0161
Side:新田義貞
ワシは鎌倉に居た事もある為、ここの浜が引き潮の時に通れるようになる事を知っておる。
その為に極楽寺坂の方に来たのだが……
「なに? 大館殿が使って既に失敗した?
………それでは敵が防備を厚くして使えぬか」
「申し訳ない。敵に上手く守られ、突破が出来なんだのだ。
家臣に調べさせた結果、鎌倉は船まで出して守りを厚くしておる。
由比ヶ浜の道は使えるが、突破ができるとは思えぬ」
「そうか……」
引き潮はちょうど今の時季だ。それ故に突破して挟み撃ちにしようと思っておったのだがなぁ。
敵が防備を厚くしたというのであれば、突破は難しかろう。
となると………
「大館殿。もう一度だけ攻める事は出来ぬか? その間にワシの手勢は山間から鎌倉に侵入しようと思う。
大館殿ならば再び攻めてきても、敵は不思議に思うまい」
「ふむ。確かに敵は「また来たか」と思うぐらいであろうな。
そうして大館殿が戦っておる間に、新田殿は山から侵入、一気に敵の裏をとるという事か。
出来るであろうが、そちらも厳しいぞ」
「厳しき事は承知だ。されど三方全てが攻めあぐねておる。
ここまでの要害だとは思っておらなかったが、誰かが突破せねばならぬ。
でなければ、兵達の疲れが極限に達しかねん。そうなれば攻め返されかねんのだ」
「確かにな。兵達が疲れ切っておるところに奇襲でもされれば、我らが瓦解しかねぬ。
このままではマズいというのは、その通りであろう。
分かった。稲村ヶ崎を攻めよう。
それに突破できそうなら打ち破ってくれる」
「それはよい。敵を貫けるなら貫いてしまえばよいのだ。
鎌倉の者どもなど恐るるに足らず。そう見せつければよい。
なれば一気に瓦解しよう」
「うむ。それでは早速ワシらは動く。大館殿も頼んだ」
そうしてワシは山間の方から侵入する事になった。
流石に海の方が使えぬとなれば、そちらを囮にして別の所から侵入するしかない。
それにしても海の方を使って失敗しておったとは………余計な事をしてくれる。
まあ、よいか。
今度はワシの為の囮となってくれるのだ。それは決して悪い事ではない。
それでは行くか。ワシが一番槍を取れるなら、それに越した事はないからな。
ワシと手勢は敵に見つからぬように山間に身を隠しながら進む。
既に稲村ヶ崎では大館殿が攻め始めておるであろう。
ワシはその事を一旦忘れ、集中しながら山間を進む。
ここで見つかったら面倒な事にしかならぬからな。一気に進んでしまわねば。
…
……
………
よし! 鎌倉に侵入する事に成功した。皆が囮となってくれておるからであろう。
今の内に敵の後背を突き、敵の守りを完全に崩すのだ。
後ろを突くは化粧坂よ。あそこには敵の主力もおるからな。
あそこを崩せば後は楽なものだ。
「行け行け行け行け行け行け行け行けーーーーっ!!!
今までの鬱憤を晴らしてやるのだーーーっ!!」
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」
前後から挟み撃ちにされた気分はどうじゃ!!
散々に打ち払って叩き潰してくれるぞ!!
北条め、覚悟せい!!
「攻めろーーっ!! 叩き潰せーー!!
もはや敵など烏合の衆ぞ!! 我らの相手になどならぬ!!
蹂躙せい!!!」
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」
はははははははは! 今までの怨みや憎しみ、全てまとめて叩きつけてくれるわ!!
覚悟いたせ! かならずぅっ!?
『あらあら、随分と穢れた精神をしているわね。
ちょうどいいわ、暇で仕方なかったのよ。
かつてから踊ってくれた北条とかいうのも面白くなくなってたし、次は貴方ね。
せいぜい醜く踊って楽しませてちょうだい?』
ぐぅ! これは……いったい……なんなのだ?
