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7.日常

「日比谷さん、疲れた顔してますね。目が腫れてますよ」


「日比谷~、もしかして失恋して大泣き?」



お昼時、連れ立って定食屋へ向かう同僚たちに正面から顔を見られて出た言葉。



「なんか目の調子が悪いんだよ、いや良いのか?」


「ははっ、どっちだよ。」


「あれ、日比谷さん、瞳の色が…キラキラして光ってる?」


「え?」



慌てて携帯のインカメラでチェックするも、相変わらず真っ黒な目だ。安堵しつつ、注文した定食の揚げ物を食べ始めながら考える。


(今日、なんだか調子いいんだよな。さくさく仕事が終わるというか。特に確認作業が早い。電卓入れなくてもミスがすぐ見つかるし。昨日から数字が視界にちらついてるせいか?)



「そういえば、今日の部内ミーティング、日比谷さんすごかったですね。」


「前から思ってたけど、ミーティング直前に資料配付されて、質問ありませんか~?って、そんなの困るのわかってて課長、聞いてたんだぜ」


「それを日比谷さん、TBの前月ファイナル、ここの数字が間違ってますって!」


「部長の前で、ぷぷっ、あれは痛快だったよな~」



「ああ、あれ。なんでか目に付いたんだよね」



すごい、とみんなに誉められて満更でもなかったが、夜都はいつもと違う自分に、言い知れぬ不安を感じていた。



(まさか……ゲームと関係ないよな。もやもやして気持ち悪い。)



なんとなく料理を箸でつっついて唸ってたが、ふと、昨日の出来事を思い出した。



(あ!あの『匂い』の感知、まさかあれも現実に……、っておかしくなってるな)


夜都は気になりながらも、思い違いだ、と確認するため会社帰りにあるところに立ち寄ることにした。



…………………………………


(あった、あった。久しぶりにこういうとこ来た)



夜都が来たのは、園芸コーナーもある大型ショッピングモール。関係ないかもしれないが色んな植物を見てみることにしたのだ。何らかの効能がありそうなハーブ系を近づいて観察する……、というか匂いを嗅いでいく。かなり怪しい人だが、気まずくなったら小さめの鉢でも買ってごまかそう。



(え~っと、なんだっけ、ラベンダーとか眠りを誘うポプリになってたよな。紫色の~、これこれ)



植え替え用の小さな鉢を見つけたので手に取ってみる。ここであることに気がついた。



(うん、普通にラベンダーのいい匂い……って、これじゃ意味ないじゃん!!え~~、やっぱりVRと現実じゃ同じことできるかの検証なんてできないよな。ゲームのやりすぎで頭おかしくなってんのかな……)



小さくため息をつきながらも、せっかく来たからといくつか鉢を手にとってみる。ついでに側にあった園芸店のバスケットを手に取って小さな鉢を少し入れていく。家に使ってない大きな植木鉢があったから適当に寄せ植えでもしようかと考えていた。



ふと、切り花コーナーから強烈な匂いがしてきた。いい香りではない、花とは思えない香りだ。


(どれだ?!なんの匂いだこれ。)


恥ずかしかったが、切り花の近くまで寄って、あたかも見てますというフリをして探していく。驚いたことに、匂ってくるのは一種類ではなかった。だが全部買っていくわけにはいかない。取り敢えず、不思議な匂いが強いと感じた水仙とシャクナゲを一輪ずつ、あと籠に適当に入れたラベンダー、ミント、ローズマリーを買うことにした。

園芸店での購入後、ついでにとスーパーにも立ち寄った。一人暮らしだが、多少は料理するのでハーブで何かできないかと思ったのだ。やや季節はずれのサンマを買って帰った。








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