剣を使ってみる
お待たせしました。またちょこちょこ連載していきます。
「やっぱり凄いな君は」
ザック先輩に褒められて、僕は首を傾げた。
そんなに凄いか?
ちょっと考えれば誰でも思いつくと思うんだけど。
「別に凄くないって顔だな」
「いや、まあ。褒めてくださってありがとうございます」
一応褒めてくれたのでお礼を返しておく。
ザック先輩は肩をすくめてみせた。
「正直言ってあれは俺達には真似できない。だが、実戦で使えればとても頼りになる魔術だ。君の役に立ててくれ」
「はい。剣魔術そのものは僕の頭にはありませんでした。着想をありがとうございました」
「そうか。なら良かった」
さて、どうしようかな。
まだ見学したほうがいいかな。
それともそろそろお暇しようか。
「なあ、アルフ。君の剣技をみせてくれないか?」
「え?」
思いがけぬ言葉に僕は目を丸くした。
「僕、魔術師なんですけど」
「それは解ってる。だけど、さっきのハリスとの一戦。ハリスの攻撃をなんだかんだ凌いでいたじゃないか。全く剣が扱えないわけじゃないんだろ?」
「・・・まあ、身を護るくらいですが」
今世ではないが、前世ではちょっとかじったかな。
「それを見たい。正直さっきみたいなのはこっちの想定外だ。普通に君の剣技が見たいんだよ」
剣技って言えるほどのものではないんだけどな。
でも、この周りの期待に満ちた眼差し。
ううん、どうしよう。
期待が大きすぎてがっかりさせてしまいそうだけど、ここはやるしかないかなあ。
「分かりました。ご期待に添えるかわかりませんけど、やってみます」
「よし。それじゃあ俺が相手をするよ」
「ザック先輩自らですか?」
部長相手か。
これは一瞬で勝負が決まっちゃうんじゃないのか?
僕、ほんとに剣術はそれ程できないぞ?
「ああ、本当は今日はずっと黙ってみているつもりだったんだが、血が騒いでしまったよ。頼むから相手をしてくれ」
「僕でよければ」
嬉しそうに笑ったザック先輩は他の部員に審判を任せると、僕に相対した。
ほほぅ、これはこれは。
さっきまで相手をしていた部員とは一味違うね。
「先輩は他の魔術は使えるんですか?」
「一通りは使えるんだが、俺は多分、剣魔術で戦ったほうが強い」
「でしょうね。一端の剣士みたいですよ」
「ふっ、何よりの誉め言葉だ」
道場に緊迫した空気が流れる。
誰もが息を呑んだ。
「どっちが勝つと思う?」
「流石に部長だろ。今回はさっきみたいな裏技は使わないんだし」
「いや、でも、あのアルベルトだぞ」
「ああ、何をやらかすか分からん」
ひそひそと囁き声が聞こえる中で、審判が手を下ろした。
「始め!」
「おおおおおおおおおおおお!!」
ザック先輩はいきなり突きを繰り出してきた。
はやっ!
僕はなんとか杖を弾いたが、その杖がまた重い。
軌道を逸らすのがやっとか。
それを重心をずらさずに引き戻すとまた突き。
突き、突き、突き。
容赦のない連続突き。
剣魔術はリーチが杖だからな。
結構長いんだ。
槍として使えるんだなあ。
このままじゃ埒が明かない。
杖に僕の杖を被せて、そのまま滑るように懐に飛び込むが、これをザック先輩は強引に弾いた。
大きく状態が揺れる。
不味い。
そこに上段からの振り下ろし。
咄嗟にガード。
ガキンといい音が鳴った。
つぅ~、重い。痺れた。
「おおおおおおおお!!」
怒涛の連続攻撃。
やばいやばい、捌くので精いっぱいだ。
狙いを変えて横っ腹目掛けて杖が来た。
防ぐが、余りの威力に身体がくの字に曲がる。
「くぉ!?」
この態勢は不味い。
牽制を入れて仕切り直しといきたいけど、杖の位置が良くない。
ここから正眼に構えるよりも蹴りを一撃入れたほうがいい。
そう思って足を動かそうとした時、
蹴り?
蹴りって、ありなの?
身体が硬直した。
その隙をザック先輩が逃すはずもなく、腹に突きを一撃食らった。
「げふ!」
「そこまで!」
膝をついて呼吸を整える。
イッテテテ、防御結界の中とはいえ、あれだけ威力が乗ってると結構キクな。
「「アルフ!?」」
メリアとリゼが僕の傍に寄って来る。
僕は片手を上げてそれに応じた。
「大丈夫だよ二人共」
ザック先輩に向き直り一礼。
「参りました」
「いや、俺の攻めをあれだけ凌がれた奴は久しぶりだ。それにしても最後、硬直したな。どうしたんだ?」
あー、そこ突っ込んじゃう?
僕は頭をかいて説明する。
「一瞬蹴りを入れそうになりました。蹴りは不味いですよね?」
「ああ、蹴りは不味いな。剣魔術は剣で戦うものだ」
やっぱり。
「とはいえ、俺達も外に出てモンスターと戦うこともある。そうなったら競技などと言ってはいられないだろうから、本当はアルフみたいに戦うのが正解なのかもしれんが」
「いいじゃないですか、競技。平和で」
「まあ、そうだな」
まだお腹に鈍痛が残るが、大丈夫だろう。
「先輩。ありがとうございました。そろそろ失礼します」
「そうか。それでアルフ、うちに入ってくれるか? 掛け持ちでもいい」
「考えておきます。では」
そう言うと僕達は道場を後にした。




