09
余談ですがこの09話を描いている時は、『〇撃の巨人』の劇場版EDを聴いいていました。ホントに余談ですが。
車に当たる雨粒と暴風、タイヤが水飛沫を上げる音がノイズのようにチリチリと自分の思考と感情を炙り、急かしてゆく。水滴が伝う窓を通しての外の景色はどこまでも灰色で、ひどく歪んで見えた。
自分、それから一緒に呼ばれた彼女は今、担任のミニバンに乗っていた。普段は凛とした担任が、珍しく慌てて、
「……いいから来てくれ」
有無を言わさない雰囲気を纏って、自分と彼女を車に乗っていくよう指示した。……要するにそれだけの事が発生したのだろう。
担任も女性だからかどこか甘ったるい車内の空気を無視して、助手席に座る自分は後部座席を振り返る。振り返ってから後悔した。
(痛い)
わずか15年という短い歳月しか送っていない人生ではあるが。かつてここまでの、例えようもない猛烈な不安感に襲われた事があっただろうか?
(痛い)
特に今の彼女の――出会って、『救ってもらった』あの時から一度も見た事がない、ひどく怯えきった、脆くていとも容易く『何か』が崩壊してしまいそうな彼女の顔が。
(痛い)
自分の心の水平線をあっさりと荒らしてきて、心臓が締め付けられたように痛く感じた。
――自分は彼女にこんな顔をさせたくて今の今まで生きて来たわけじゃないのに。
――むしろこんな顔をさせないように生きて来たはずなのに。
「……着いたぞ」
担任の疲労が窺える一声の一瞬後に、車体が前後に小さく揺れて停止した。
到着した場所は、とても広い所だった。
窓から見た時点で、十数か数十の車が色とりどりに見えた。車から出ながら傘を差した時、目の前に大きなホールが見えた。体育館と似た見た目だ。
しかし……。
ガチャッと後部座席の方から音がして、自分はその方向へと傘を突き出す。
「…………ありがと」
掠れるような、震えた呟きで彼女はお礼を言った。
「私も着いて行こう」
そう言って、自分達2人の横に先生も着いて来る事になった。
向かう先は一見体育館。
しかし、そこは…………。
不安と悲劇と絶望を詰め込んだ鍋に蓋をしているようにも見えた。
そして、それは全く以って間違い間違いなんかじゃなかった。