ワシの体に何かが入りて……まさか、ようか
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Side:脇屋義助
兄者が敵軍を後ろから攻めてくれたので、こちらも攻め上がる。
敵は散々に後ろから攻められておるからか混乱し、その隙を突いてこちらも攻めたので、敵は最早まともに戦う事も出来ておらぬ。
こちらに向けば背後から、あちらを向けば背後から。
どちらを向いても殺されるしかない。
その事もあり、あっという間に敵軍は散り散りになってしまった。
これで我らも鎌倉に雪崩れ込む事が出来る。
兄者と合流し鎌倉に侵入した我らは、残りの二方の後ろを強襲して挟み撃ちにさせる。
そして兄者と我らの手勢は北条の一族が篭もる東勝寺へとやってきた。
ここに逃げ込んだ者どもが最後だ。後はこやつらを倒せば終わる。
「東勝寺を攻めよ!! 決して北条一族を残すでない!!
我らが苦しみの元ぞ、許してはならぬ!!」
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」」」」」
寺を攻めるなど良いのかと思わなくもないが、兄者の言う通り生かしておくのもマズい。
降伏したからといって生き永らえる事など無いのだから、攻めるのは当たり前と言えるのだが………。
寺も防備に優れておるからか、簡単には落ちなさそうだな。
「攻めろ攻めろ攻めろ攻めろ攻めろ攻めろーーっ!!
必ずや北条一族を滅ぼすのだ!! 2度と彼奴らに奪わせるなーーーっ!!!」
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」
後もうちょっとか。
寺の門が破れるまで、もう少し。そこさえ破れれば、後は雪崩こむだけよ。
後もう少しで此度の戦も終わる。
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Side:北条高時
「無念でございまする、ここまで敵が来るとは……。
もはや我らには抗ずる力もございませぬ故、敵の手に掛かるぐらいであれば、せめて自ら腹を切りまする。
では、おさらばでございます!!」
目の前にて下の者から順に腹を切りていく。
なにゆえ左様な事を致すのだ、ひたすらに最後まで敵に向かっていき討ち死にせぬか。
自ら腹を切るなど、負けた事を認めるに等しかろうが。
最後までなぜ抗わぬ。愚か者どもめ。
「次はそれがしが。それではさらば!」
「お見事でございまする。それではそれがしも。
皆々様方、さらば!!」
愚か者どもめが。命を失えば敵と戦う事も出来ぬであろう! なにゆえ無駄な事をする!!
私の為に一つでも多くの命を使え! 貴様らの命は私の為にあるのであろうが!!
愚か者めが、左様な事も分からぬか!!
「ゴホッ! ゴホッ!」
「最早ここまで、我らもまた参りましょうぞ。
全ての始まりは、足利に非道を行った事でございましょうな。
既に腹を切る力も無きようでございますゆえ、それがしが婿殿の最後を……」
止めぬか! なにゆえ私が死なねばならんのだ!! ふざけるでないわ!!
「しからば、御免!!」
ズドッ!
「ぐぶっ!」
『あらら。これで終わりみたいだから、私の分身は抜いておくわね。
死ぬまでの間、ゆっくりと嘆き悲しみなさいな。
あははははははははは………!!!』
おのれ、女狐め。
私を散々に操り、北条家を破滅に追いやるとは!
重ね重ね、又太郎には酷い事をしてしまった。
私が私であれば、あのような事はさせぬものを。
おのれ、玉藻め!
せめて誰か、誰かが真実を見つけてくれねば、死んでも死にきれぬ!!
く、黒金!
黒金よ、頼む!!
あの女狐めを……仇をとってくれ!!
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Side:安達時顕
目の前で愚か者がもがき苦しんでおるわ。
最後まで役に立たなんだな、まったく。
まあよい。しょせん、この世は玉藻様の遊び場よ。
それなりに北条とか申す者どもで楽しまれた御様子。
次は新田とか申す者のようだが、どこまで楽しめる者なのやら。
まあ、我らは玉藻様を楽しませるのみ。それと引き換えに得た強さなのだからな。
では、さっさと腹を裂いてから消えるか。
これの中に居るのも、そろそろ飽きたからな。
「ぐぶっ! がっ!!」
お、おのれ……妖怪め!
ワシを散々長きに渡って操りながら、北条家を滅亡させるのが遊びだと!?
ふざけおって! ……ふざけおってーーーー!!!




