実際にやってみた
「剣魔術かぁ」
勧められるままに僕は練習場(道場というらしい)の中央に連れてこられた。
「まずは杖に魔力を通すんだが」
「はい」
僕が愛用の杖を出すと、ザック先輩は目を瞬かせた。
「君、随分と短い杖を使っているんだな。やりにくくないか?」
「いえ、慣れるとそうでもないですよ」
僕にしてみたら、そんな長い杖の方がやりにくい。
前世からこのサイズの杖だし、こっちの方がいい。
「だけど、剣魔術の杖はこっちの方がいいと思うぞ。いいか、こうやって魔力を杖に流し込む。ここまでは普通の攻撃魔術と変わらないが、ここから魔力を杖の周りに巡らせて固定化する。こうやって」
ブォン、と魔力が杖に満たされて、魔力の光が杖を纏う様になると、今度は杖の先端に魔力が集まり、わずかに尖った。
うん、なるほど。剣みたいになったな。これが剣魔術か。
「な? この長い杖なら先端部分にちょっと魔力を流し込めば剣のようになるが、その短い杖だと魔力を大分伸ばさないと剣の長さにならないぞ?」
「ちょっと試していいですか?」
確かに僕の杖は指先から二の腕くらいまでしかない。
対して現代の杖でポピュラーなのは足から肩の辺りまでの長さまであり、剣と言うよりも短槍くらいある。
それなら杖の先端部分にだけ、多めに魔力を流せばいいだろうけど、僕の杖だと、普通の剣のサイズにするだけでも、何十センチも魔力で覆わなければならなくなる。
だけど、ものはやりようだ。
「えーと、魔力を流し込んでそれで固定か」
普通の攻撃魔術と途中までは工程は変わらないんだから後はその応用だ。
基礎は嫌って程やっているのだから、その応用もそれ程難しくはない。
ブォンと杖に魔力を纏わせて、魔力を伸ばすと。
「おっ、先端が伸び始めたな。凄いぞ、慣れないやつはそれで一日潰れることだってあるのに」
まだまだ。
普通の杖ならこれでいいけど、僕の杖だともっと魔力を流し込まないと。
更に魔力を込めて。
ブォンー!
魔力が光り輝き、長剣位の長さになった。
「おお! 凄いな。ここまで伸びたか」
ザック先輩は僕を賞賛した。
なんとか上手くいったぞ。
「じゃあ、誰か相手をしてもらおうか」
ザック先輩は手頃な相手を見つけてようと辺りを見回すと、一人の生徒が手を挙げた。
「俺にやらせて下さい」
手を挙げた人物を見て僕は軽く驚いた。
「ハリス。君、剣魔術部だったのか」
クラスメイトで友達のハリスだ。
人が多いから気が付かなかった。
「ハリスか。やってみるか?」
「はい!」
ハリスは元気よく返事をすると、ニヤリと笑って僕を見る。
「お前とは一度戦ってみたかったんだ。初心者だからって手加減しないぞ」
「分かった。頑張るよ」
「では、向かい合って」
僕とハリスは向かい合い、ザック先輩は中央に立つ。
ハリスも杖に魔力を通して剣化させると構えを取った。
悪くない構えだ。
この部の構えなのかな?
僕も構えを取って準備OK。
「では、始め!」
「きええええええええええ!!」
奇声のような掛け声でハリスは僕に向かってくる。
上段からの振り下ろし。
十分に威力が乗っている。
それを受けるとずっしりと重い衝撃が腕に響く。
くぅ~、きついぜ。
ガンガンガン! と連続で振り下ろし。
中々果敢な攻めだ。
隙を見て僕はお腹に一撃入れようとしたがこれを受けられて、そのまま流す。
仕切り直しに距離を取ろうとしたハリスに僕は突きを繰り出した。
だけど、距離があったために僕の突きは届かない。
このままでは、
グン!
杖に魔力を流し、剣部分が伸びて、真っ直ぐにハリス目掛けて向かっていく。
「なっ!」
全く予想していなかったのか、ハリスの腹に僕の魔力剣が突き刺さり、ハリスは膝をついた。
「そこまで」
終了を宣告された後、僕はハリスに歩み寄った。
「大丈夫、ハリス?」
「あ、ああ。この道場内は防御結界が張ってあるからな。つーかよぉ・・・」
ハリスはザック先輩を見る。
「部長、あれってありなんですか?」
ハリスが尋ねるとザック先輩は難しい顔をした。
ん?
最後にやった魔力で剣を伸ばすやつか?
あれって駄目だったのか?
「戦いの最中に剣部分を伸ばしてはならないというルールはなかったと思う。盲点だったな。剣は同じ長さにしておかないと上手く固定化しないから、戦いの最中に剣を伸ばすって発想がなかった。・・・いや、しかし、今考えるとそれこそが剣魔術の特性になるのかもしれん」
ぶつぶつと言うザック先輩。
「まあ、問題ないだろう。面白い戦いが見れた。他には戦いたい奴はいるか?」
「お、オレオレ。戦ってみたい」
「あ、狡いぞ。次は俺だ」
「あたしも剣伸ばせるかしら?」
何人かが手を上げて、我先にと僕との戦いを望んでくる。
うーん、このままじゃ日が暮れそうだな。
「いいですよ。皆まとめて」
「「「え?」」」
「皆まとめて相手になります。かかってきてください」




