48.もう一つのクエスト
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次の土曜日の昼頃、ここ毎週のルーティーンだが大和は夜都の家に遊びにきた。今日は顔色も良さそうだ。大和が言うには、件の青梅の蜂蜜漬けのお陰だそうだ。
「そうそう、昨日レタスに会ったよ」
「へえ、どこで?」
「会社の近くの小児科」
「!?」
大和が言うには、その小児科は大和の会社の顧客だそうで、新担当になったため挨拶に行ったら当人だったとか。
「見てすぐわかったよ。向こうもね。お互いイメージ通りの職種だったって話してさ、どうせなら日比谷にも会いたいなってさ」
「あのまんまなのに小児科の先生……ああ、でも人に指導するの好きそうだな」
「違った意味で見た目のギャップはあるね。話し方はやっぱり普通だったよ」
今度そのうち三人で飲みに行こう、という話をして、昼食後にログインした。
………………
二人がログインして降り立った場所は夜都のホーム、そこには大量のポーション瓶があった。中身は状態異常(凍結)回復薬である。
「すごい量だね、これどうやって運ぶの?」
「ああ、家の横に設置した宅配boxに入れて、その鍵を生産者ギルドに渡して連絡しとくと後で馬車で回収に来てくれるんだ」
「ああ、日本にもそういうサービスあったか。不在時に持っていってくれるのは便利だね」
「そそ。じゃ、まずこの町の生産者ギルド、買い物してからゲートへ行こう」
夜都達は、畑にいる水撒き妖精のミリィに声を掛けてからホームを後にした。ここから街中のギルドへは徒歩だ。田園風景を眺めながらのんびり歩いて向かう。開発されていない土の道、その脇には手で作ったような素朴な木の柵、途中に小川が流れていて広がる牧草エリアに牛や羊が放し飼いにされていて、眺めているだけで贅沢な気分になる。普段お目にかかれない牧歌的な風景だ。
時々、住人らしき人とすれ違う。見ただけだとプレイヤーかどうかわからない。いや、一言二言の挨拶でもわからない。夜都が大和に判別できるか、と聞くと、大和もわからない、と聞いて安心した。
(本当にゲームの世界中なのかな……住人はAIだし。でも広大な世界全てにAIが配置されている?想像つかない。……久しぶりに朝野に会いたいな。今なら聞けなかったことが聞ける気がする。でも、もうずっと連絡がとれない)
町中に入ると石畳のエリアに入り雰囲気も変わる。明らかにプレイヤーとわかる人も多くいる。その中の一人が夜都に話しかけてきた。
「ヨールー!!会いたかったよーっ!」
「また会ったな、ヨル。ほらマリリン、抱きつくな」
「ヨルくん、こんにちは。そちらはニュービー?」
いつもの調子でばったり会ったマリリンとマッド、テッドを大和に紹介する。
「へえ、ヨルに魔術師の友達か、採取が捗っていいな」
「よろしく。まだ始めたばかりだけど。マッドとテッドは鍛冶師?マリリンはアカやんから聞いてるよ、水撒き人形作れるって」
「よろしくね、ヤマ……ヤマちゃんでいい? 俺は中級鍛冶師(武器)、マッドは中級鍛冶師(防具)、一緒に装備を作ってる。同じ意匠を入れるとシリーズ化するらしく性能が上がってね」
「ヤマちゃんね、ヨルの友達なら私達も友達ね!あの人形みたの?妖精になっててびっくりだよねっ!」
「マリリンは他にああいうの作ったようなことないの?」
「変な機能が勝手についちゃうことはよくあるけど、道具は道具だからねー。わたしの予想じゃ、ヨルが原因じゃないかと……?」
「ああ」と大和が納得するような返しをして、夜都のほうを見る。気がつくと、全員が夜都を見ていた。
「ちょっ……人聞きの悪いっ。あ、マリリン、アカやんからゲート素材を10セット受け取ったからそっちの部品も俺に送っといてね」
「りょーかいっ。後でギルドに配送手配しとくわ。……変なゲート作らないよーにねっ!」
夜都は変なフラグを立てられてしまった、、と思いつつ、三人と別れ、用事を済ませてゲートに向かう。
「ヨルの仲のいい仲間で会ってないのは、あとはメグみんと…アサだけ?」
「う~ん…そうだな。アサは俺も全然会えてないけど」
「機会があったら俺を必ず呼んで」
そんな話をしながら、二人は久しぶりに始まりの町の冒険者ギルドに入っていった。
………………………
(えっと、この受付の名前なんだっけ…?大和は覚えてる?)
「久しぶり、ナディア、残りのクエストを受注したいんだけど」
「はい!ヤマ さま お待ちしておりました。『東の森のルルの滝付近でのダンジョン入口の探査』ですね 」
「ああ、ヨルとパーティーを組んで手続きしてほしい」
「承知しました。クエスト資料 をご準備しますので少々お待ちください―――――」
大和はじっとナディアの操作を見つめる。どこでどうクエストを調整するのかが気になっていたのだ。そして今回、ナディアの準備は意外と時間がかかっていた。
「――――――。―――――はい。 お待たせしました。東の森の地図 と ダンジョンの目撃情報 です。ダンジョンの目撃者は森で迷いどこをどう歩いたかわからないそうです。ただルルの滝からそれほど遠くはなかったはずだ とのことでした」
「情報をありがとう、ナディア。早速向かってみる。ところで、一週間後にあるフェスティバルの話を何か知っている?」
「毎年開催されている建国記念フェスティバル ですね。当日は 全ての国民が日頃の職務から離れて自由に楽しめるので 町の中が大変に賑わいます。遠くの町からも 珍しい物が運び込まれ 出店がこの辺り一体に設けられますので買い物をするのも楽しいですよ」
「遠くの町とはなんていうところ?」
「海を隔てて南方にある町ノウム です」
「その町に行く方法は?」
「貿易船が南の港町ポルタから出入りしておりますが 一般人は乗船できません」
「そう、やっぱり。ありがとう、ナディア。」
大和はナディアからクエストの資料を受けとり、二人は冒険者ギルドを出ていった。その場では夜都は大和達の会話に口を挟まなかったが、内心驚いていた。フェスティバルに新しい町の情報、どれも、ネットや仲間内の情報交換では出てこなかったものだ。
(しかし、俺がやろうとしてもあの情報出てこないだろうな…何が違うんだ?)
未だに自分と大和の違いがわからない夜都であった。




