先輩をはったおせ
顔を真っ赤にしてスカートを押さえながら恥ずかしがるメリアはキッと先輩を睨みつけて、そのままビンタをしようとした。
だが、メリアの腕を先輩は掴み取る。
「くっ!」
「へへ」
こいつ、荒事に慣れてるな。
いわゆる不良って奴か。
これ以上は見過ごせない。
僕は杖を取り出すと、先輩に突き出す。
「そこまでにしてもらいましょう先輩」
「あん? お前それ杖か? 随分と短いの使ってるな」
「先輩が用があるのは僕でしょう? メリアから手を離して下さい」
「ふん。こいつが俺を引っ叩こうとするから仕方なく掴んだだけなんだけどなあ」
メリアは憤慨し血管を浮かせる。
相当ご立腹のご様子だ。
「ふざけないで! 神聖な乙女のスカートをめくっておいて何被害者みたいなことを言っているのよ!」
怒りが収まらないのか、メリアは腕を振り払って先輩から解放されると、思い切りメンチを切る。
「おお怖い怖い。だがな、これも皆お前が悪いんだぜアルベルト。お前が生意気にイキがるからこんなことになる」
もうお互い収まらないな。
でも、このままじゃ、また問題になるかも知れない。
なら、ここはあの手を使うとするか。
僕は先輩の目を見据える。
先輩も僕の纏う空気が変わったのを察したのか、眉を挟ませる。
「先輩。僕と決闘をしましょう」
「何? この俺と真正面から戦うって言うのか?」
僕はコクリと頷く。
「この学校のルール。先生の立ち合いの元でなら、決闘は正式に認められるんですよね? 陰でコソコソ僕を闇討ちするようなマネはやめて、正々堂々と僕と戦って下さい先輩」
「俺がコソコソだと!」
癇に障ったのか、先輩はムキになって聞き返してきた。
「そう思うなら、この申し出を受けて下さい。それとも逃げますか?」
いきなり先輩の手が伸びる。
殴りつけてきた。
僕は咄嗟に躱わす。
「やっぱりよおー、キッチリとシメておかないといけねえみたいだなあー、てめーはよおー!」
先輩は顔を真っ赤にして怒り狂っている。
この人挑発に耐性なさ過ぎ。
まあ、乗ってきたならいい。
これでお膳立ては整った。
「時間は放課後に闘技場で行いましょう」
「いいぜ。逃げるなよ。ボコボコに殺してやるからよお」
「楽しみにしておきます。ところで先輩」
「あ?」
「そろそろ名前を伺っても?」
「グジーだ!」
「グジー先輩。それじゃあ午後にお会いしましょう」
グジーは肩を怒らせながら歩いていった。
やれやれ。
「メリア大丈夫?」
僕はまずメリアを心配した。
他に人はいなかったが、スカートをめくられたのだから、やっぱり女子としては気にするだろう。
「私は大丈夫だけど、見た?」
「何を?」
僕はすっとぼけた。
見たが。
バッチリと見てしまったが、僕は何も見ていませんというようにすっとぼけてみせた。
メリアも分かってるだろうと目で語っているが、僕が白を切るのでそれ以上深く追及はしてこなかった。
「まあ、それにしてもやっかいなのに目をつけられたわね」
メリアが腕を組んでため息をつくと、僕は大きく肩を落としてため息をついた。
「ねえ? 僕ってトラブルを呼ぶ体質なのかな? 僕がトラブルを起こしてるんじゃないよね? 向こうからやってくるんだよね?」
まるで僕が何かをやらかしているみたいに思われるのは大変に心外である。
僕じゃない。
僕の周りで何かが起こるのであって、僕が何かをしているわけでは決してない。
「そうだね。今回の件もアルフが正式な決闘にしたのはよい判断だったと思うよ。先生の知らないところで揉め事を起こしてそれが公になったら問題になるからね。先生がしっかりと監督している中での諍いなら大丈夫だろうし」
リゼに判断が間違ってなかったと同意を得られて僕はホッとした。
これ以上先生に目をつけられたくはないし、母さんに心配をかけたくはないから。
でも、先生にこれから決闘の立ち合いを頼みに行かないといけないのか。
やっぱりトラブルメーカーだと思われるんじゃないだろうか?
立ち合いの先生は誰に頼もう?
やっぱりミネルヴァ先生かな。
僕は若干憂鬱な気持ちで職員室に向かった。




