグルグルと回ってゆく。
――――一体どこからだ?
自分が最後に記憶しているのは、一度もあった事のない祖父が自分専用に用意したらしい別荘――の塀の前辺りで、まさに最低最悪の気分で車から降りた戸頃までだ。そこから以前の記憶はあるし、そこから以降の記憶がない。
つまるところ。
時間帯で言えば昨日の昼から今朝まで――車から降りた瞬間から今寝ている現在地点まで移動した記憶がまるっとないワケだ。
「どうい――」
思わず自分で自分に訊くなんて無意味な事をしでか――そうとして、しかしながらその滑稽な問いは続かなかった。
原因はベッドに逆戻りした自分の足下――にかかっているシーツ。
「…………?」
一瞬、目を疑ってゴシゴシと目を擦ってから体を起こすが、確かに紛れもなくシーツが――丁度人1人分くらいのサイズで丸くなっていた。それもまるで寝転んだ人が毛布ひったくったように。しかもサイズなんか、人は人でも女の子1人分の、だ。それによく耳を澄ませば、可愛らしい呼吸音――多分俗にいう寝息というヤツが聞こえる気がする。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………、」
昨日とは別の意味で、嫌な予感がした。
具体的には世界で一番不名誉な冤罪が降りかかる予感がした。
人はそれを役得と呼びます。




