24.新規参戦
今、大和の意識は、円形で高い天井の広いホールのようなところにあった。その真ん中に立っている感覚があるが、身体の輪郭はぼんやりして見える。軽くジャンプしてみると、身体が軽くて少しだけ浮いてるように感じる。
(すごい!これが最先端のゲームか。意識だけのダイブ型VRはやったことあるけど、それとは別次元だ)
ふと、周りの白い壁が消えて、屋根と柱だけ残った。いや、壁はガラスに置き換わったようだった。ガラスの先には草原が見える。大和がキョロキョロ辺りを見回していると、パッと、やや上空から古代ギリシャ風の服を着た長い金髪の若い女性が現れ、ゆっくりと地上に降りてきた。
《ようこそ Dragonight Online22の世界へ》
(ギリシャ神話の女神のイメージか?)
大和は返事をせず女性をまじまじと見つめていたが、相手は構わず話を続けた。
《私はナビゲーターの フィリシア です。 これから ヤマ さまがこの世界で過ごすために使用する アバターの製作 と 職業 及び ステータスの設定 についてお手伝いをさせていただきたいと思います どうぞよろしくお願いします》
《まず アバターの製作 を始めます。 途中でわからないことや疑問に思ったことなどありましたら いつでもおっしゃってください。 それでは始めてよろしいでしょうか?》
そこでフィリシアは話すのを止め、やや首を傾げた状態でじっと大和の顔を見つめている。どうやら返事をしないと先に進めないようだ。
ヤマが無言で首を縦に振ると、フィリシアは話し始めた。
《まず、顔の造形 からご説明します。 ベースとなる本来の造形は基本的に変更できませんが ±5歳の変化を付けることが可能です。 これから ヤマ さまの意識内に アバター設定画面を表示させます この世界では意識内にこのような画面を表示する設定となっております》
《もし気分が悪くなったり ログアウトしたい場合はいつでもおっしゃってください。 また常時 システムで体調のモニタリング をしており 異常を感知した場合は強制的にログアウトさせられることをご承知おきください》
説明どおり、大和の脳裏に操作画面が現れた。初めての体験でびっくりしたが、問題なく操作できる。大和はいつも若く見られがちで嫌だったため、印象が変わるまで年齢を足していったがほとんど変わらなかった。仕方なく変更なしのままokボタンを押した。
《続きまして 身長と体型 の設定です。 どちらもあまりが可変幅はありません》
男ならみんなこうするはず、と思いながら少ないながらも最大限に身長を伸ばし筋肉を増やす。
《最後に 髪型と色 および 目の色 の設定です。 これらはこちらでご用意したものの中から自由に変更できます》
夜都は派手な茶髪に緑色の目をしていたな、と大和は思い出しながら適当に選んでいった。ちょうどテレビで日本人サッカー選手が金髪にしていて意外と似合っていたので、髪の色は金髪にした。ただ、ややアッシュがかった色で短くしたのでそれ程派手ではないだろう。目は…と次第に選ぶのが面倒になってきて、夜都と同じような色にした。
(アバターの設定だけなのに結構時間がかかる……)
《次に 職業 及び ステータス の設定に入らせていただきます。職業は ヤマ さまに適性が高いものから順に並べております》
今度は、ブォン と大きなスクリーンがナビゲーターの隣に現れた。職業は、脳裏に現れたコントロールボックスで選択できるようだ。なんでも直感で操作できるようななっているのに感心しながら、上から順に見ていく。職業を選ぶと、スクリーン上に、服装と今のアバターの組み合わせの3D画像と、職業の特性の説明が表示された。
(まるでコスプレしているみたいだな)
大和は、ざっと上位をいくつかチェックして、自分で見るに耐えないと思ったものを省いた中から決めることにした。
《お疲れさまです。 最後に 職業に基づいて付与されたSPポイントをステータス上の好きな項目に加算してください。ご自分のステータスは、"ステータスオープン"と唱えると、意識内にリストが表示されます。一度試しに唱えてください》
大和は早速唱えてみた。なるほど、パラメーターに各種能力、魔法……、夜都から聞いていた話だったがこうやって確認できるのは便利だと思った。
「教えてくれ。 この自分のステータスは自分以外だと誰がみることができる?運営会社やゲーム内の人や物全てを含めてだ」
《ヤマ さま にお教えできる範囲内でお答えいたします。お教えできない内容については 音声に規制音が被せられます》
《ステータス閲覧権限 を保有するもの――》
《Dragonight Online22システム権限レベル3以上の保有者・特殊能力『***』保有者・SSRアイテム『***』》
「SSRアイテムとはなんだ?」
《SSRの略です。 アイテムはその希少性・重要性により ランク付けされています。ランク についての説明を受けますか?》
「いや、できたらその情報をメールボックスに送ってもらえないか?」
《承知いたしました。他に質問はありますか?》
「あなたのような人にこうやって質問できる機会はこの後もあるのか?」
《対面式での応答は今回で最後となります。他のご質問 は 運営事務局窓口 までメールにてお送りください。ただし 回答に少々お時間をいただくこと や 回答できないこと がありますのでお気をつけください》
「それは……あなたはとても親切な人なんだね。ありがとう。せっかくだからもう少し教えてくれないか?」
大和は疑問に思っていたことをどんどん聞いてみることにした。こんな機会はもうない、伏せ字の回答でも充分役立つ。恐らくこのナビゲーターはある程度権限を持つ優秀なAIだ。だがAIだからこそ考えが及ばないことがある。
予め、夜都に色々教えてもらっていてよかったと心から実感した。




