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剣魔術の真髄

「いや、皆まとめてって・・・」


 アルフが堂々とそう宣言したのを聞いて、部員達は唖然、あるいは眉をひそめた。

 確かにアルフは戦闘センスがある。

 それは認める。

 だが、剣魔術は素人だ。

 そして、ここにいる者達は剣魔術を日々訓練している生徒達。

 それを相手に、たった一人で相手にするという。

 いくらなんでもそれはこちらを舐め過ぎだろう。

 そう思う人達と、それだけ言うのだから何かあるのだろうと思う人達に分かれた。

 ザックは興味を持ったのか、ワクワクしながらアルフを見る。

 やはりこいつは面白いと。


「アルフ、本気か? 名乗りを上げている奴は十人はいるぞ? 本当に一人で相手にするのか?」


「はい。ちょっと思いついたことがあって。やってみたいです」


 ザックは少し考えた後に面白そうなのでそれを許した。


「よし、じゃあやってみろ」


 ザックから許しが出て、生徒達がそれぞれ杖を取る。

 全員が本気だ。

 イキがっている一年坊主に目にものみせてやると思っている者。

 それだけ言ったんだからなにかあるのだろうと興味津々な者。

 それを観戦する者。


 メリアとリゼもアルフが突拍子もないことを言い出したのでハラハラドキドキしながらそれを見守っていた。


 道場にアルフが一人に対し、正面には十人の剣魔術部の生徒達。

 多勢に無勢。

 頭にきている生徒の一人がアルフを威嚇する。


「もう後戻りは出来ないぞ。怪我の一つは覚悟しろよ」


「お手柔らかに」


 今更その言葉は遅いと思いながら、ザックは中央に立つ。


「それでは、始め!」


「「「おおおおおおおおおおお!!」」」


 生徒全員が駆けてくる。

 アルフは剣を思い切り伸ばす。

 それが一人の生徒に当たり、そのまま壁に激突した。

 だが、その間に残りの生徒がアルフに詰め寄る。


「もらったぁ!!」


 だが、アルフは剣部分をぐるぐると捻じ曲げ身体全体を覆い、殻に閉じこもるようにしてしまった。

 全員が目を見張る。

 剣を当てても弾かれてしまう。


「け、剣を曲げやがった」


「そんな事出来るの?」


 次にアルフはとぐろを巻いて身体を護っている剣を猛スピードで回転させながら大きくほどいていった。

 その衝撃でほとんどの生徒が吹き飛ぶ。


「ぐは」


「なっ、馬鹿な」


「こんな戦い方って・・・」


 残りは三人。

 難を逃れただけあって、実力者揃いの様だ。

 もう一度、とぐろを巻いて防御させないように一瞬で駆け寄る。


 アルフは剣を伸ばして迎撃するがそれを生徒達は回避。

 今から剣を呼び戻して防御したのでは間に合わない。

 勝負あったかと思われたが、

 なんと、剣の至る所から釘くらいの突起物が出現したかと思うとそれが一斉に伸びだした。

 その数は百に登り、道場全体に行き渡る。

 とても回避できる数ではなかった。

 生徒達は慌てて、剣でその釘程の太さの棒状の魔力を払おうとしたのだが、これが硬い。

 まったく弛むことなく真っ直ぐに生徒の身体に突き刺さった。


 気が付けば、一分も経たぬうちに生徒達全員が床に転がっていた。


「・・・それまで」


 ザックは呆然としながら終了の合図を出した。


「・・・なんなんだよあれ?」


「あれって剣魔術?」


「凄いの見た」


「てか、あれってありなのか?」


 アルフはザックに尋ねる。


「先輩、あれって駄目ですか?」


 尋ねられザックはハッと我に返ると考えを巡らせる。


「・・・いや、流石に駄目だな。あれはもう剣魔術とは言えない。剣を曲げたり至る所から更に細い剣を出したり、既に剣とは呼べないものだ」


「そっかー。いいアイデアだと思ったんだけどなー」


 アルフは手を頭の後ろに組んで残念そうにしていた。

 それを見てザックはとんでもない奴を連れてきたと思った。

 アルフは今日まで剣魔術そのものを知らなかった。

 だというのに既存の概念を破壊する剣魔術の可能性を示して見せた。

 いや、逆に下手な先入観がない分、剣魔術を柔軟に解釈した結果か。


 だが、アルフが使った剣魔術が果たして世に浸透するだろうか?

 剣を戦いながら伸ばすのは或いは慣れた剣魔術使いならば出来るかもしれない。

 しかし、剣を曲げて身体を囲ってみたり、剣の至る所から更に派生で剣を出すなどの芸当はまず出来ない。

 戦闘中にそこまで魔力を制御することは普通の魔術師ではまず不可能だ。

 

 しかも、釘程の太さの剣を打ち払おうとした生徒はそれを払うことが出来なかった。

 あれほど細いというのに折れることも曲げることも出来ない程の強度の剣を作ったということ。

 魔力剣の強度はそれイコール魔力量に比例する。

 もし仮に、魔力制御の長けた者が落ち着いて冷静にアルフの様に剣の派生を作ったとしよう。

 しかし、あの太さであれ程の強度を保つことは不可能だろう。

 アルフの持っている魔力はそれだけ桁違いだということだ。


 本来剣魔術は、魔術師が接近戦を許してしまった時に、近接戦闘に対応するために生まれた魔術だ。

 剣の代わりの役割をしていればそれでよい。

 その程度の認識で生まれた魔術なのだ。

 それをこれだけ柔軟に解釈して全く別次元の魔術に昇華してしまった。

 さっきまで剣魔術事態を知らなかった十五の少年がだ。

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