無知蒙昧の少年と
孤独だった。
物心つく頃には世界は終わっていて、孤児院に住んでいた。
この世界は、ごく少数の島国を残して死んでいた。
およそ30年前に突如発生したウイルスにより、死体は生を取り戻して、生者を襲い始めた。
一夜にして生と死のバランスは崩壊し、人類の道は暗い光で照らされている。
無知蒙昧な僕は、実際にそれを見たことも、経験したこともない。
しかしそれでも生き延びた人類は、結局生物の本能に則って、繁栄を諦めていなかったらしい。
日本はウイルス発生の年に、帝政となった。理由は不明だが、今の日本の支配者は『殲滅帝』
と呼ばれている。日本にもウイルス汚染は広まったが、それを全て、『殲滅』した事から由来されている。
日本には、あまり資材が潤沢にあるとは言えない。そこでこの偉大なる統治者は、ある法を施行した。
『特別資源回収法』
これは、崩壊した国へと赴き、その国にある資源を回収して、日本の血肉とする法だ。
その回収者は、公務員として認められる、立派な『職業』である。
しかし、時に人員不足が起きることもある。その時には孤児院にいる孤児たちから抽選され、人員補充を行っていた。
それが今の僕だ。今まで仲良くしてくれていた人たちは、
「おめでとう」 「居場所が見つかったね」
と泣きながら、心にもないことを言う。
先生に教えてもらった、徴兵、と言うものに似ていた。
そして、今まさに回収任務が始まろうとしていた。
教官の『五十嵐』と言う人が説明を繰り返す。
「いいですか、今から貴方達には訓練課程として、中国の北京へと行ってもらいます。」
「任務は簡単。金属製の物、なにか有用だと思う物をできる限り持ち帰って、生還することです。」
「しかし、もはや海外には生存者はほぼいません。居るのは感染者となった哀れな患者が大半です。」
「ここに居る人たちは皆、初めての方でしょうから、この道のエリートに1人ずつ着いていただきます。」
そういうと、部屋に6人入ってきた。
「彼らは3年間、回収任務に当たっていたエリートです。彼らに従えば、国のために働くのも苦ではないでしょう。」
入ってきた6人は、仏頂面で動かない。
「詳しい説明は、移動中に話しましょう。それでは皆、国のために。」
そうして、地獄は始まった。




